「極右」AfDへの投票を呼びかける「保守」CDU市長

ドイツ東部に位置するザクセン=アンハルト州で来月6日、州議会選挙が実施される。複数の世論調査によると、極右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が支持率42%で独走し、他の政党を大きく引き離している。一方、前回(2021年)の州議会選では得票率37.1%で大勝した「キリスト教民主同盟」(CDU)は党内のドタバタが表面化するなど、厳しい選挙戦を強いられている。今回は同州CDUの状況を報告する。

AfDに投票を呼びかけ、寄付したCDUのプランゲ市長

同州のCDUは世論調査では支持率が約22%に留まり、前回比で大きく支持率を落としている。投票日まで3週間を切った中、同州CDUの市長が有権者にAfDに投票するように呼び掛けると共に、AfDに数千ユーロを寄付していたことが判明し、CDUに大きな衝撃を与えているのだ。

シュテンダル郡に属し、10以上の小さな村々から構成される人口約1700人の自治体「アルトメルキッシェ・ヘーエ」の市長、ベルント・プランゲ氏は、公開書簡の中で、「9月6日の選挙でAfDに投票する」意向を明らかにした。同氏は、「業績、秩序、安全、国家主権、経済的常識、そして我々の文化的アイデンティティの保護といった私の保守的な価値観が、CDU内ではますます反映されなくなっている」と述べている。

プランゲ氏の目には保守政党のCDUがここにきて急速に左傾化してきたというのだ。そして、極右政党AfDに対しては、「AfDとの協調・連立はいっさい行わない」という方針(通称:防波堤 / Brandmauer)を構築し、AfDとの連携を阻止していると訴えている。

プランゲ氏はまた、AfDに2回、計1万ユーロを既に寄付したことも明らかにした。同氏は、「これは衝動的な決断ではなく、ましてや無謀な行動ではない。それは慎重な検討を経て踏み出された意図的な一歩であり、わが国に対する深い懸念から生まれたものだ」と説明。同時に、郡議会におけるAfDとの連携を評価し、「AfD議員団との協力関係は良好かつ建設的なものだ。私たちはAfDの同僚たちと協力し、左派の提案がもたらす具体的な弊害を、これまでに幾度となく回避することに成功している」というのだ。

プランゲ市長は1967年生まれ(59歳)で、本職は運送会社(Fuhrunternehmen)を経営する実業家。長年にわたりCDUの熱心な党員として活動し、10年以上にわたってアルトメルキッシェ・ヘーエの名誉市長を務めるほか、シュテンダール郡の郡議会議員も務めている。同市長の今回の言動は、左傾化するCDUに警告を発し、本来の保守派政党に戻ってほしいという願いから出たものだという。

同市長の言動に対し、ザクセン=アンハルト州CDUの幹事長であるマリオ・カルシュンケ氏は「我々は極めて深刻に受け止めている。もし事実であれば、党法上、極めて重大な問題だ」と指摘、同市長の党除名処分を示唆している。同幹事長は、「もはや党の基本的な政治的信念を共有していないのであれば、誰であれ党員であり続けることを強制されることはない」と述べている。

ちなみに、CDU党首のメルツ首相と、ザクセン=アンハルト州における同党の筆頭候補であるスヴェン・シュルツェ氏は、これまでAfDとの協力の可能性を繰り返し否定している。

独週刊誌シュピーゲル誌によると、連邦議会の連立与党である社会民主党(SPD)からは、「地方の小さな事件ではなく、民主主義の根幹に関わる裏切り行為だ」として、CDUに対し迅速かつ厳格な処分を下すよう強い圧力がかかっているという。同市長は地方政治家の一人に過ぎないが、公開書簡の内容に共感を有するCDU党員、支持者も少なくないといわれる。

同州CDU内の混乱をよそに、AfDは単独で議席の過半数の獲得する勢いだ。シュピーゲルは最新号で同州AfD党首で筆頭候補者ウルリヒ・ジークムント氏を「ドイツで最も危険な男」と呼んでいるが、ジークムント氏が「AfD最初の州首相」になる可能性は日増しに高まってきた。同党はすでにテューリンゲン州議会で最大勢力となって久しく、ここにきてザクセン=アンハルト州やメクレンブルク=フォアポンメルン州でも同様の地位を占める公算が大きいわけだ。

いずれにしても、ザクセン=アンハルト州で「AfDの州首相」が誕生した場合、その波紋は東部の州だけではなく、ドイツ全土に広がることが予想される、そうなれば、CDU内でメルツ党首の退陣を要求する声が高まることは必至だ。

注:ドイツ通信(DPA)とドイツ民間放送ニュース専門局ntvのヴェブサイトの記事を参考にした。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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