トランプ氏「イランがダメなら北朝鮮」金正恩氏に急接近で日本はさらに難しい立場に

米国のトランプ大統領が、再び北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との「首脳外交」に動き始めた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは18日、トランプ氏が側近に対し、早ければ今秋にも金氏との会談を実現するよう働きかけていると報じた。対イラン軍事作戦やロシア・ウクライナ戦争の仲介が行き詰まるなか、北朝鮮で外交成果を狙う思惑もありそうだ。

軍事演習をいきなり大幅縮小

トランプ氏はすでに北朝鮮に具体的なシグナルを送っている。

米韓合同軍事演習について、米軍の参加を大幅に縮小するよう指示したとされる。さらに15日には、2019年に板門店で金氏と並んだ写真をSNSに突然投稿した。

偶然とは考えにくい。トランプ氏が金氏との再会に向け、環境づくりを始めている可能性がある。

イランもウクライナも出口が見えない

背景には、トランプ外交の焦りもありそうだ。

対イラン政策は出口が見えず、ロシアとウクライナの和平仲介でも決定的な成果を上げられていない。「戦争を止める大統領」を掲げるトランプ氏にとって、金正恩氏との首脳会談は分かりやすい外交実績になる。

第1次政権でも、トランプ氏は2018年のシンガポール、2019年のハノイ、板門店と金氏に3度会談した。特に板門店では、現職米大統領として初めて北朝鮮側に足を踏み入れた。

もっとも、歴史的な映像とは裏腹に、北朝鮮の非核化は実現しなかった。

今度の金正恩氏は以前より強い

現在の金氏は、2019年当時より強い立場にある。

北朝鮮は核・ミサイル能力を拡大し、ロシアとの軍事協力も深めている。以前ほど米国との関係改善を必要としていないため、米国側が会談を求めれば、制裁緩和や軍事演習縮小などでより大きな譲歩を要求する可能性がある。

韓国の李在明大統領も15日、朝鮮戦争を正式に終結させるための協議を北朝鮮に提案した。米国と韓国が同時に対話へ傾けば、朝鮮半島情勢が一気に動く可能性がある。

一番難しい立場になるのは日本か

そこで難しい立場に置かれるのが日本だ。

トランプ氏にとって最大の関心は、米本土を射程に収める北朝鮮のICBMと核兵器である。北朝鮮がICBMの制限などを提示すれば、トランプ氏が「米国への脅威を取り除いた」として取引する可能性はある。

しかし、日本を射程に収める中距離ミサイルや核戦力が残れば、日本にとって脅威は消えない。拉致問題が大きな米朝取引の中で後回しにされる懸念もある。

さらに北朝鮮はロシアとの関係を深め、日露関係も厳しい。米韓が北朝鮮との関係改善に向かえば、日本を取り巻く安全保障環境はさらに複雑になる。

※CRINK(クリンク)とは、中国(China)、ロシア(Russia)、イラン(Iran)、北朝鮮(North Korea)の4カ国の英語の頭文字を合わせた国際政治・安全保障用語。

トランプ氏と金正恩氏の再会は、再び「歴史的な写真」を生むかもしれない。

問題は、その写真の外で何が取引されるかだ。米朝関係だけが改善し、北朝鮮の核・ミサイル能力が残り、日朝問題だけが置き去りになる――日本が最も警戒すべきシナリオである。

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