簗農相が「選挙で自分を応援しなかった市町の道路予算を削った」と語った問題で、高市首相は「任命責任は自分にある。本人に説明責任がある」と答弁しました。これほど無意味なやり取りはありません。
歴代の首相も「任命責任は自分にある」と言えば、責任を果たしたと思い、メディアもそう言わせれば、一件落着のようです。さらに「任命責任」とは何なのかをメディアは解説しない。簗農相に説明責任を求めたところで、真実を言うことはまずない。任命責任、説明責任は無意味な政治用語です。
農相発言問題の本質は、政界で広く行われている「選挙と不透明な予算配分」の氷山の一角であることです。そのことを簗農相が自分の言葉でしゃべってしまった。だから深刻なのだし、農相はこんな根深い問題を愚かにも気軽に告白してしまったのです。
さらに本質的な問題は、メディアも野党も「任命責任がある」「説明責任を果たせ」と騒ぐだけで、氷山の全体像を自ら調査・解明することを怠っていることです。

簗農水相と高市首相
自民党HPより
1700自治体の選挙動向を検証せよ
1700自治体の長年の選挙結果について公表されている膨大なデータを解析すれば、氷山の全体像をあぶり出せる。人手による作業では無理です。データの収集・解析を得意とするAIを使って、取材対象を絞り込み、編集記者が足で取材する。すでに着手しているメディアはあるかもしれません。
記者とAIを組み合わせた「ハイブリッド取材」です。真実を語るはずはない政治家を批判するより、メディア自らが事実をあぶり出すことです。
新聞の社説を見ましょう。朝日は「任命責任に向き合わぬ首相。発言は不適切だと厳重に注意した。まず本人が適切に説明することだ」と主張しました。読売は「利益誘導の体質が垣間見えた。農相の言動はもってのほかだ。入閣させた首相の任命責任が問われる」です。
メディア自らがAIを使い、調査できるはず
もっともな指摘ではあります。問題はそんな指摘をしたところで、政治はよくなりません。真実を語る可能性はない政治家に代わって、メディアは自ら調査報道をすべきです。能力を急速に上げているAIを活用することです。
野党は農相の解任、辞任に追い込むことを政治的成果と考えています。それよりも、野党は選挙区情勢に密着しているはずですから、取材対象を絞って検証できるはずです。AIに詳しい野党も存在しています。
新聞社の時代感覚で気になっていることがあります。最大手の読売新聞の社長が「取材面でAIに頼るな」と社内に指示を出しています。記者が自らの足と手で取材に励むことが重要で、著作権侵害も起こるAIの活用は問題だという趣旨のようです。
今日の課題は、そうした面に配慮しながらも、取材・編集面でAIの能力をどう引き出して使うかにあります。衛星画像データをもとに、軍事、戦争の破壊活動、物流などはメディア自ら解析できるようになっています。社長はAIをどう活用するかを指示すべきなのです。
AIにハイブリッド調査の手法を聞いてみた
「選挙結果と政治権力の関係の解析手法」を質問してみました。質問を上手にしていけば、公開情報(オープンデータ)を使って、疑わしい取材対象を絞り込めます。質問例はAIが作成したものです。
- 与党候補の得票率が急落し、野党候補の首長や議員が誕生した地域をリストアップしてください。
- その地域の予算増減と選挙の勝敗に統計的な相関関係が見られるか解析してください。
- 支局、通信網の縮小、記者の人員削減で取材が困難になり、報道されない市町村の選挙データを詳しく解析してください。
こんな具合です。さらに「AIの解析をもとに取材対象を絞り込み、記者、取材者が実際に足を使って調査することが必要です」とのことです。
もう当然すぎる回答です。すでにこの「ハイブリッド調査」をしているメディアがあり、その結果が公表されることを期待しています。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年10月9日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







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