
レジの改修が間に合うかというだけじゃない
いよいよ、消費税について飲食料品だけ令和9年4月からの2年間だけ消費税率が1%になりそうです。
この1%の理由は、本来であれば税率0とすべきところを、それだとレジなどの改修作業が間に合わないので、消費税率は1%にした上で、その1%相当の金額は、低所得者向けに給付付き税額控除を実施するんだそうです。
それができるなら、最初から全額の給付付き税額控除をすればよいのではと思うのですが、国民全体が、消費税の減税に熱狂しているので、もう止めようはなさそうです。
そこで、今回は、実際に、飲食料品の消費税が2年間だけ税率が1%になった場合、経理処理はどうなるのかという話をしてみます。
さらに増える消費税の税区分
会計ソフトによる経理処理をしている場合、その会計ソフトでは、自動で消費税が計算できるよう、勘定科目ごとに消費税の計算をするための税区分コードを設定する必要があります。
例えば、同じ消費税の税率が0であっても、消費税の課税対象の要件を満たさない「不課税」、政策的な配慮で課税を求めない「非課税」、海外で課税がされるので重複した課税を避けるための「免税」の三種類があり、それぞれ取り扱いが異なるため、区分が必要です。
一方で、消費税が課税される場合、標準税率の10%、軽減税率の8%がありますが、ややこしいのは、リース取引など、消費税率が8%のころから継続している取引については、旧消費税率8%が適用される。
この旧消費税率8%は(国税6.3%、地方税1.7%)であるのに対して、軽減税率は(国税6.24%、地方税1.76%)と内訳が異なるために、区分して管理する必要があります。
さらに、輸入などの取引については、消費税などは別のタイミングで通関業者に支払うため、輸入した段階と消費税を支払った段階でそれぞれ特別なコードで管理が必要となります。
その上、仕入れについては、支払先がインボイスを発行できる適格請求書発行事業者か免税事業者なのかの区分が必要で、既にカオスな状態です。
ここに、消費税率1%(おそらく国税0.78%、地方税0.22%)という新たな消費税のコードが増えることになります。
これらについて、会計、販売管理、仕入管理、経費精算、POSレジの各システムで同じ設定にしなくてはなりません。
商品マスターの税率、請求書の税率別合計と消費税額、仕訳連携の設定も確認が必要になるのです。
軽減税率の処理の厳格化も
コンビニやスーパーなどでの買い物については、標準税率によるものと軽減税率によるものが混在していることがあります。
それらの経理処理については、当然、区分をした経理が必要なのですが、現実には、軽減税率を区分することなく、標準税率で処理をしていても、税率差が2%しかないことから、税務調査でも「指摘はされど修正は求められない」ということが多かったと言えます。
しかし、飲食料品について、税率差が9%となると、税務署としても修正を求めることもあり、経理サイドとしてもその対応を求められることも考えられます。
ただ、このあたりは、実際に指摘されたことによるペナルティの確率論的な期待値と事務負担との冷静な比較も必要でしょう。
給付付き税額控除の従業員ごとの管理も
具体的な処理方法は全く決まっていませんが、仮に、消費税1%相当額の給付付き税額控除を岸田首相の「定額減税」と同様な仕組みで行うとなれば、年末調整時にその従業員ごとの計算が必要になります。
実際に、今後の給付付き税額控除について、2026年5月の社会保障国民会議では、給与所得者について、事業主が年末調整で控除を適用し、源泉徴収税額との差額と給付を一体的に精算する案も示されました。
一方で、2026年7月29日の中間取りまとめでは、年末調整方式ではなく、所得に連動した給付に一本化し、国と地方自治体が公金受取口座などを使って支給する方向が示されました。
ただ、今回の経過措置としての消費税1%分の給付付き税額控除については、時間的にもその余裕はなく、おそらく所得要件を加えた「定額減税」になるのではないかと。
この方式なら、経理や給与担当者は、まず対象者を確定します。
主たる勤務先なのか、居住者なのか、所得制限に該当しないかを確認し、本人の年間所得、配偶者や扶養親族の所得、子どもの年齢など、給付額を左右する情報を申告書から集めます。
次に、従業員ごとの年間税額を計算し、給付付き税額控除を充当します。
税額から引ききれた控除額と、現金で支給する給付額を分けて個人別に管理し、12月の給与や賞与、源泉所得税の納付額、給与明細、源泉徴収票へ反映させることになります。
年の途中で入社や退職をした人、複数の勤務先がある人、給与以外の所得がある人はさらに厄介です。会社が把握する自社の給与だけでは正しい給付額を決められません。
後日、自治体が名寄せした所得情報と食い違えば、追加給付や返還を誰が処理するのかという問題も生じることになるでしょう。
給付付き税額控除は簡素化の穴埋めに行うものでは
給付付き税額控除が、消費税の軽減税率をやめて標準税率への一本化や、政治家のおもちゃにされてもはや税理士でもよくわからないほど複雑化した所得税の人的控除を整理統合する過程で生じる歪みを補正するためのものであれば、その導入には賛成したいところです。
しかし、どうもそのような議論は、まったくなく、人気取りのための減税の手段として提案されたものであれば、経理サイドとしては迷惑な話です。
その上、給付付き税額控除の経過措置が、消費税簡略化とは全く別の方向である飲食料品のみの消費税の減税というのは、もうなんなんでしょうね。

編集部より:この記事は、税理士の吉澤大氏のブログ「あなたのファイナンス用心棒」(2026年8月25日エントリー)より転載させていただきました







コメント