日刊SPA!に掲載された「LUUP」に3年間乗り続ける記者の交通事故体験記が、大きな反響を呼んでいる。
【参照リンク】「LUUP」に3年間乗り続ける30代記者が車と衝突。「救急搬送される重傷でも、返却はセルフ」の衝撃 SPA!
記事のタイトルだけを見れば、電動キックボードで自動車と衝突し、救急搬送された利用者が、事故後の煩雑な手続きやLUUPの対応を振り返った体験談に思える。ところが読み進めると、読者が驚くポイントは別のところにある。筆者自身が事故直前の状況をかなり正直に書いているからだ。
筆者は駅のトイレで耳栓代わりにイヤホンを装着し、そのまま外すことを忘れてLUUPに乗った。そして道路の左側を走行中、「そのまま小回りで右折しようとした」瞬間、後ろから来た車と衝突したという。クラクションが鳴って初めて「あっ、後ろに車がいたのか」と気づいたとも書いている。
ここまで本人が説明してくれていると、事故原因についてかなり重要なことが見えてくる。

特定小型原付は「小回り右折」してはいけない
そもそもLUUPの電動キックボードは特定小型原動機付自転車である。
警視庁は、交差点で右折する場合、信号がある交差点ではいったん向こう側まで直進して方向を変える「二段階右折」を義務づけている。信号のない交差点でも、道路左端から交差点の向こう側まで進んでから右折するのが基本だ。
LUUP自身の利用ガイドにも、右折時は二段階右折を行い、ウインカーを点灯するよう明記されている。つまり記事にある「左側を走りながら、そのまま小回りで右折」という記述が文字通りなら、LUUPの正しい右折方法とは違う。
しかも後方の車にクラクションを鳴らされて初めて存在に気づいたという。「運転手の方が怖かったのではないか」という批判が出たのも当然だろう。
イヤホンより衝撃的なのは「3年間乗っていた」こと
筆者は事故後、イヤホンをしていたことに気づき、「こっちにも非がある」と感じたという。音楽は流していなかったとしているので、イヤホンを装着していたことだけをもって直ちに違反だったと断定することはできない。
東京都では、安全運転に必要な音や声が聞こえない状態でのイヤホン使用は禁止されている。しかし本当に衝撃的なのはイヤホンではない。
筆者は「3年間、ほぼ毎日のようにLUUPに乗ってきた」と書いている。そのベテラン利用者が、小回りで右折しようとし、後方の自動車を認識していなかったのである。これは単なるLUUP初心者の失敗とは言いにくい。
むしろLUUPの最大の問題を象徴している。免許を持たなくても簡単な手続きで乗れ、操作も簡単なので、「乗れること」と「交通ルールを理解して安全に運転できること」が混同されやすいのだ。
なぜ読者は「モンスタークレーマー目線」と感じたのか
さらに記事では、事故後にLUUPを自分で返却するよう警察官から言われたことや、治療費、救急搬送、保険などへの不満が詳細に描かれている。もちろん、事故で激痛に苦しんでいる人に壊れた車両を自力で返却させる仕組みには改善の余地があるだろう。
しかし、多くの読者が違和感を覚えるのは、事故を引き起こした自分自身の運転についての検証よりも、「救急車」「治療費」「LUUPの返却」「保険」といった自分が被った不利益の描写が前面に出てくる点だ。
それがSNSで「モンスタークレーマーの視点から交通事故を読める貴重な記事」とまで皮肉られた理由だろう。
LUUPの怖さは車体ではなく「簡単に乗れること」
これは筆者個人を吊し上げて終わる話ではない。
むしろ恐ろしいのは、ごく普通の人が「便利だから」「いつも乗っているから」という感覚で、免許もなく最高時速20kmの動力付き車両に乗れる現在の制度である。
自動車なら免許取得の過程で、後方確認、巻き込み確認、右左折方法、安全確認を繰り返し叩き込まれる。しかしLUUPでは、スマホ一つで乗り始められる。
この記事を読んで得られる最大の教訓は、「LUUPに乗るときは注意しよう」ではないかもしれない。むしろドライバーにとっては、「LUUPを見かけたら十分に距離を取ろう」という話になってしまうのではないだろうか。
記者は以下のようにこの文章を結んでいる。
LUUPに乗って車とぶつかり、救急車で運ばれ、10万円を立て替え、警察署にも病院にもLUUPで通い、最後にはLUUPから降りようとしてもう一度転びました。これだけ散々な目に遭ったのだから、せめてミニフィギュアくらい、当選させてください。








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