原発問題を総選挙の争点にすべきではない --- 岡本 裕明

アゴラ

あきれ返った日本未来の党の嘉田由紀子氏の原発に関する発言のぶれ。もともとの党立ち上げは「卒原発」で10年でその目標を達成できるようにすると謳いました。それを聞いた脱原発派の国民は勇気付けられたでしょう。そして多くの国会議員も嘉田さんのところに集まりました。小沢一郎氏とそのグループもその一つでした。

しかし、民主党の前原大臣は出来もしない空理空論と指摘、その後、嘉田代表は「条件次第で一部稼動を認める」とし、同じ日の午後には「(再稼動は)針の穴に糸を通すぐらいの大変難しい条件がたくさんある。困難だし、必要性もない」と再びトーンを変えました。


おぼえていらっしゃる方も多いと思いますが、大飯原発再稼動の際、嘉田代表は滋賀県知事として反対の立場からそれを容認せざるを得ない状況に追い込まれました。たしか、産業界からの強い抵抗だったと認識しています。つまり、嘉田氏は気持ちと行動が伴っていない状況がずっと続いていて今でもそれは変わっていないのです。

ご本人は原発を止めたいが公職の身としてはさまざまな与件、背景、前提、政策、影響などを考慮しなくてはならず、結局のところ、ご本人が「消化不良」状態のまま、新党を立ち上げてしまったということにしか見えません。

私は原発問題は嘉田氏のみならず、大半の人においていまだに、十分にその仕組み、流れ、対策について理解できていないという気がします。ところが以前にも書かせていただきましたが、「止める、止めない」の議論だけ先行させてしまった民主党の稚拙さがそこにありました。本来ならどういう状況なら止められるかというのを十分認識させた上でその手法を改善し、より早く止めるほう方があるのか、という議論が先にあるべきで「卒原発」などというのは稚拙なマニフェストであり、しかも代表がブレまくっているという情けなさであります。

私は原発問題は代替の安定的なエネルギー手段確保と原発サイクルの終焉を決めるという実務的議論が先であって政治家が国民の人気投票を煽るようなことをすべきではないと思っています。これではAKBのお祭り的総選挙と大して変わらないのであります。

日本には今、やらなくてはいけないことは山積しています。外交ひとつにしても尖閣、竹島、北方領土に北朝鮮のミサイルまで再びやってきました。経済はどうでしょう。デフレ脱却について論理的に政策をもっている政党はいくつあるでしょうか? 高齢化社会に向けた対策やTPP、防衛など重要案件はいくらでもありますが、どうしても身近な原発に飛びつく政治家、メディア、そして大半の国民はもうすこし、スタンスを変えるべきだと思います。

今の状況はまるで小泉元総理が郵政民営化を争点とした総選挙と同じように写るのは私だけでしょうか?日本の政治が二流、三流といわれる所以はこのあたりにあるということです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年12月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。