ドイツMV州議会選でSPDとAfDが首位争い

ドイツで20日、ベルリン市(特別州)と北東部メクレンブルク・フォアポンメルン州の議会選が実施される。世論調査によると、今月6日のザクセン・アンハルト州議会選で圧勝した「ドイツのための選択肢」(AfD)が与党「社会民主党」(SPD)と激しいトップ争いを展開する一方、メルツ首相が率いる「キリスト教民主同盟」(CDU)は同州でも苦戦を強いられており、選挙結果次第では、メルツ首相の退陣を求める声がCDU内で更に高まることが必至だ。

メクレンブルク・フォアポンメルン州のシュヴェージヒ州首相(SPD)、同首相の公式サイトから

今回はメクレンブルク・フォアポンメルン州(MV)の議会選を報告する。同州はドイツに16ある連邦州のひとつであり、1990年のドイツ再統一により加盟した「新連邦州」のひとつ。バルト海に面し、人口は約170万人で、人口密度はドイツの州では最も低い。

州議会選挙の最大の注目点は、極右政党AfDの躍進と、SPDによる激しい首位争いだ。最新の世論調査ではAfDが首位を維持する一方、SPDが急速に追い上げ、緊迫した情勢となっている。また、国政与党のCDUは苦戦を強いられており、いずれの政党も単独過半数には届かない見通しだ。

州議会選挙における主な争点は、「教育・学校」「経済・雇用」「移民・難民政策」の3つに集約される。そのほか、医療体制や国政(ベルリンの中央政府)への批判が選挙戦を大きく左右している。例えば、世論調査で有権者が最優先課題として挙げているのが教育問題。教員不足の解消、学校のデジタル化、地方の学校網の維持が問われている。AfDなどは小学校(5年生)からの実技・工作科目の導入や、基礎学力の強化を公約に掲げている。

経済問題では、賃金の格差問題や雇用問題が問われている。同州は観光や農業が中心で大企業が少なく、ドイツ国内で平均賃金が最も低い水準。シュヴェージヒ州首相は再生可能エネルギーの拡充(洋上風力など)をフックに、ロストックの造船所への大規模投資やデータセンターの誘致を成功させた実績を強調し、協定賃金(ターリフ)の適用される良質な産業雇用の創出を主張している。それに対し、AfDは若者や熟練労働者がチャンスを求めて州外へ流出している現状を批判し、官僚主義の打破(規制緩和)や、エネルギー価格・税金の引き下げによる経済活性化を求めている。

ドイツ全土で関心が高まっている移民政策は、同州でも重要な争点だ。難民の受け入れ負担や統合をめぐる議論が活発だ。地方の治安維持も紐づいており、AfDなどは地域密着型の警察署の増設や司法手続きの迅速化を求めている。また、広大な面積に対して人口密度の低い同州では、医師不足も深刻で、医療アクセスの確保が切実な問題だ。

今回の選挙戦では、物価高や年金改革案などをめぐりベルリンの連邦政府に対する不満の声が非常に強い。シュヴェージヒ州首相(SPD)は、人気のない連邦政権(CDU/CSUとSPDの連立)と明確に距離を置き、年金支給開始年齢の引き上げ反対やガソリン価格の上限設定を求めるなど、「州民の代弁者」として戦う戦略をとっている。

ちなみに、独の代表的メディア,週刊誌シュピーゲルやFAZ(フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング)は、支持率が7%前後に低迷するCDUの深刻な危機を大きく報じている。シュピーゲル誌は、CDU党内から「5%条項(阻止条項)に阻まれ、議会から締め出されるのではないかという強い危機感が聞こえる」として、「メルツ連邦党首への逆風は予想以上い強い」と解説している。

なお、シュピーゲル誌によると、AfDが第1党(世論調査で37%前後)になる可能性が高く、他党がAfDとの連立を拒否している(防火壁:Brandmauer)ため、選挙後の政権樹立は難航すると予測されている。現在の「SPD・左翼党(Die Linke)」の2党連立の維持は難しく、緑の党などを加えた3党連立がより現実的なシナリオだ。

【参考情報】
メルツ首相は、来週予定されていた国連総会一般討論への出席に向けたニューヨークへの渡航を取り止めた。政府関係者は15日夜、「当初の計画とは異なり、ベルリンでの対応が必要となったため、首相は来週ニューヨークへは渡航しない」と明らかにした。
国連総会での首相の演説は、23日の午後遅くに予定されていた。これは、メクレンブルク=フォアポンメルン州およびベルリンでの州議会選挙の3日後にあたる。これら2つの選挙は首相の政治的将来を左右する極めて重要なものと見なされており、CDU(キリスト教民主同盟)が選挙で歴史的敗北を喫して以来、メルツ氏は党内で激しい圧力にさらされてきた。
メルツ氏は、選挙結果がもたらす影響を協議するため、20日の夜にCDU執行委員会の会合を招集しました。21日には、執行委員会が党指導部(連邦委員会)のメンバーも交えて再び会合を開く予定だ。また、22日には連邦議会におけるCDU/CSU議員団の会合も予定されている(オーストリア国営放送=ORF)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年9月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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