ウクライナ、ロシア下院選最終日のモスクワに過去最大の無人機攻撃

450機がモスクワに向かう異例の攻撃

ロシアの首都モスクワとその周辺が9月20日、ウクライナによる過去最大規模の無人機攻撃を受けた。モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は、19日から20日にかけてロシア側が1600機以上の無人機を迎撃し、このうち約450機がモスクワに向かっていたと発表した。ロシア国防省も20日、ロシア各地や占領地域などで1110機を撃墜したとしている。いずれもロシア側の発表であり、正確な飛来数を独立して確認することは難しいが、2022年の侵攻開始後、モスクワを標的とした最大級の攻撃となった。

被害も広がった。モスクワ州のボロビヨフ知事によると、攻撃による死者は3人に達した。ラメンスコエ地区では無人機の落下によって21階建て集合住宅で火災が発生し、子供70人を含む約400人が避難した。モスクワ市内でも住宅が被害を受けたほか、空港の運航にも影響が出た。

狙われたモスクワ製油所

特に注目されたのが、モスクワ南東部カポトニャにあるモスクワ製油所への攻撃だ。現場では大きな黒煙が上がり、ソビャニン市長も施設が損傷したことを認めた。ロイターによると、同製油所は2024年に1160万トンの原油を処理し、ガソリン約290万トン、軽油約320万トンを生産した首都圏の重要な燃料供給拠点である。

ウクライナはここ数カ月、ロシア国内の製油所や石油関連施設への長距離攻撃を強めている。ゼレンスキー大統領は今回の攻撃後、モスクワ州で「ロシアの主要な石油産業施設」と物流施設が攻撃されたと述べ、「戦争機械を支える数十億ドル」を狙ったとの認識を示した。単なる首都への示威攻撃ではなく、ロシアの戦争遂行能力とエネルギー収入を削る狙いが鮮明になっている。

ロシア下院選の最終日を直撃

攻撃が行われた20日は、ロシア下院選挙の投票最終日でもあった。ソビャニン市長は「前例のない攻撃は選挙を妨害する目的で計画された」と主張した。ただし、その目的を裏付ける証拠は示していない。

これまで戦場から遠い存在だったモスクワに、数百機規模の無人機が同時に向かう事態は、戦争の様相が変化していることを象徴している。安価な無人機を大量投入すれば、すべてが目標に到達しなくても、防空ミサイルを消耗させ、空港を閉鎖させ、市民生活や経済活動に大きな負担を与えることができる。首都の防空網そのものに圧力をかける「飽和攻撃」の性格も強い。

燃えるモスクワ ゼレンスキー大統領Xより

欧州とロシアが意図せず直接衝突する危険

さらに懸念されるのは、こうした大規模な無人機戦が国境を越えて拡大していることだ。9月15日にはNATO任務中のイタリア軍戦闘機がリトアニア領空に侵入した無人機を撃墜し、ロシア製である可能性が指摘された。バルト諸国やポーランド周辺でも無人機をめぐる緊張が高まっている。

モスクワへの攻撃が拡大する一方、ロシア側の攻撃もNATO加盟国の国境ぎりぎりまで迫っている。問題はロシアや欧州が全面戦争を望んでいるかどうかだけではない。無人機の誤侵入や迎撃、誤認によって死傷者が出れば、報復が報復を呼ぶ可能性がある。

今回の過去最大規模のモスクワ攻撃は、ウクライナ戦争の長距離無人機戦が新たな段階に入ったことを示した。同時に、戦争が長引くほど「欧州とロシアが意図せず直接衝突する危険」も高まっている。

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