法務省が、民法の「不法行為」に関する規定の見直しに向けた検討を始めると報じられました。
SNS誹謗中傷の被害者を救済、慰謝料を引き上げ 法務省検討https://t.co/ZiC83SpVY1
SNSを巡る紛争では慰謝料が30万円以下になることも多く、訴訟負担に見合わないと指摘も。慰謝料算定の際に考慮すべき要素を法律で明確にし、被害に見合う水準にします。
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) September 29, 2026
山下貴司法務大臣が9月29日の閣議後会見で明らかにし、翌30日から有識者による研究会がスタートしています。
SNSでの誹謗中傷が深刻化するなか、慰謝料を被害に見合う水準に引き上げ、被害者を救済できる規定のあり方を議論するとのことです。
冒頭の投稿のとおり、私はこの動きに大賛成です。

法務省
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まず、いまの相場感から見てみます。
ネット上で名誉を毀損された個人が裁判で勝っても、認められる慰謝料は数十万円から100万円程度にとどまるケースが多いと言われています。
一方で、匿名の投稿者を特定する発信者情報開示請求、そして損害賠償請求訴訟。これを弁護士に依頼すれば、それぞれに数十万円単位の費用がかかります。
勝訴しても赤字。それが珍しくありません。
なぜこんなに安いのか。
現行の民法には、慰謝料をどう算定するかの規定がありません。金額は裁判所の裁量に委ねられ、その根拠もはっきりとは示されてきませんでした。
しかも不法行為の規定は、1896年(明治29年)の民法制定時からほとんど変わっていないそうです。
SNSどころか電話すら普及していなかった時代のルールで、令和の誹謗中傷を裁いているわけです。
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結果として何が起きたか。「やったもん勝ち」です。
真偽の怪しい記事で部数を稼ぎ、訴えられて負けても、支払う賠償額は売上に比べれば微々たるもの。週刊誌報道について、こうした構造は長く指摘されてきました。
SNSも同じです。インプレッション稼ぎのために他人を攻撃し、もし訴えられたら払えばいい。そんな計算が成り立ってしまいます。
賠償に抑止力がない。これが日本の現状です。
もちろん、慎重論もあります。
賠償額が跳ね上がれば、報道機関や個人が萎縮し、権力への批判まで封じられるのではないか。資金力のある政治家や企業が、高額請求をちらつかせて批判を黙らせる「スラップ訴訟」に悪用されるのではないか。
これはもっともな懸念です。私自身、政治家として批判を受ける側でもあり、この点は軽視すべきでないと考えています。
が、ここは切り分けて考える必要があります。
名誉毀損には現在でも、公共性と公益目的があり、内容が真実である(あるいは真実と信じる相当の理由がある)場合には責任を問われないという法理があります。
正当な批判や真っ当な報道は、もともと守られているのです。
見直しの対象は、その一線を越えた違法な誹謗中傷です。そこへの賠償が軽すぎる、という話です。
表現の自由は大切。だからこそ、責任とセットであることを制度で示すべきです。
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実はこの論点、維新は以前から議員立法で提案してきました。
2022年5月、岩谷良平衆議院議員らが提出した「インターネット誹謗中傷対策の推進に関する法律案」。
その附則では、諸外国の損害賠償の状況も踏まえ、「侵害された権利の価値自体を賠償する責めに任ずべき損害とする制度」などの導入を政府が検討するよう定めています。
同じ法案の基本理念には、公職にある者などへの評論をはじめとする自由な表現活動が、健全な民主主義の根幹であることへの配慮も明記しました。
被害者救済と表現の自由。その両方を見据えた設計です。
さらに2023年12月には、被害者の弁護士費用を補助する法案などを含む、関連3法案も提出しています。
政府がようやく同じ方向に動き出したことを、率直に歓迎したいと思います。
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では、どこまで踏み込むべきか。
私は、米国などで認められている懲罰的損害賠償まで視野に入れて議論したら良いと考えています。
日本の損害賠償は「受けた損害を埋め合わせる」ことが原則で、制裁や抑止の要素は含まないとされてきました。最高裁は1997年、懲罰的損害賠償を命じた米国の判決について、日本の公序に反するとして執行を認めていません。
ハードルは高い。それでも、「払っても割に合う」構造を変えるには、抑止という発想を正面から議論する必要があります。
仮に懲罰的賠償の導入がすぐには難しくても、算定基準を明確にし、悪質性や拡散の規模、加害者が得た利益を慰謝料にしっかり反映させるだけで、景色はかなり変わるはずです。
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研究会は月1回ほど開かれ、国内外の制度や裁判例を踏まえて論点を整理していくとのこと。未成年者の性被害を念頭に、損害賠償請求権の消滅時効の起算点も検討対象になるそうです。
明治以来の大改正になり得る議論であり、しっかりと注視していきたいと思います。
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2026年9月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。







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