コーヒーショップのあり方を考えると案外奥深いものがあります。スターバックスが世界を制覇する過程の中で日本のコーヒーショップはその立ち位置を大きく変えてきました。いわゆる「喫茶店」から「カフェテリア」です。日本ではセルフ方式のコーヒーショップともいいますが、派生英語的にはCafeteriaだと思います。
アメリカンスタイルのセルフ方式はドトールコーヒーが火付け役でスタバが背中を大きく押したと思います。おかげで街中からタバコの煙モクモクの「喫茶店」が一つ、また一つと消えていったことも事実です。考えてみれば我々が若い頃には街角には喫茶店がよくあったのですが、どう考えても経営は成り立たないだろうと思われる店が余りにも多かったのを覚えています。
ただ、その経営を一時的に救ったのが70年代後半のインベーダーゲームなどのテレビゲームブームであの時だけは私もずいぶん、「喫茶店」に通ったものです。その後、会社勤めしていた際、ある上司が「俺がリタイアしたら地元で小さな喫茶店を開いて好きな絵を店に飾り、好きな客とタバコを吸いながら一日中だべっていたい」といっていたのが印象的でした。その元上司氏、つい最近話したところ、残念ながら喫茶店のマスターにはなっていませんでしたが。
月曜日の日経夕刊。「キーコーヒー、銀座ルノアール株主に シニア狙い出店拡大」とあります。記事によればスタバのようなセルフ式ではなく、ゆったりとくつろげるコーヒーショップへのニーズは着実に存在しており、今後、出店計画を加速させるようです。
銀座ルノアールといえば駅前によくあるあの喫茶店で、我々もずいぶんお世話になりました。くつろげるというより話が出来る応接間のようなイメージが強いと思います。冒頭述べたように日本でなぜあちらこちらに喫茶店があったのかといえば家が狭いからだと理解しています。客や友人と話をするスペースがない、更にはお父さんやお母さんが一人でゆっくり雑誌を読むにも狭い家では落ち着かないというバックグラウンドがあったものと思われます。だから、街のいたるところにあったのです。
数百円で1時間、コーヒーを飲みながらゆったりしたソファーでくつろぎたいというのは正直、今も昔も変わらないはずです。事実、日本でスタバなどセルフ式コーヒーショップはちょくちょく使いますが、くつろぐところというより時間を潰すところでゆったりという言葉は私のスタンダードでは当てはまりません。狭いテーブル、客と客の隙間が窮屈で隣席で話をしていればその声が妙に気になるのは私だけではないでしょう。
ならば日本の住環境がこの20年で大幅に変わったとも思えませんから日本式「喫茶店」はいまやニッチマーケットとして再び脚光を浴びてもおかしくありません。
ところで銀座ルノアールといえばカナダのブレンツコーヒーを日本で展開するビーアンドエム社のオーナーです。本家カナダ側は違うはずですが、日本のブレンツは銀座ルノアールが支配しており、更に今後、キーコーヒーがそれを支配するということになります。ならば日本のブレンツコーヒーの豆は誰が提供するのか、このあたりはコーヒー店を経営する私にはちょっと興味があるところではあります。
今日はこのぐらいにしておきましょうか?
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年11月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。