ICC赤根智子所長がロシアの指名手配に続き米国から金融制裁:日本政府は所長を守れるか

米国のトランプ政権が、国際刑事裁判所(ICC)への圧力を一段と強めた。ルビオ米国務長官は18日、ICCの赤根智子所長と、セネガル出身の上級法廷弁護士アブドゥライ・セイ氏を制裁対象に指定した。米国内の資産が凍結され、米国人との取引も原則禁止される。

国際秩序を維持しようと奮闘する赤根所長は、ウクライナ侵攻を巡りロシアのプーチン大統領に逮捕状を発付したことへの報復としてロシア内務省からも指名手配を受けている。まさに踏んだり蹴ったりである。

ICC所長本人を制裁

ルビオ氏は、両氏がICCの管轄権を受け入れていない国の政府当局者を捜査、逮捕、訴追しようとする活動に直接関与したことを理由に挙げた。

米国もイスラエルもICC非加盟国で、トランプ政権はICCによるイスラエルのネタニヤフ首相らへの逮捕状を「国家主権への侵害」と批判してきた。

これに対しICCは「司法に関わる者が法を適用したことで脅迫されれば、危険にさらされるのは国際法秩序そのものだ」と反発。ICC本部のあるオランダ政府も米国を批判している。

赤根智子所長 ICC HPより

クレジットカードも使えなくなる可能性

今回の制裁は象徴的なものではない。米財務省外国資産管理室(OFAC)の制裁対象となれば、米国の金融システムとの取引が遮断されるため、銀行送金だけでなくクレジットカードなどが利用できなくなる可能性もある。

国際的に営業する銀行やカード会社の多くは米国の金融システムと深く結びついている。ICC本部のあるオランダはキャッシュレス化が進んでおり、現金だけで生活するのはかなり不便だ。制裁を予測して現金を確保していたとしても、日常生活への影響は小さくない。

日本国内の資産はどうなるのか

さらに焦点となるのが、赤根氏が日本国内に保有しているとみられる預金などの扱いだ。

米国の制裁を受けたからといって、日本国内の銀行口座が米国法によって自動的に凍結されるわけではない。しかし日本の銀行はドル決済や米国での事業を抱えているため、OFACの制裁には極めて敏感だ。

米国の制裁対象者との取引を続ければ、自らも米国市場へのアクセスを失うリスクがある。そのため日本法上は取引可能でも、銀行が自主的に口座凍結や取引停止に動く可能性がある。

日本政府は赤根所長を守れるのか

そこで問題になるのが日本政府の対応だ。

日本はICC加盟国で、政府もこれまでICCへの支持を表明してきた。ならば国内銀行に対し、米国の制裁指定だけを理由に赤根氏の国内資産を凍結しないよう、何らかの通達や指針を出せるのか。

仮に政府がそうした方針を示しても、銀行側が米国で制裁されるリスクまで消せるわけではない。これは国内法だけでは解決できない、日米間の外交・金融問題になる。

今回問われているのは「米国対ICC」という国際政治だけではない。米国が金融システムの力を使い、オランダで働く日本人裁判官の日常生活や日本国内の資産にまで影響を及ぼせるのか。そして「ICCを支持する」としてきた日本政府が、赤根氏を実際にどこまで守れるのかが試される。


戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない

【目次】
プロローグ プーチン氏から指名手配を受けた日
1章 二つの戦争犯罪の狭間で 国際刑事裁判所が戦争に対峙する
2章 国際刑事裁判所とは
3章 私はこんなふうに歩いてきた
4章 国際刑事裁判所と日本の未来
エピローグ 日本発の、「法の支配」を守る動きに期待して

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