「米中は同盟国」は中国の政治的宣伝:トランプは乗せられ、高市はハシゴをはずされた

米中首脳会談後、ホワイトハウスは「両首脳は米国と中国が第2次世界大戦の同盟国であり、肩を並べて戦って勝利したことを振り返った」と発表した。中国外交部が発表した訪米成果にも、同じ文言が載っている。

朝日新聞

「中国」は連合国の一員だった

これについて「第2次大戦で戦ったのは中華民国なので歴史的に間違いだ」という批判が多いが、ホワイトハウスのファクトシートでは

The two leaders recalled that United States and China were allies in World War II and fought side by side to win the war.

となっている(www.whitehouse.gov)。第2次大戦中の中国大陸では日本軍に対してChina(国民党と中共)が戦い、太平洋で日本と戦っていた米国の側にいたことは事実である。1943年のカイロ宣言も米・英・中を「3つの主要な同盟国」と呼んでいる。

当時、中国を代表していたのは中華民国だったが、「一つの中国」という立場では中華民国を継承したのが中華人民共和国なので、それなりに一貫している。

「抗日戦争」は中国の政治的ナラティブ

中国政府の「米中は同盟国」という表現は新しくない。王毅外相は2015年に米国務長官との会談でそう述べ、習近平国家主席も2025年のトランプ大統領との電話会談で「米中は肩を並べて戦った同盟国だった」と語った。www.mfa.gov.cn

日中戦争からずっと中共が日本軍と「抗日戦争」を戦って勝利したというのは、中共が昔から使っている政治的ナラティブで、そこでは国民党の存在は無視され、戦勝の記憶を中華人民共和国の権威につなげている。

韓国が「日帝36年」の歴史を語り、それに対する「独立戦争」の勝利として第2次大戦を語るのと似ている(実際には日本と戦った韓国政権はなかった)。

トランプは何を得たのか

他方トランプ大統領は、11月の中間選挙を前に、首脳会談の経済的成果を強調している。ファクトシートは関税上の取り決めや中国による米国産石炭の購入などを列挙し、トランプ氏も会談後、米国の農家が喜ぶだろうと述べた。

トランプは歴史を知らないので、中国の宣伝に乗せられたのだろう。中間選挙を前にして共和党の支持率が大きく低下しているので、米中和解を演出して人気取りをしただけだろう。

それでも中国が長年使ってきたナラティブが、今回はホワイトハウスの公式文書にも載ったという事実は大きい。これが米中の全面的な和解に至るかどうかはまだわからないが、中国を仮想敵国として構築してきた日米同盟にも変化があるかもしれない。

ハシゴをはずされた高市首相

同じ時期に米国に行って、国連で「敵国条項の削除」を求めて中国に一蹴された高市首相は、この「同盟国」という表現にあわてて帰国直後にトランプと電話会談し、「中国をめぐる諸課題を中心に意見交換し、日米の連携を確認した」とコメントした。

トランプ政権の対中外交方針は、現実にはそれほど大きな変化はない。ファクトシートでは問題の「同盟国」の一文に続けて「戦後は米国の前方展開軍事力が自由で開かれたインド太平洋地域を維持してきた」と書いており、国務省は中国の脅威を否定したわけではない。

ただ対中強硬姿勢でネトウヨの支持を得てきた高市首相はハシゴをはずされた格好で、日米会談直後の電話会談もかなり恥ずかしい。何のためにワシントンに行って会談したのだろうか。

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