朝6時にバイクを漕ぐ会長? 単に、楽しいだけでした

(前回:「頭がいい奴が勝つ」と思ってた? 勝つのはやめない奴!

早朝の電話会議。向こうから、妙な音が聞こえてくる。

シュパッ、シュパッ。

……何の音だ、これ。

正体は、フィットネスバイクだった。漕いでいるのは、本書の著者が長年お世話になった会社のアメリカ人会長。世界中を飛び回るビジネスパーソンで、早朝の電話会議にもバイクを漕ぎながら参加することが多かったという。いや、会議中にやる?(やるらしい)

著者は聞いた。「毎朝6時から運動するの、大変じゃないですか?」

誰だって聞く。私も聞く。

会長の答えは、拍子抜けするほど人間くさかった。

もちろん大変だよ。本当はもっと寝ていたいし、ゆっくりしたい。でも、それを自分に許すと、サボる理由なんていくらでも出てくる。だから、これだけはやると決めている――。

ここまでなら、ただのストイックな人だ。正直、私はこの手の話が苦手である。「意識が高い人の朝活自慢」にしか聞こえないから。

ところが会長は、こう続けた。朝に運動しておくと、日中どんなに大変なことが起きても「これだけはやった」って思えるんだよね、と。

あ、そっちか。

著者も最初は「厳しい自己管理の話」だと思ったらしい。でも話を聞くうちに気づく。この人にとって、朝の運動は苦行じゃない。1日のスタートの「プチ楽しみ」なのだと。

といっても、キャーキャーはしゃぐ楽しさじゃない。胸の奥がじわじわ満たされる、ちょっとした達成感。充実感。それだ。

困難を乗り越えると、人は成長する。まだ出会っていない、進化した自分に会える。その期待が人を動かす――と著者は書く。

例がまた、いい。英単語を10個覚えた朝。模試の点数は伸びなかったけど、新しい気づきがあった日。体重は減らないのに、なぜか体が軽い感覚。

地味。とことん地味。でも、それでいい。

というか、ここが肝なのだと思う。私たちは、結果が数字に出ないとすぐやめる。体重計に乗って、減ってなくて、はいおしまい。3日坊主の完成である(何度やったことか)。

でも、続けられる人は見ている場所が違う。数字じゃなくて、手応えのほうを見ている。

だから続く。続くから、楽しい。楽しいから、また続く。

……これ、ずるくないか?

ずるい。でも、真似できないほどじゃない。明日の朝、英単語を10個。とりあえず、そこからでいい。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

こうやって「続けられる人」になる』(ヴィランティ牧野祝子 著)SBクリエイティブ

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】  39点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】  20点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】  19点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【78点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
・経験に裏打ちされた説得力:20年にわたり10ヵ国以上で働き、ベイン・アンド・カンパニー、ロレアル、ディアジオ、伊系ファッション企業と業界をまたいで成功者を見てきた経験が、主張の土台になっている。

・「続けられる人」の再定義:継続できる人を意志の強い超人ではなく、「しんどい」「めんどくさい」を抱えながら歩みを止めない人と捉え直した点は、継続に挫折してきた読者の支えになる。

・身近で具体的な事例:早朝にフィットネスバイクを漕ぐ会長の逸話や、英単語を10個覚えた朝といった例が、「小さな手応えを成長として味わう」という主張を理解しやすくしている。

【課題・改善点】
・既読感の強さ:著者の既刊と重なる印象が強く、新鮮さを感じにくい。

・既存読者への物足りなさ:著者の本を何冊か読んでいる読者にとっては、新たな発見が少ない。

・読者との距離感:外資系企業を渡り歩いてきた著者の経歴は心強い裏づけになるが、多くの読者は日々の仕事に向き合う会社員である。経歴や実績の差が大きいぶん、成功者の側から語られる話を、自分とは別の世界のことと受け取る人もいるだろう。読者と同じ目線に立つ場面がもう少しあれば、より身近に感じられたのではないか。

■ 総評
「人生がうまくいく人は頭がいい人ではなく続けられる人だ」という主張を、20年にわたり10ヵ国以上で働いてきた著者自身の経験で裏づけた1冊である。成功者も「やりたくない」という感情を抱えているという指摘や、小さな手応えを成長として味わう視点は、継続に悩む読者の支えになるだろう。

全体の構成もうまくまとまっている。ただし、著者の既刊を何冊か読んできた読者には既読感が強く、新鮮さに欠ける。また、華やかな経歴をもつ著者が語る成功論は、日々の仕事に向き合う会社員には少し遠く感じられるかもしれない。この著者の本を初めて手に取る読者にこそ勧めたい。

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