欧州サッカー連盟(UEFA)が、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティノ会長をスイスで刑事告訴する方針を固めた。問題となっているのは、W杯などFIFAの主要大会から生まれる商業収入を新会社に移し、その株式の一部を外部投資家に売却しようとした構想だ。
7月には大型資金調達策として発表された計画が、わずか1カ月でインファンティノ体制を揺るがす問題へ発展した。

FIFAジョヴァンニ・ヴィンチェンツォ・インファンティノ会長
W杯の商業権を200億ドルで切り出す計画
発端は7月下旬。FIFAは放映権やスポンサー、チケット、ライセンスなどの収益事業を新子会社にまとめ、企業価値を約200億ドルと評価。その最大20%を外部投資家に売却し、約40億ドル超を調達する構想を打ち出した。
出資を主導するとされたのが、ジョシュア・クシュナー氏率いる米投資会社だった。クシュナー氏はトランプ米大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏の弟である。
ところがUEFA側は、「W杯を投資商品化するものだ」と猛反発した。しかも重要な計画でありながら、各地域連盟への説明が十分になされていなかったことも不信を強めた。
欧州55協会が「FIFA大会ボイコット」
UEFAと加盟55協会は、計画が撤回されなければFIFA主催大会への参加を見送る構えを示した。
欧州の強豪国がW杯から離脱すれば、大会の商品価値そのものが揺らぐ。FIFAは圧力に耐えきれず、インファンティノ氏は計画の撤回を表明した。
しかし、それで騒動は収まらなかった。FIFA内部からも「十分な説明がなかった」との批判が噴出し、幹部の辞任や離脱が相次いだ。問題は子会社構想の是非だけでなく、インファンティノ氏に権限が集中したFIFAの意思決定そのものへ広がった。
「安すぎる200億ドル」が刑事問題に
今回UEFAが問題視している最大の争点は、200億ドルという新会社の評価額である。
UEFAはこれを「とんでもなく低い」とみており、FIFAが持つ将来のW杯商業収益を不当に安く外部投資家へ渡そうとしたなら、FIFAに対する背任行為に当たる可能性があると主張する。
UEFAは米国の裁判所を通じ、FIFAの米州関連組織や投資会社側に交渉資料などの開示を求める方針だ。その内容を踏まえ、スイスでインファンティノ氏を刑事告訴する構えで、場合によっては他のFIFA役員や顧問も対象になるという。
もちろん現段階ではUEFA側の主張にすぎず、犯罪行為が認定されたわけではない。それでも、なぜ200億ドルだったのか、誰が評価し、誰とどのような交渉を進めたのかという疑問は残る。
問われているのはFIFAの統治そのもの
今回の問題は、単なる「W杯の営利化論争」ではない。
FIFAは2015年の大規模汚職事件を受けて改革を掲げ、翌年インファンティノ氏が会長に就任した。その改革後のFIFAで再び、透明性や利益相反、権力集中が問われているのである。
計画を撤回したから終わりではない。世界最大級のスポーツビジネスであるW杯の価値を、誰が、どの手続きで、いくらと判断したのか。その検証なしには疑惑は消えない。
UEFAによる刑事告訴が捜査や立件につながるかはまだ分からない。しかし今回の騒動で、「サッカーは誰のものなのか」というFIFAにとって最も根本的な問いが、再び突きつけられたことだけは確かだ。







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