補助金切れで過去最高の10月電気代は「突然の危機」ではない

2026年10月の家庭向け電気料金が過去最高水準に達する。大手電力10社すべてで値上がりとなり、政府の電気・ガス料金支援が終了することに加え、燃料価格の上昇が料金を押し上げる。中東情勢の緊迫化によるエネルギー調達への懸念も、家計には重い材料だ。

【参照リンク】10月電気代、補助金切れで全社が過去最高に 北海道などは1万円超 日本経済新聞

ただ、これを「突然襲ってきた電気代高騰」と捉えるのは正確ではない。この夏の電気料金は政府の補助金によって人為的に引き下げられていた。補助が終了すれば、その分だけ料金が戻るのは当然だ。今回の事態は「過去最高」であることに違いはないが、補助金で一時的に隠されていたコストが表面化した面が大きい。

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原発を動かした地域は電気代が安い

もう一つ見逃せないのが原発の再稼働だ。資源エネルギー庁の2024年度データでは、原子力発電の比率が33.3%の関西の電気料金は1キロワット時20.7円、29.0%の九州は19.8円。一方、原発が稼働していない北海道は27.0円、東京は23.9円、沖縄は25.5円となっている。

政府自身も、原発が稼働していない北海道の電気料金は、再稼働が進んだ関西や九州より3~4割程度高いと説明している。

もちろん料金は原発だけで決まらない。それでも、原発を再稼働した地域と、再稼働が進まなかった地域の間に料金差があることは重要だ。

燃料高に弱い地域、強い地域

関西と九州は象徴的だ。原発によって火力発電への依存を抑えられるため、燃料価格が上昇しても料金への影響を相対的に抑えられる。

今回も標準家庭の10月分料金の上昇幅は、関西電力が260円、九州電力が262円だったのに対し、東京電力は432円、中部電力は510円となっている。

原発再稼働の有無は、電力の安定供給だけでなく、国際的な燃料価格の変動をどれだけ家計が直接受けるかという問題でもある。

なぜ再稼働が進まなかったのか

再稼働の地域差を生んだ最大の転機は2011年の福島第一原発事故だ。全国の原発が停止し、その後、新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査が必要になった。

防潮堤や重大事故対策などには巨額の投資と長い時間が必要で、地元自治体との調整も欠かせない。東日本では特に再稼働が遅れ、東京電力柏崎刈羽原発では核物質防護をめぐる問題も障害となった。また、中部電力は浜岡原発の地震動データ不正で当面の再稼働は困難だ。一方、西日本では関西電力や九州電力の原発が順次再稼働している。

「止めること」にもコストがある

もちろん、安全性を軽視して再稼働を急ぐべきだという話ではない。しかし、原発を止めるという政策判断にも経済的なコストが発生することは直視する必要がある。

原発を止めれば、その分をLNGや石炭などの火力発電で補う必要がある。海外から輸入する燃料は、国際価格や為替、中東情勢などに左右される。今回の電気料金上昇は、こうした構造的な弱点が表面化しただけだろう。電気の需要者にはその認識と覚悟はあるのだろうか。

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