先日も紹介した玉木雄一郎氏の動画を見ると「消費税を廃止する」といい、その代わりにDBCFT(Destination-Based Cash Flow Tax)を創設するという話をしている。これはおもしろい。
これはアメリカにも付加価値税(VAT)を創設しようという話で、共和党が提案したが、アメリカには連邦消費税がないため、大幅な増税になるとして民主党が反対した。おかげでアメリカは今、史上最大の財政危機に陥っている。
まず「消費税」を廃止する
日本の財政が行き詰まっている最大の原因は、1990年代から大蔵省の進めてきた間接税への転換が政治的な不運で失敗したことである。おかげで大衆が消費税を極端にきらい、その増税はタブーになってしまった。
そこで発想を転換して、消費税を廃止してはどうだろうか。といっても参政党のようにその赤字を国債で埋めるわけではない。その税収と同じ法人売上税を創設し、法人所得税も廃止するのだ。その理論モデルがDBCFTである。
利益ではなく「キャッシュフロー」に課税する
現在の法人税は、企業の「所得」に課税する。売上から仕入れ、人件費、減価償却費、支払利子などを差し引いて利益を計算するため、会計も税務も複雑になる。
しかしDBCFTは国内でのキャッシュフローを課税ベースとし、設備投資は減価償却せず、その年に全額控除する。借金による資金調達を特別扱いせず、借り入れも返済も金利支払いも控除しない。
さらに「仕向地主義」なので、輸出品には課税せず、輸入品は国内で課税する。工場や本社がどこにあるかではなく、最終的に商品やサービスがどこで売れたかを基準に課税する。この仕組みは投資や企業立地への税制上の歪みを小さくし、利益移転にも強い。
現在の法人税では本社をタックスヘイブンに移したり、グループ企業間の取引価格を操作したりして、日本で計上する利益を小さくする余地があるが、DBCFTならタックスヘイブンに本社を移しても、売り上げが日本で発生する限り税額は減らない。

税率20%なら法人税も消費税もなくせる
2026年度の国の税収見込みでは、消費税が26.7兆円、法人税が20.7兆円で、合計約47.4兆円である。これを現在の消費税とほぼ同じ課税ベースの「法人売上税」に変更すれば、単純計算では税率18%なら約48兆円となる。
つまり消費税と法人所得税を廃止し、企業の国内売上に対する税率を18%課税する法人売上税は、税制上は可能である。欧州のVAT(付加価値税)では、税率20%が普通である。
企業から見ると法人所得税がなくなるので、日本で利益を上げることへのペナルティは大幅に小さくなる。設備投資も即時控除できるため、投資促進効果も期待できる。IMFも、法人所得税からDBCFTへの移行は長期的には投資と潜在成長率を押し上げる可能性が高いとしている。
ただしDBCFTとVATは同じではない
ここには重要な注意点がある。厳密なDBCFTでは、企業は人件費も課税ベースから控除するため、通常のVATより課税ベースは小さい。したがって純粋なDBCFTを18%にしただけでは、現在の法人税と消費税をすべて代替できない。
IMFの国際比較でも、同じ税率ならDBCFTの税収は平均的には現在の法人所得税に近い規模になるとの推計があるので、税率20%だとネットで減税になるが、企業は世界中から日本に集まるので、税収は増えるだろう。
- 法人の利益ではなくキャッシュフローに課税する
- 減価償却を廃止し、投資はただちに経費として控除する
- 金利にも配当にも課税する
- 給与も経費として控除する
- 消費地で課税し、海外の利益には課税しない
という原理で消費税の課税ベースも統合した法人売上税をつくれば、20%程度の税率で、法人所得税と消費税を一つの税にまとめることができる。
最大の障害はOECDの「法人税15%」ルール
制度的な唯一の問題は、OECDのグローバルミニマム課税だ。現在は大規模な多国籍企業について、各国で原則15%以上の法人所得課税を確保する制度があり、日本でも法制化されている。
ところがOECDのルールで「対象租税」とされるのは基本的に企業の所得や利益に対する税で、VATなどの間接税は含まれない。日本がDBCFTだけにすると、それがOECDルール上の法人所得税と認められなければ、日本企業に対して外国政府が追加課税するという本末転倒な事態も起こりうる。
したがって法人売上税への転換には、国内法を変えるだけではなく、OECDの国際課税ルールを見直す必要がある。これは各国の財政当局の既得権を守る租税カルテルで、経済学者には批判が強い。利益への課税そのものをやめ、企業が実際に商品を売った市場で課税すれば、租税回避もできなくなる。
シャウプ勧告以来の大改革
法人所得税は20世紀型の税である。21世紀のグローバル経済では、法人の「国籍」や帳簿上の「利益」を追いかけるより、国内で生み出されたキャッシュフローや国内市場での売上を課税ベースにしたほうがはるかに簡単だ。
消費税を「消費者が払う税」、法人税を「企業が払う税」と分けて考える必要もない。どちらも最終的には価格、賃金、配当などを通じて家計が負担する。法人税も法人という人が負担するわけではなく、家計に(製造コストとして)転嫁されているのだ。
これによって日本はタックスヘイブンになるので、世界中からグローバル企業が集まるだろう。投資コスト全額を経費として即時控除すれば、大幅な投資減税になり、投資不足も解決する。人件費も控除されるので、賃上げのインセンティブも強まる。
唯一の問題は「消費税を上げる」というイメージだが、これは逆に消費税を廃止すればよい。もともとこれは大蔵省が業者に課税する「第二法人税」として考えたもので、消費者が払う税ではない。これは消費税も法人税も大幅に減税し、税制を大幅に簡素化する。戦後の日本で直接税中心の税制をつくったシャウプ勧告以来の大改革である。






コメント