
政策提言委員・元参議院議員 筆坂 秀世
簗和生農水相の予算大幅カット発言が、大きな問題になっている。政治家の失言は珍しくはない。現自民党副総裁の麻生太郎氏などは、枚挙にいとまがない。1979年、衆院選に初出馬した際には、演説でいきなり「下々(しもじも)のみなさん」と言ってまわりを驚かせたそうだ。普通の人ならこれは大失言なのだろうが、麻生氏の場合は、一般国民を本当に「下々の人」と思っていそうだから、笑い話にもならない。
簗和生農水相の予算大幅カット発言は、失言ではない。確信をもって、自らの力を誇示するために語った発言である。問題発言は、5月24日に行われた自民党大田原支部総会後行われた非公開の懇親会で行ったものだ。
簗氏は、問題発言の中でわざわざ次のように言っている。「この話はですね、一般の方の前ではやりません」「いろんな見方をされるので。ただ、こういう役員レベルの皆さん、自民党支持の皆さんの前では、しっかりお話をしています。那須烏山市については前年比で64%減、3分の1にしました。そして那珂川町は54%減にしています」などと滔々と語っている。その理由は、両自治体の首長が栃木3区の小選挙区選挙で簗氏の対立候補を応援し、簗氏が敗北したからその腹いせというのだ。
簗氏は、「私は今ですね、筆頭副幹事長という立場になってですね。“幹事長室にちょっと来てくれ”と言えば、こんなことができるんですね」とも語っている。小物ほど大物ぶりたくなるのだろう。この発言などは「虎の威を借る狐」そのものだ。
国会議員は全国民の代表でなければならない。それが「自分に投票しなければ、必要な予算を切ってしまう」という脅しを平然とやっているのだから恐ろしい。
この問題で国土交通省は、本当に簗氏の意向を忖度しなかったのか。これまでの説明ではまったく納得できない。国土交通省は、2月中旬に当時の副大臣と官房長が簗氏から問題の道路予算について「問い合わせ」を受けていたことも認めている。同省は「働きかけや圧力を受けたことはなかったと思う」とまでしか言っていない。問い合わせの内容を記したメモも示すこともできず「思う」だけでは、疑惑が晴れたとは到底言えない。
国交省の黒田昌義官房長(当時)は、簗氏からの問い合わせについて、事務方トップの事務次官、ナンバー2の技監にも報告をしている。国交省は、簗氏の問い合わせをそれだけ重視していたということだ。テレビでも放映されていたが、簗氏は街頭演説でも公然と「政権与党の議席がなくなったら地域の予算はごっそり削られる」と述べており、予算を利益誘導に使うのは当然と考えていたのは明白だ。
国交省は、根拠も示さず疑惑がないというだけでなく、栃木3区の6自治体への交付金がなぜ大きく減らされたり、そうでなかったりしたのか、明確にすべきである。そうでなければ、簗氏が強調したように、自民党への票の出具合で予算が決まるということが正しいということになってしまう。
■

筆坂 秀世
政策提言委員・元参議院議員。1948(昭和23)年、兵庫県生まれ。高校卒業後、三和銀行入行。1966年、18歳で日本共産党に入党、1973年、25歳で銀行退職し、国会議員秘書になる。1995年、参議院議員に初当選。2001年、2度目の当選。この間、日本共産党政策委員長、書記局長代行、党常任幹部会委員などを歴任。2003年、参議院議員辞職。2005年、日本共産党を離党。現在、執筆や講演活動、TV出演などで評論活動を展開。JFSS政策提言委員。
著書に、2006 年刊行の『日本共産党』(新潮新書)が12 万部を超えるベストセラーとなる他、『論戦力』(祥伝社新書)『悩める日本共産党員のための人生相談』(新潮社)、『日本共産党と中韓』(ワニブックス)、共著『参議院なんかいらない』『自民党はなぜ潰れないか』(幻冬舎新書)、『どん底の流儀』(情報センター出版局)等多数。
編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2026年10月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。







コメント