黒坂岳央です。
「好きな仕事をしなさい」。この言葉が筆者は嫌いだ。
なぜなら、それを言える人間は、自分が好きな仕事をできていること自体が恵まれた状態だという事実を忘れているからだ。単なる生存者バイアスが表面だけを見て、必死に生きる普通の人を見下している構図になっている。
もしかしたら本人は「ライスワーク(生活を維持して食べるための仕事)なんてやめて、さっさと好きな仕事をすればいいのに。行動力がないな」くらいに親切心からそう思っているかもしれない。だが、そんな教科書通りにいくなら世の中に戦争もなければ株の暴落もない。彼らは多くの事実を見落としている。
「好きを仕事にしていない自分はダメなんだ」と心を病ませるので、ライスワークをバカにする人と関わるなといいたい。持論を述べたい。

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ライフワークでは食えない
筆者はコールセンター派遣時代、たくさんの夢追い人を見てきた。
「いつか東京にいって音楽で食う」という夢追いバンドマンや、小さな役をもらいながら働く声優さんたちだ。彼らは20代でまだ若く、「将来は夢を叶える」といって毎日電話を取っていた。
一緒に話すといかに自分の夢が楽しいかを目を輝かせて話してくれた。そしてそこから20年以上がすぎ、Facebook越しに見ると、彼らのほぼ全員が夢追い人が夢を追うのをやめた。生活が成り立たないからである。
自分は氷河期世代というのもあって、当時は正社員は高嶺の花、「いつかビッグに」という夢を追う若者が周りにたくさんいたと記憶している。フリーターをやるのは「夢を追う自由な時間のため」だった。だが、その夢は夢だったのだ。
どれだけ好きでも、それだけで必ず飯が食えるわけではない。これが厳しい現実だ。夢追いバンドマンも音楽が好きであることと、音楽に市場価値があることは別問題だからだ。
筆者は今、ライフワークをしている。つまり好きな仕事だけをやっている。でも自分は上から目線で自慢などしない。ただ運が良かっただけだ。最初はライターの原稿料だけではとても生活など出来なかった。
自分は記事を書いてきて、それが色んな仕事につながっていたが、狙って出来たものではない。半分は運だ。また、法人を持っていてそのビジネス収入があったから、最初は稼げない夢を追えただけというのもある。
「ライスワークが嫌ならライフワークやればいいのに」生存者バイアスの塊、令和のマリーアントワネットからのお言葉である。
大多数の人はライフワークはない
厳しい現実として、ほとんどの人は「人生をかけて熱中できる労働」なんて見つからないと思う。博報堂生活総研の調査では、「今、自分の望む仕事についている」と答えた有職者は4割にとどまる。
そしてそれは仕事のマッチングが理由ではない。「熱量」は才能そのものだからだ。
もちろん、仕事の人間関係、相性、報酬システムなどによって多少変動はするが、生まれ持った熱量の総量は確実にあると思っている。
筆者は熱量多め、好きなことにはフルコミットするタイプだ。学生時代はゲームにハマれば、ファミ通など数々のゲーム雑誌のやり込み企画に掲載される常連になった時期もあったし、脱サラして独立した直後は毎日16時間を365日仕事をした。これが出来たのは自分は熱量が生まれつき多いからだと思っている。
だが、好きなことなら同じ熱量で誰でもやれる、なんて全く思わない。自分はゲーム好きだが、小学生の頃友達は1時間もやれば飽きた、疲れたといっていた。自分は12時間以上でもぶっ通しで毎日出来た。どれだけ好きなものでも、それがたとえ娯楽や恋愛でも熱量がなければ、途中で疲れて飽きる。それがほとんどの人の現実だ。
ライフワークを推奨する人は仕事はマッチングが全てだと勘違いしている。だが、現実問題、仕事の結果は熱量だ。そして「好き」という情熱は生まれつき与えられたエネルギーみたいなものなので、合う仕事を見つけたら誰でも出来るわけでは無い。彼らはここを見落としている。
推し活やオタクはバカにされがちだが、普通の人はあんなにハマれない。だから彼らは才能を持っている。もしもそのエネルギーを他の有意義なものへ振り向けたら成功者になれるポテンシャルがある。
ライスワークからもやりがいを見出す
今、筆者は自分が好きなこと、適性分野はよく理解しているので、その仕事をしている。
だが、独立するまでは才能がなく好きじゃないことばかりやっていた。だから結果もあまり出せなかったし、仕事に行くのが辛かった。一生懸命やったし、土日祝日は自主的にスクールに通って夜遅くまで資格の勉強までやった。だが、それでも好きになれなかった。だから仕事の適性は存在するのは分かる。
しかし、そんな好きになれない仕事でもやりがいは見つけられた。自分は「ライフワークをしよう」ではなく、「好きでなくてもやりがいを感じやすい仕事をしよう」と提案したい。
たとえば筆者はコールセンターの発信業務が大嫌いだった。お客様の携帯に電話をかけてプランに申込をしてもらう。これをすると相手から嫌われるし、「忙しいのにかけてくんなボケ」と暴言を吐かれることもあった。
しかし、「お困りのことはないですか?不便はありませんか?」から提案するように変えたら「大丈夫、わざわざありがとう」とお礼をいってもらえるように変化した。この瞬間からいきなり発信業務が楽しくなり、大きくノルマ件数を稼げるようになったのだ。
◇
ライスワークを続けながら、仕事の中にやりがいを見つけてもいい。最初から「好きなことを仕事にする」必要などない。ライスワークをやっているうちに、それがライフワークになることだってある。
ライフワークをやたらと推奨する人は、大抵、相手に売りつけたい何かを持っている事が多い。つまり、商売道具として耳障りのいいことを言っている。筆者はそうした人の不満や不安に漬け込む狡猾な商売は健全でないと思ってしまうのだ。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)







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