NHKの新しいネットサービス「NHK ONE」の閲覧数が、旧NHK NEWS WEBの時代に比べて大幅に落ち込んでいる。内部資料では昨年に比べて85%減だという。いちいち受信料契約を確認され、使いにくくなったからだ。なぜそんなことをしたのか。

新聞協会は「無料の文字ニュースから撤退せよ」と要求した
その原因は2025年10月の放送法改正である。NHKのネット配信が必須業務となった一方、民放や新聞との「公正な競争」への配慮も法律上求められた。その結果できたのが、受信契約を確認してからニュースを読ませる現在の仕組みである。
その背景にあるのが、長年続いてきた「NHKのネットニュースは民業圧迫だ」という新聞業界や民放の批判である。日本新聞協会はNHKのネット展開に一貫してきびしい姿勢を取り、2023年には総務省の公共放送ワーキンググループに対し、NHKは「無料の文字ニュースから完全に撤退すべき」とまで主張している。
理由は単純だ。受信料という安定財源を持つNHKが、大量の記者を使ってニュースを取材し、それを無料でネットに公開すれば、購読料や広告収入で経営する新聞社は太刀打ちできないからだ。この「民業圧迫論」がオールドメディアを守り、インターネットを妨害してきた。
インターネットを敵視してきた新聞・民放
旧NHK NEWS WEBは、検索から記事を開けば誰でもそのまま読め、月間約4億PVの、日本最大級のニュースサイトだった。テレビを持っているかどうかも、NHKと契約しているかどうかも関係なかった。
ところがNHK ONEが始まると状況は変わった。NHK ONEではニュース記事や動画を含むインターネットサービスの利用に受信契約が必要になった。テレビを持たず、NHKと契約していない人が継続的に利用すれば新たに契約が必要になる。
ネットニュースにとってこれは大きなハンディである。Googleで検索して興味のある見出しをクリックする。そこで契約や利用確認の説明が出てくれば、多くの人はわざわざ手続きをしない。Yahoo!ニュースや民放、新聞社の記事へ戻ればいいからだ。
NHKが読まれなくなれば新聞は救われるのか
NHK ONE開始後も、新聞協会はNHKのネット事業縮小を求め続けている。2026年度のNHKのインターネット関連予算は205億円。このうち番組関連情報の配信に81億円を計上した。
新聞協会はこれを「民間メディアをはるかに上回る規模」と批判し、「抑制的な予算執行」を要求している。要するに、「受信料を使って新聞と競争するな」ということである。しかしここには一つ根本的な疑問がある。
NHK NEWS WEBを不便にしたら、その分だけ新聞の有料購読者が増えるのだろうか。実際にはGoogleニュース、Yahoo!ニュース、YouTubeなどへ流れるだけかもしれない。日本の報道機関同士で「客を奪うな」と縄張り争いをしているうちに、ユーザーはオールドメディアを見放してしまう。
オールドメディアが日本のコンテンツを阻害する
新聞協会や民放連は、こういう「民業圧迫」論でNHKのインターネット業務を縛り、オールドメディアの独占を守ろうとしてきた。その結果、日本のインターネット発信力は弱まり、新聞も民放も経営が傾いた。「民業保護」で民業も弱体化したのだ。
公共メディアに最も必要なのは、できるだけ多くの国民に正確な情報を届けることだ。「民業圧迫」を防いで「公共情報」を圧迫してしまったとすれば、NHK ONEの閲覧数減少は、日本のメディア政策そのものを象徴する皮肉な結果である。
NHKより早く2000年代からインターネット放送を開始したBBCは、全世界で月間10億PVを超える世界最大級のニュースサイトになったが、NHK ONEは4600万PV。海外では存在も知られていない。「クールジャパン」を世界に売り込むソフトパワーを阻害しているのは、規制の大好きなオールドメディアなのだ。






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