「食後」のために熱を我慢するな

(前回:カプセルを開けるな:「薬のかたち」には理由がある)

熱があって、つらい。でも箱には「食後」と書いてある。だから食事まで待つ。

待たなくていい。

市販薬の「食後」には、実はそれほど厳密な理由がない(胃腸薬は別で、これは後で書く)。処方薬には飲むタイミングが厳しく決められたものもあるが、市販薬にそこまでの薬はない。それなのに、真面目な人ほど律儀に我慢している。

ただ、何も考えずに飲め、という話でもない。胃に負担がかかる薬も、眠気を起こす薬もある。空っぽの胃に放り込むよりは、何か口に入れてからのほうがいい。私が推すのは牛乳などの乳製品だ。胃に膜を作って守ってくれる。お菓子でもジュースでもかまわない。とにかく何か。痛み止めや酔い止めに至っては、食事を待っている場合ではない。痛いのだから。酔うのだから。

次に、回数の話。

市販薬はほとんどが1日3回か2回。3回なら最低4時間、2回なら8時間空ける。まれに「1日6回まで」という咳止めのシロップ剤もあって、その場合は箱に「4時間空けて」と書いてある。ここは守ってほしい。

では、3回きっちり飲まないとだめなのか。

「咳がたまにしか出ないんだけど」という相談は多い。緊張したときの咳、喉が乾燥して出る咳。そういう咳なら、薬はいらないことがほとんどだ。逆に、止めないとつらいなら、用法・用量どおりに飲めばいい。昼間に眠くなって困るなら、眠気の出ない薬か漢方薬に替える手もある。夜中の咳がつらい人は、箱書きどおり飲んでおくと楽になる。

「楽になったら、やめていい?」。いい。むしろ、やめてほしい。市販薬は対症療法、つまり症状を和らげるための薬だ。症状がないのに飲み続ける理由はどこにもない。

そして、1箱(だいたい4日分)飲んでも治らないなら、それはもう市販薬の出番ではない。医療機関にかかるか、せめて薬の種類を変えること。

約束どおり、胃腸薬の話。食前に飲む胃腸薬は、胃の働きを先に整えて、入ってくる食べ物を迎え撃つためのもの。食後に飲む胃腸薬は、消化剤に消化を手伝わせるためのもの。食べ過ぎた夜は食後に。

ついでに「食間」。これを「食事中」だと思っている人が、けっこういる。違う。食事と食事の間、である。朝食8時、昼食11時なら、9時か10時。だいたいでいい。

最後に、朝起きぬけの「おえっ」。あれは胃酸の出すぎであることが多い。胃酸は寝ている間に出やすいので、夕食後か寝る前に胃腸薬を飲んでおく。朝が違ってくる。

「食後」の2文字は、命令というより目安だ。そう言い切ると怒られそうだが、少なくともこの2文字のために熱を我慢する必要はない。これだけは、はっきり言っておく。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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『お気に入りドラッグストア活用術』(寺脇令子 (著)  /Clover出版)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】  41点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】  20点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】  18点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【79点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
・著者の経歴:薬剤師と占い師という異色の経歴が、著者の存在感を際立たせている。

・実用性の高さ:錠剤・粉薬・カプセル・シロップ・チュアブル・フィルム・坐薬と剤型ごとに注意点を整理しており、読者がすぐ実践できる。

・現場に即した問答:「お茶で飲んでよいか」「楽になったらやめてよいか」など、実際によく受ける質問に答える形で書かれていて、説得力がある。「食後」の意味や「食間」の誤解、カプセルの持続性の仕組み(DDS)など、思い込みを正す記述に読みごたえがある。

【課題・改善点】
・既読感:剤型別の飲み方や食前・食後の解説は類書でも扱われる定番のテーマで、目新しさに欠ける部分が多い。

・オリジナリティ:経歴のユニークさに比べると、内容面での独自の切り口が控えめにとどまっている。効き目の速さの順位など、一部の記述で根拠の説明が省かれている。

■ 総評
薬剤師と占い師という異色の経歴を持つ著者が、市販薬の正しい飲み方を剤型や服用タイミングごとに解きほぐした実用書である。現場で繰り返し受ける質問に即した解説は具体的で、食後の誤解を解く記述など日常ですぐに役立つ知見も多い。

ただし扱うテーマの多くは類書でも見かける定番で、既読感は否めない。経歴のユニークさに見合う独自の切り口があれば、さらに上の評価に届いたはずだ。良書であることは間違いないが、あと一歩が惜しまれる一冊である。

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