米国がイランの石油輸出を封じ込める :WSJが指摘する戦況の変化

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は10月2日付の社説で、イランと米国をめぐるホルムズ海峡での攻防について、「形勢が逆転しつつある」との見方を示した。

同紙によれば、ホルムズ海峡を通過する世界の原油輸送量が回復する一方、イラン産原油の輸出は米軍によって阻止されており、当初イラン側が狙っていた海峡の封鎖が、むしろイラン自身の石油輸出を制約する結果になっているという。

トランプ大統領 ホワイトハウスHPより

ホルムズ海峡を通過する原油輸送は回復

WSJが注目するのは、タンカーの航行データだ。

同紙が引用するケプラーのデータによると、ホルムズ海峡を通過する原油量は7日間平均で日量1419万バレルまで回復している。イランとの戦争開始前の基準値は日量1713万バレルであり、輸送量は平時の水準に近づきつつある。

不足している分の大部分は、米軍による海上封鎖によって輸出が止まっているイラン産原油だという。

一方、サウジアラビアではペルシャ湾を経由しないパイプラインによる輸送が再開され、紅海側のヤンブー港からの原油積み出しも加速している。これにより、湾岸諸国からの石油輸出はさらに増える可能性があるとWSJは指摘する。

「海峡を封鎖する」ことがイラン自身への圧力に

WSJが描く現在の構図は明快だ。

ホルムズ海峡を通じた世界の石油供給が回復する一方で、イランの石油輸出は阻止されている。その結果、西側諸国や湾岸諸国へのエネルギー供給面での圧力が弱まる一方、イランは戦争を継続するための資金を確保する必要に迫られている。

同紙によれば、イランが封鎖前、あるいは一時的な封鎖解除時に海上へ送り出していた原油も急速に底を突きつつあるという。

また、米財務長官スコット・ベッセント氏は、イランが最後に輸出した原油を中国に引き渡す時期について、10月半ばになるとの見通しを示している。

つまり、ホルムズ海峡をめぐる戦いは、単純な「海峡が開いているか、閉じているか」という問題ではない。

世界の石油市場への供給を維持しながら、イランだけの石油輸出を止められるか。WSJは、現在の米国の作戦によって、この構図が成立し始めているとみている。

UAEやトルコにも広がる対イラン圧力

経済面での圧力は石油だけにとどまらない。

WSJによれば、ベッセント財務長官はイランの貿易相手国に対して強い圧力をかけており、特にUAEとトルコがその影響を受けている。

UAEはイランとの取引を停止する対応を取り、トルコではイランの銀行が閉鎖された。また、中東諸国はイランとの航空便を停止し、イランとの経済的・人的な接続を狭めつつあるという。

こうした状況を背景に、イラン通貨リアルは9月29日に1ドル=250万リアルを超え、過去最安値を更新した。WSJは、米国による封鎖の再開後、リアルが年率換算で約140%下落したと指摘している。

ただし、イランの反撃能力は残る

もっとも、WSJは「米国が勝利した」と単純に結論づけているわけではない。

同紙は、イランによる船舶攻撃が続いていることを指摘する。英国海事貿易機関(UKMTO)には9月30日、イランによる船舶への攻撃が3件成功したとの報告が寄せられたという。

また、イランには依然としてペルシャ湾岸地域の重要なエネルギーインフラを攻撃し、機能停止に追い込む能力が残されている可能性がある。世界的なディーゼル燃料不足も続いており、燃料価格は高騰している。

そのため、ホルムズ海峡をめぐる戦況が変化しているとしても、イラン側の反撃能力が消滅したわけではない。

「戦術的優位」を戦略的目標につなげられるか

WSJが最終的に問題視しているのは、米国がホルムズ海峡で得つつある軍事的・経済的優位を、どのような戦略的成果につなげるのかという点だ。

同紙は、イランがこれまで主要な目標として掲げてきたホルムズ海峡の支配が覆されつつあると指摘する。

そのうえで米国にとっての課題は、現在の圧力を維持し、軍事的な優位性を利用して、イランの核開発計画や体制そのものを終わらせるという戦略的目標を達成できるかどうかだと論じている。

WSJの社説は、こうした状況について、少なくとも現時点では「ホルムズ海峡をめぐる攻防はイランに不利な方向へ変化している」と分析している。

ただし、同紙自身もイランによる船舶攻撃やエネルギーインフラへの攻撃能力が残っていることを認めており、今後の展開にはなお不確実性が残されている。

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