2028年もカマラ・ハリス?:敗れた前副大統領が世論調査で意外な強さを見せる理由

2028年の米大統領選は、まだ2年近く先である。

それにもかかわらず、民主党の候補者争いはすでに始まっている。ギャビン・ニューサム、ピート・ブティジェッジ、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)――さまざまな名前が取り沙汰されるなか、意外な存在感を維持している政治家がいる。

2024年大統領選でドナルド・トランプ氏に敗れたカマラ・ハリス前副大統領である。

一度は大統領選に敗れた候補が、なぜ4年後の民主党候補者調査で依然としてトップに立っているのか。

これは、ハリス個人の問題であると同時に、現在の民主党がどのような有権者によって動かされているのかを考える手がかりになる。

世論調査では、ハリスが意外なほど強い

現時点の数字は興味深い。

RealClearPoliticsの2026年9月時点の民主党大統領候補指名争いの平均では、ハリス氏が26.3%で首位。2位のニューサム氏が14.3%、ブティジェッジ氏が12.6%、AOC氏が10.9%、ジョン・オソフ氏が8.8%となっている。つまり、ハリス氏は2位以下に10ポイント以上の差をつけている。

カマラ・ハリス氏インスタグラムより

もちろん、これは2028年の本選でハリス氏が勝てることを意味しない。候補者の認知度には大きな差があり、現時点ではまだ予備選が始まってすらいない。また、ハリス氏自身が2028年に出馬するかどうかも決めていない。

Axiosが9月に元ハリス陣営の関係者8人に聞いたところ、5人は「出馬しない可能性が高い」、2人は五分五分、出馬すると見たのは1人だった。ハリス氏本人も決断していないとされる。

それでも、ここで注目すべきなのは「出馬するか」ではなく、もし出馬を表明した場合、なぜ彼女がこれほど早い段階で有力候補として扱われるのかである。

2024年の敗北は、民主党予備選では必ずしも致命傷にならない

ハリス氏には明確な弱点がある。

2024年大統領選で敗れたことだ。しかも、現職副大統領として民主党候補になったにもかかわらず、トランプ氏の返り咲きを阻止できなかった。

通常なら、これは次の大統領選を目指すうえで大きなマイナス材料になる。

ところが、民主党予備選の現在の世論調査を見ると、その敗北がハリス氏の支持を完全に崩したようには見えない。

なぜなのか。ここで参考になるのが、選挙分析家ネイト・シルバーの議論である。

ネイト・シルバーが指摘した「3つの民主党」

シルバーは2025年12月の論考「What is Heather Cox Richardsonism?」で、現在の民主党には大きく3つの勢力が形成されつつあると論じた。

一つ目は、ゾーラン・マムダニ氏らに象徴される「Capital-L Left」。

富裕層や大企業への批判を強め、経済的ポピュリズムを重視する左派である。

二つ目が「Abundance Libs」。

シルバー自身が比較的近い立場とする勢力で、技術官僚的で、政策実現を重視し、市場メカニズムや共和党との妥協にも比較的前向きなリベラルである。エズラ・クラインやデレク・トンプソンの『Abundance』に象徴される。

そして三つ目が、シルバーが「Richardsonism」あるいは「#Resistance Libs」と呼ぶ勢力だ。

歴史家ヘザー・コックス・リチャードソンのニュースレター「Letters from an American」を読む層を象徴とする、反トランプ色の強い民主党支持者である。

シルバーによれば、この層は高学歴で、女性が多く、政治への関心が非常に高い。

そして重要なのは、この層が単なる一つのメディアの読者ではなく、民主党内で独自の政治的重力を持つ集団になっているという点である。

ハリスは「3つの民主党」のどこにいるのか

ここからが興味深い。

ハリス氏は、必ずしもこの3勢力のどれか一つを完全に代表しているわけではない。むしろ、彼女の強みは、その曖昧さにあるのかもしれない。

ハリス氏は2020年の民主党予備選では、現在の進歩派からも支持を集めた。一方、バイデン政権の副大統領として政権運営を経験し、民主党主流派との強い関係も持っている。

そして2024年には、トランプ氏への対抗を前面に掲げた。つまり、ハリス氏には、「トランプに対抗する民主党」という非常に強いアイデンティティがある。

これは、シルバーがいう「Richardsonism」の有権者にとって極めて分かりやすい政治的メッセージになり得る。

2024年に敗北したことも、民主党支持者の一部にとっては「ハリスが間違っていた」という意味ではなく、「トランプを止められなかった」という物語として記憶されている可能性がある。

「敗者」なのに、なぜ忘れられないのか

大統領選で一度敗れた政治家が再び党内で支持を集めるには、敗北の意味をどう理解するかが重要になる。

ハリス氏の場合、民主党支持者のなかには2024年の結果を、候補者本人の問題だけではなく、インフレ、トランプ氏の政治的強さ、バイデン政権への評価、移民問題、メディア環境など複数の要因の結果として見る人々がいる。

