本選びの「正解」なんて、誰も教えてくれない

本選びで失敗しない方法? ない。いきなり身も蓋もないが、本当にない。あるのは、失敗しても次につながる選び方だけだ。

告白すると、私は大学を出るまで本が苦手だった。ゼミの課題図書ですら、あとがきだけ読んで発表に臨んだことがある(教授にはバレていたと思う)。

『AI時代の 読む技術大全』(渡邊康弘著)朝日新聞出版

変わったのは社会人になってからだ。GMOインターネット時代、役員や子会社の社長、人事本部長から本を薦められた。『めざせ!CEO』『FISH!』『アメリカ海兵隊』『満鉄』。脈絡がない。ないのだが、薦めた本人の顔と一緒に、いまでも書名を覚えている。人から教わった本は教えた人ごと、記憶に残る。これが紹介の強みだ。

味をしめた私は、ITベンチャーの社長に会うたび同じ質問をした。「どんな本がいまの自分を作ったんですか」「20歳に戻るなら何を読み直しますか」。たいてい相手は一瞬黙る。それから、少し照れながら答える。あの一瞬の沈黙が好きだった。そうして出合った『ビジョナリー・カンパニー』や『ネクスト・ソサエティ』は、いまも何かあるたびに開いている。

ガイド本? 使えばいい。私は20歳前後、T・バトラー=ボードンの「世界の名著50選」シリーズを付箋だらけにして持ち歩いていた。多い巻で47枚。本屋大賞やビジネス書グランプリも、まあ参考にはなる。ここはさらっと流す。

本題はここからだ。

10冊、20冊と読むうちに、「あ、これは好きだ」という1冊に必ず当たる。当たったら、そこからが本当の本選びである。著者で広げる。参考文献リストで広げる。編集者で、出版社で広げる。

神田昌典氏の『成功者の告白』が刺さったとする。まず『非常識な成功法則』『口コミ伝染病』『なぜ春はこない?』と、同じ著者を追う。追いきったら参考文献リストを開く。そこに『神話の法則』がある。読む。面白い。じゃあキャンベルの『千の顔をもつ英雄』へ。脚本術も気になってきた。シド・フィールドだ、ブレイク・スナイダーだ。気づけばビジネス書の棚から、映画の棚まで歩いてきている。

そういえば、編集者の名前を探し始めたら末期である。名前を載せない出版社も多いから、「おわりに」の謝辞を読み、ネットのインタビューを漁る。我ながら気持ち悪いと思う(自覚はある)。でも、やめられない。

話を戻すと、最初の問いだ。失敗しない本の選び方。やっぱりない。ただ、好きな1冊からつながりをたどっていけば、外れた本すら次の1冊への道しるべになる。これは言い過ぎか。いや、言い過ぎではない、と思う。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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