ポケモンカードの30周年記念セットで転売屋が大損:「転売ヤー対策」の正解は増産だった

ポケモンカードの30周年記念セット「30th Celebration」が、転売市場に思わぬ打撃を与えています。

ゲームライターの多根清史氏の『ポケカ30周年、買い占めた転売屋が悲鳴。高レアカードが予想以上に出やすく相場急落』によると、発売直後は世界各地で買い占めや高額転売が相次ぎましたが、高レアリティカードの封入率が予想以上に高いことが分かり、二次流通価格が急落しました。発売前に高値で取引されていたカードの中には、相場が大幅に下がったものもあり、在庫を抱えた転売業者から悲鳴が上がっているといいます。

【参照リンク】ポケカ30周年、買い占めた転売屋が悲鳴。高レアカードが予想以上に出やすく相場急落 多根清史

この騒動は、「転売ヤー問題」を考えるうえで非常に分かりやすい事例です。

30周年記念セット ポケモンカード公式HPより

転売屋は独占企業ではない

転売をめぐっては、「転売屋が商品を買い占めて価格をつり上げている」という説明がよくされます。

しかし、経済学的には少しおかしな話です。ポケモンカードの転売には特別な免許も巨大な設備投資も必要ありません。利益が出ると分かれば、多くの人がすぐ参入できます。

つまり転売市場は、むしろ完全競争市場に近いのです。

個々の店舗で商品が一時的に売り切れることはあっても、無数の転売業者が市場全体を独占し、価格を自由に支配することはできません。本当に供給量を決めているのはメーカー側です。

したがって問うべきなのは、「どうやって転売屋を禁止するか」ではありません。「なぜ需要に対して供給が少ないのか」です。

「転売禁止」より値上げと増産

5000円の商品が発売直後に2万円で売れるなら、そこには大きな価格差があります。その利益を狙って転売業者が参入するのは当然です。

自由な社会で、合法的に取得した商品について「転売するな」と言われても、従う義務が当然に生じるわけではありません。

むしろ不思議なのはメーカーや販売店です。

2万円でも売れる商品を、なぜ5000円で売り続けるのでしょうか。なぜ販売店は価格を上げないのでしょうか。そして何より、なぜ売れるなら増産しないのでしょうか。

今回のポケモンカードは、その答えを示しました。

高レアリティカードの供給が増えれば希少性は下がり、二次流通価格も下がります。転売業者が高値で在庫を抱えていれば、そのまま損失になります。

規制ではなく、供給増によって転売利益が消えたわけです。

転売価格も市場価格である

日本では、メーカーが示した「定価」や「希望小売価格」を守ることが道徳的で、それより高く売る転売は悪だという空気があります。

しかし価格は本来、需要と供給によって決まります。

しかもメーカーが小売店に販売価格を守らせる再販売価格維持行為は、独占禁止法上、原則として認められていません。メーカーが希望小売価格を示すことと、販売価格を拘束することは別です。

つまり「メーカーの決めた価格をみんなが守るのが正常」という発想そのものが、市場経済とはかなり相性が悪いのです。

転売屋を倒したのは市場だった

今回もっとも皮肉なのは、転売屋を苦しめたのが規制ではなく、供給増だったことです。

希少だと思って買い込んだ商品が希少ではなくなれば、価格は下がります。高値で売れると予想して在庫を抱え、値下がりしたのであれば、それは単なる投資判断の失敗です。

転売屋をなくす一番簡単な方法は、転売を禁止することではありません。

売れるなら増産する。必要ならメーカーや販売店も価格を調整する。そして市場価格を市場に決めさせることです。

今回のポケモンカード騒動は、「転売ヤー対策」の正解が規制ではなく、市場そのものにあることを示したのではないでしょうか。

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