ここでも、シルバーのRichardsonism論は参考になる。

シルバーは、リチャードソン氏の議論が民主党の敗北を「誤情報」や不公正なメディア環境などによって説明する傾向を批判している。つまり、民主党支持者の一部には、2024年の敗北を「有権者が民主党を拒絶した」というより、「民主党が不利な情報環境のなかで敗れた」と理解する傾向があるというわけだ。

この見方が正しいかどうかは別として、ハリス氏の現在の支持を考えるうえでは重要である。

なぜなら、候補者本人への評価が大きく崩れていなければ、敗北した候補でも再び予備選に戻ることができるからだ。

ハリスの最大の資産は「知名度」なのか

もちろん、もっと単純な説明もある。

ハリス氏は、2028年の民主党候補者として名前を挙げられる政治家のなかで、圧倒的に知名度が高い。副大統領を務め、大統領選候補にもなった。世論調査で「誰を支持しますか」と聞かれたとき、まだ全国的な選挙戦を始めていない政治家より、すでに一度大統領選を戦ったハリス氏の名前が出てくるのは不思議ではない。

したがって、現在の数字を「ハリス復活」と断定するのも早い。むしろ注目すべきなのは、これほど知名度の高い敗戦候補が、時間が経っても民主党支持層のなかで支持基盤を維持していることだろう。

それでも、ハリスには大きな問題が残る

ここで重要なのが、民主党予備選と本選を分けて考えることだ。

ハリス氏が民主党支持者のなかで強いことと、一般選挙で幅広い有権者を獲得できることは同じではない。

むしろ2028年にハリス氏が出馬するなら、最大の問題はここになる。

民主党の熱心な支持者から支持されることと、共和党支持者や無党派層を含む全国の有権者に訴えることには違いがある。

この点では、台頭しつつある中道派のシャピロ氏やベシア氏、オソフ氏のような政治家が異なるタイプの候補として浮上してくる。

シャピロ氏は激戦州ペンシルベニアで知事を務め、ベシア氏は共和党の強いケンタッキー州で民主党知事として政治基盤を築いた。オソフ氏はジョージアという激戦州で上院議員を務める。彼らは、ハリス氏とは異なる「一般選挙向けのプロフィール」を持つ。

だからこそ、2028年の民主党予備選は単なる人気投票ではなく、民主党支持層が何を求めているのかをめぐる路線選択になる可能性がある。

ハリスか、オソフか、シャピロか、それとも別の候補か

現時点で、2028年の民主党候補を予測することには意味がない。

候補者の多くは出馬を表明しておらず、世論も変化するからだ。ただし、現在の数字から読み取れることはある。それは、民主党の中で「2024年に敗れたハリスをもう一度」という選択肢が、少なくとも現段階では消えていないということだ。

むしろRCP平均では、ハリス氏はニューサム氏、ブティジェッジ氏、AOC氏、オソフ氏らを上回っている。

さらに興味深いのは、ハリス氏自身がまだ出馬を決断していないことだ。Axiosによれば、元側近8人のうち5人が出馬しないと見ている一方、本人に近い別の関係者は五分五分と見ている。つまり、現在の「ハリス首位」は、本人が正式に選挙戦を始めた結果ではない。

これは数字の解釈を難しくすると同時に、興味深くもしている。

「ハリスの強さ」は、ハリス本人だけのものなのか

2028年の民主党を考えるうえで、本当に面白い問いはここだ。

ハリス氏が強いのは、彼女自身に再び大統領になるだけの政治的魅力があるからなのか。それとも、民主党の一部に存在する「トランプに対抗する政治」を求める非常に熱心な有権者層が、ハリス氏を自然に押し上げているからなのか。

もし後者なら、ハリス氏の現在の強さは、個人の政治力だけを意味しない。

それは、シルバーが「Richardsonism」と呼んだような、高学歴で政治参加意識が高く、反トランプ色の強い民主党支持層が、2028年の候補者選びでも大きな影響力を持つ可能性を意味する。

一方で、その層だけでは一般選挙を戦えないという議論も当然成り立つ。

ここに、2028年民主党予備選の本質的な緊張関係がある。「誰が民主党支持者を最も熱狂させられるか」と、「誰が民主党支持者の外側まで支持を広げられるか」は、必ずしも一致しない。

2028年の民主党候補者選びでは、この二つの問いが衝突することになるだろう。そして、そのとき初めて分かる。

2024年に敗れたカマラ・ハリスは、単に過去の候補者なのか。それとも、現在の民主党の有権者構造を最もよく反映した政治家なのか。少なくとも現時点の世論調査は、後者の可能性をまだ消してはいない。

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