個人向け国債、ネット証券の販売が4倍超に:今は買い時か?

長らく「退職金を運用する高齢者の商品」という印象の強かった個人向け国債に、若い世代のお金が流れ始めている。日本経済新聞によると、主要ネット証券4社の2026年1~6月の個人向け国債販売額は5400億円を超え、前年同期の4.4倍に膨らんだ。

「安全だが利息のつかない貯蓄」ではなくなった

背景にあるのは、金利のある世界の復活である。2026年9月募集分の個人向け国債は、固定5年が年2.24%、固定3年が1.96%、変動10年が1.95%となっている(図)。いずれも税引き前だが、ゼロ金利時代を知る人には隔世の感だ。

特に目を引くのが固定5年の2.24%である。三井住友銀行のスーパー定期の標準金利は、5年物でも年1.0%。普通預金についても大手行ではおおむね0.4%程度だ。個人向け国債の利回りは、もはや銀行預金と比較して無視できない差になっている。

たとえば100万円を固定5年に投資すれば、年間利子は税引き前で2万2400円、税引き後では約1万7850円になる。同じ100万円を年1%の定期預金に置いた場合の税引き後利息は約8000円なので、単純計算では年間約1万円の差になる。安全資産の中では、かなり大きな違いだ。

元本割れしないのが最大の特長

個人向け国債の強みは、単に金利が高くなったことだけではない。通常の国債は、市場金利が上昇すると債券価格が下落する。したがって満期前に売却すれば元本割れする可能性がある。

ところが個人向け国債は、発行後1年を経過すれば国が額面で買い取る仕組みになっている。中途換金すると直前2回分の利子相当額が差し引かれるが、市場価格の下落によって元本が大きく毀損することはない。最低購入額も1万円である。

「元本保証で2%前後の利回り」というのは、安全資産としてかなり魅力的な商品になった。ネット証券で販売が4倍になったのも不思議ではない。

では今、固定5年を買えばいいのか

ただし少し問題がある。日本の金利はまだ上がっているからだ。9月1日には新発10年国債利回りが一時3.00%に達し、約30年ぶりの高水準となった。背景には日銀の追加利上げ観測だけでなく、インフレや高市政権の積極財政に伴う国債増発への警戒もある。市場では3%は通過点との見方も出ている。

つまり固定5年を2.24%で買ったあと、市場金利がさらに上昇し、来年の個人向け国債が2.5%、3%となれば、国に売却すればキャピタルロスは出ないが、金利を5年間固定したことによる機会損失が出る。

変動10年は半年ごとに金利が見直される。基準となる10年国債金利に0.66を掛けて適用利率を決める仕組みなので、今後さらに長期金利が上昇すれば受取利子も増える。今後も金利上昇が続くと考えるなら、変動10年のほうが合理的な選択肢だ。

「預金から国債へ」は自然な流れ

それでは今は買い時なのか。少なくとも、普通預金に数百万円、数千万円を眠らせている人にとっては、個人向け国債を検討する価値はかなり高くなったと言える。

ただし固定5年に全額を一度に投じる必要はない。個人向け国債は毎月発行されるため、購入時期を分散することもできる。固定5年と変動10年を組み合わせる方法もある。金利がさらに上昇する可能性を考えれば、「今の金利を確保しながら、将来の金利上昇にも備える」という考え方が自然だろう。

ゼロ金利時代にはほとんど存在感のなかった個人向け国債が、ようやく本来の「国民の安全資産」という役割を取り戻しつつある。今は個人向け国債そのものが「買い時」というより、預金だけで資産を持つ時代が終わりつつあると考えたほうがいいのかもしれない。

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