2027年度の国土交通省予算概算要求が膨らんでいる。一般会計の要求総額は8兆7694億円で前年度比44.4%増。このうち公共事業関係費は7兆6761億円と45.0%増になった。政府は国土強靱化を掲げ、防災・減災や老朽インフラの更新を進めるという。
災害対策そのものに異論はない。問題は、「予算を増やせば、その分だけ工事ができる」という霞が関の発想である。

井林国土交通大臣 Xより
カネを増やしても職人は増えない
国土交通省の建設労働需給調査によると、2026年8月の全国8職種の不足率は1.3%で、7月の1.2%からさらに悪化した。前年同月の0.9%からみても不足幅は広がっている。
しかも建設業の問題は一時的な人手不足ではない。現場を支えてきた技能者の高齢化が進み、若い世代が十分に入ってこないという構造問題である。
ここで公共事業費を一気に45%増やしたら何が起きるのか。
政府が発注する工事量だけ増えて、施工する人間が増えなければ、当然ながら労務費や工事費は上がる。入札不調が増え、工期は延び、予定していた工事そのものができなくなる可能性もある。
つまり予算額だけは45%増えても、橋や道路が45%多く完成するわけではない。
供給制約を無視して需要だけ増やせば、増えるのは工事ではなく価格である。
「昔、公共事業を削ったからだ」で済むのか
SNSでは「民主党政権時代などに公共事業費を削ったから職人がいなくなった」という批判も目立つ。
たしかに、公共事業の急激な削減や発注量の変動が建設会社の経営や人材育成を難しくした面はあるだろう。仕事がある年とない年が繰り返されれば、企業も若手を長期育成できない。しかし、それだけを原因にするのも正しくはない。
今の若者が建設現場で働きたいと思っているのか、というもっと根本的な問題があるからだ。
UZUZグループが就職活動中の20代457人を対象に行った調査では、「ブルーカラー職種は条件や職種を問わず就職先としてまったく考えられない」と答えた人が64.3%に達した。
【参照リンク】【調査リリース】Z世代における「ブルーカラー・施工管理職」に関する意識調査/6割以上が「就職先としてまったく考えられない」と回答/20代で年収500万円でも「施工管理職を希望する」は0% UZUZ

さらに施工管理職について「20代で年収500万円を目指せる」と提示しても、「希望する」と答えた人は0%だった。75.7%は「希望しない」と答えている。
必要なのは公共事業費より「人への価格転嫁」
こうなると「国土強靱化だから予算を増やします」だけでは問題は解決しない。重要なのは、元請け企業に流れる予算額ではなく、最後に現場で鉄筋を組み、型枠をつくり、重機を動かしている職人の手取りである。
公共工事費を何兆円積み増しても、多重下請け構造の中で技能者の賃金に十分回らなければ、若者は来ない。週休2日、長時間労働の是正、キャリア形成、社会保険、夏場の安全対策なども含め、「現場で働く方が得だ」と思える条件をつくらなければならない。
政府がやるべきなのは、需要を膨らませることだけではない。限られた建設人材を本当に必要なインフラに集中させ、不要不急の公共事業を削り、技能者の生産性と待遇を上げることである。
「予算をつけました」で橋は直らない。人口減少時代の国土強靱化で最も不足しているのは、カネではなく人なのだ。







コメント