「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さんの巨額遺産をめぐる裁判が、ようやく一つの決着を迎えた。最高裁第3小法廷は9月30日、野崎さんの親族の上告を退け、13億円超の遺産をすべて田辺市に寄贈するという遺言を有効とした。
「全財産を田辺市にキフする」
問題の遺言書は2013年2月8日付。白い紙に赤ペンで「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする」などと手書きされ、署名と押印もあった。野崎さんの親族は、筆跡が不自然で偽造された可能性があるとして無効を主張した。
しかし2024年6月の和歌山地裁は、野崎さん固有の筆跡や癖が認められるとして遺言を有効と判断。2025年9月の大阪高裁もこの判断を支持した。
最高裁も親族側の主張を退けたことで「田辺市に全財産を遺贈する」という野崎さんの遺志については司法上の決着がつき、兄弟姉妹には相続する余地がなくなった。
ただし元妻には「遺留分」がある
では野崎さんの元妻の須藤早貴被告(殺人罪で係争中)はどうなるのか。ここが少し複雑だ。

野崎幸助さん(右)と元妻の須藤早貴被告(産経新聞)
野崎さんが「全財産を田辺市に」と書いても、配偶者には法律上、最低限の取り分である遺留分が認められる。元妻が相続人としての資格を維持すれば、遺産の2分の1、6.5億円程度を請求できる。
そのカギを握るのが、もう一つの「紀州のドン・ファン裁判」である。
殺人事件は1、2審とも無罪
須藤さんは、野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させて殺害したとして殺人罪などに問われたが、2024年12月、和歌山地裁は「合理的疑いが残る」として無罪を言い渡した。
さらに2026年3月、大阪高裁も1審の判断を支持し、検察側の控訴を棄却した。検察側は最高裁に上告しており、刑事裁判はまだ確定していない。
もし須藤被告が殺人罪で有罪となると相続権を失い、全財産が田辺市に渡る。無罪が確定すれば、須藤被告には遺留分を主張する余地が残る。
親族による遺言無効の争いには終止符が打たれたが、13億円超の全額が実際に田辺市のものになるかどうかは、元妻をめぐる刑事裁判が決着しないとわからない。







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