黒坂岳央です。
資産運用に熱心な人は、投資について非常に熱心にリスク管理をする。
「S&P500だけで本当にいいのか」「株式だけでなく債券やゴールドも持つべきだ」など、資産配分について何時間でも議論したり考えるのが好きな人は珍しくない。大切な資産を失わないために、真剣な姿勢自体は悪いことではないだろう。
だが筆者は、こうした人ほど意外な落とし穴にはまることがあると思っている。それは人生そのものを一つのポートフォリオとして考える場合、多くの人が「資産運用」という一つのアセットクラスに集中投資してしまっていることだ。
金融資産の中では必死に分散するのに、人生全体では集中投資をする。資産運用ばかり夢中になって投資をすると、後になって後悔することは多いのではないか。持論を述べたい。

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人生が「投資100%」になっていないか
人生全体で見るとその人が持つ「資産」は金融資産だけではない。働いてお金を生み出す人的資本、健康な身体、家族や友人との人間関係、人生経験、そして残された時間だ。
ところが資産形成に夢中になる人の中には、これらを削って金融資産を第一優先にしてしまいがちだ。金融資産の中では「集中投資は危険だ」と言いながら、人生のポートフォリオを見れば金融資産100%に近づいている矛盾がある。
筆者にはこちらの方がよほど危険に思える。なぜなら金融資産と違い、人生の他の資産には「期限」があるからだ。
お金はもっと後回しでいい
筆者は人生にある様々な資産の中で、「金融資産」はかなり後回しにできる資産だと考える。資産運用に年齢制限や資格、時間制限はないからだ。
だが、実際には見えないだけで、人生でできるあらゆるものに「有効期限」がある。
たとえば子供との時間だ。これは多くの人が想像する以上に短い。現在進行系で育児をしている筆者自身、大変驚いたことの1つだ。子育てをする前、「子供と過ごせる時間は18歳まで」と思い込んでいる。だが、実際には12歳、長くて15歳までだ。なぜなら子供が親より友達を優先するからである。
それなのに「今年は旅行代が高いからやめて、来年行こう」こうすると「また次に」「そのうち」は永遠に来なくなる。「嫌いかない、友達と行きたい」と言い出すからだ。
これは友人も同じである。学生時代にどれだけ仲が良かった友人でも、就職、結婚、育児、転勤、介護などで関係はあっさり消える。遠方へ引っ越し、気がつけば何年も会わなくなる。別に喧嘩していないのに、あっさりと二度と会わなくなる。
だから「旅行20万円をやめて20万円投資した」という行為は、「一生戻せない思い出」を20万円と交換したようなものだ。
若い頃はお金をかけないでいい
若い頃はお金はそれほど必要がない。自分自身、シングルマザー育ちで4人兄弟の貧乏暮らしだった。仮に昔の自分に巨額のマネーがあっても人生は大して変わっていないだろうし、逆にだめになった可能性すらあると思っている。
若者にとって最大のアセットは間違いなく人的資本力だ。新卒で仕事のスキルゼロでも、いきなり手厚い研修を与え、安定収入を出し、丁寧に育てることがその事実を物語っている。
同じことを中高年の相手にする企業はこの世にない。若い内にビジネススキルを磨けば高収入を狙えるし、その軍資金を資産運用に回せばいい。だがこれは本当に若い頃限定のボーナスタイムである。
そしてもっと若い頃から資金力は決定的でない。学生の頃は基礎学力を身につけるには、高額な教育より意欲の方が圧倒的に重要だ。学習意欲がなければ、どれほど有能な教師をつけられても何も学べない。そして現代はAIや動画など無料の学習ソースが手に入る。
若い頃には、お金よりも時間、体力、好奇心、意欲の方が大きな資本になる場面が多い。若い頃に老後のことを心配して、投資に時間とマインドシェアまで持っていかれ、人的資本への投資を削ってしまうのは本当にもったいないと思える。
人的資本力を磨いて余剰資金を運用に回せるようになれば、そんな心配が現実になることはない。心配する先を間違えていると言える。
お金をかけない遊び
これは娯楽についても同じことが言える。20代でいきなり5つ星ホテルに泊まり、ファーストクラスに乗る必要があるだろうか。若さには「感受性」という中年以降にはない最大の武器がある。むしろ若い頃はお金をかけない娯楽をするべきだ。
筆者自身、若い頃には夜行バスで旅行したし、車中泊もした。ネットカフェに泊まったこともある。当時はそれがものすごく楽しかったし、やってよかったと断言できる。若い頃お金をかけない娯楽をしたからこそ、40代でちょっとした贅沢が楽しいのだ。
◇
誤解してほしくないが、筆者は投資を否定したいわけではない。むしろ資産運用は人生の自由度を高めてくれる非常に優れた手段だと思っている。
だからこそ、手段と目的を逆転させてはいけない。金融資産に熱心になるのはその前座のタスクを終えてからでいいだろう。人的資本を磨き、家族や友人との関係に時間という投資をする。そして、その年齢でしかできない経験にも投資するのだ。
逆に人的資本力がなく、人生経験も人間関係もない。それなのにやたらとお金だけあるとするなら、そのお金は一体、何に使うと言うのだろうか?
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