フランスで高校生による抗議デモが暴動に:国債が売られ教育予算もままならない福祉国家

フランスでは高校生による抗議活動がパリ周辺から全土へ拡大している。生徒たちが訴えているのは、教員不足、クラスの過密化、老朽化した校舎、教育環境の悪化などだ。10月1日には一部が暴徒化し、警察との衝突も発生。1900人以上が拘束されたと報じられている。

【参照リンク】フランスで高校生による抗議デモ拡大 1900人以上拘束 「教員不足や学校の老朽化」など訴え TBS NEWS DIG

もちろん暴力は正当化できない。しかし、「若者がまた暴れている」で済ませれば本質を見誤る。教員が足りない。授業が十分に行われない。校舎は傷み、教室には生徒が詰め込まれる。これは途上国ではなく、世界有数の高福祉国家フランスで起きている。

金がないのではなく「使い過ぎて金がない」

フランスの問題は、教育予算だけではない。政府は年金、医療、失業給付、各種補助金など巨大な支出を抱えている一方、経済成長は弱い。財政赤字はEUの基準を大きく上回り、政府債務も膨張している。

つまり、小さな政府でケチっているから学校にお金を使えないのではない。大きな政府を維持し過ぎて、必要なところに回すお金がないのだ。

歳出を削れば国民がデモを起こす。増税すれば景気が悪化する。そこで国債を発行して先送りする。フランス政治は長年、この繰り返しだった。しかし、この借金には市場で金利がつく。

「フランス国債なら安心」が崩れた

金融市場はその異変に気づいている。フランス10年国債とドイツ国債の金利差は、欧州債務危機以来の水準まで拡大した。フランス国債の利回りは一時、イタリアやギリシャを上回る場面もあった。

かつて欧州危機の「問題児」とされた南欧諸国より、フランス政府のほうが高い金利を要求される。国債金利は国家の信用につけられた値札でもある。「フランスなら大丈夫」という信用に、市場が割増料金を要求し始めたのだ。

しかも金利が上がれば利払い費が増え、教育やインフラに使える予算はさらに減る。公共サービスが悪化すれば国民は怒り、政府は追加支出を迫られる。財政赤字が金利を上げ、金利上昇が財政赤字をさらに広げる。

「フランス」というブランドだけでは国は維持できない

エッフェル塔もルイ・ヴィトンもボルドーワインもなくならない。パリにはこれからも観光客が押し寄せるだろう。しかし、国家財政の信用はブランドイメージだけでは維持できない。

「先進国だから大丈夫」「ユーロ圏だから大丈夫」「最後はECBが助ける」。そんな安心感を市場は少しずつ疑い始めている。高校生デモと国債市場の動揺は、別々のニュースではない。政府に対する要求は増え続ける一方、それを支える財政余力が失われているという同じ問題の表裏である。

世界が憧れてきた「フランス」という看板の裏側では、学校が傷み、若者が怒り、国債が売られている。ブランド品なら値上げすれば済む。国家はそうはいかないのだ。

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