ケンズカフェ東京の氏家健治シェフ(写真は氏家より提供)
皆さまは食欲の秋をどのようにお過ごしでしょうか。これまで何回か取上げた、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)のガトーショコラですが、今回はビジネスのタネまきのエピソードを紹介します。
■ビジネスはタネまきが重要
氏家健治シェフ(以下、氏家)が監修したガトーショコラは、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、TBS「ランク王国」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「嵐にしやがれ」などで紹介されたことがあるので、ご存知の方も多いことでしょう。
氏家は、ガトーショコラがそこそこ有名になったあと、イタリアン・レストランからガトーショコラ専門店へシフトするきっかけとなったのは、テレビ番組に取上げられたことだと述べています。
20%近い視聴率を誇っていた人気バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』の人気コーナー「新・食わず嫌い王決定戦」のなかで、藤井フミヤさんがガトーショコラをお土産として紹介したことが契機になったようです。
氏家は、知人や店の近所の人たちに機会があることにガトーショコラをプレゼントしています。目的は、味や価格帯について率直な意見をヒアリングするためです。そんなヒアリング先の一軒に近所のネイルサロンがありました。そこは氏家が月1回のペースで通っていたサロンでした。
「職人のごつごつした無骨な手には、なんともいえない独特の味わいがありますが『21世紀のシェフは美しい手で料理を作るべし』という持論がありました。指先のケアは怠らないようにしているのです。」(氏家)
「ネイルサロンでは甘皮を処理し爪を磨き、パラフィンパックというもので手に必要な栄養を与えてもらいます。指先をケアするようになってから、指先の感度が鋭くなり、ガトーショコラ作りにもプラスの効果が出てきました。」(同)
そのサロンでは、「とても美味しかったからうちのお客様にも紹介しますね」と言ってくれたそうです。これには社交辞令が含まれているものですが、ネイルサロンは女性同士の情報交換の場になっているケースが多く口コミが広がりやすいもの。そのご縁で藤井フミヤさんにガトーショコラが届いたとのことです。
また、藤井フミヤさんの弟の、藤井尚之さんの奥様もネイリスト。行きつけのネイルサロンのオーナーと勤務先が同じこともあり、お土産でガトーショコラを紹介してくれた経緯がありました。氏家は次のようにも述べています。「タネをまかないと花は咲かない。」
■勝負のタイミングは一瞬
次にこだわったのが徹底的なブランド化です。本場のフランスには「ジャン=ポール・エヴァン」「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のようなブランド化している専門店がいくつもあります。それに習おうと考えたのです。
「ブランドマーケティングは誰かに依頼することもなく、自分でできることを精一杯やろうと思いました。理由は、ガトーショコラという商品の思い入れと、知識は誰にも負けないという自負があったからです。」(氏家)
価格競争に巻き込まれずに済むようなスペシャリテ(シェフにとって思い入れの強いメニューという意味)があってこそ、小さなお店が突き抜けたビジネスモデルを築けることを物語っています。
さて、『ガトーショコラの日』として制定されている、2016年9月21日(水)から来年3月まで、コラボ新メニューが南青山レクサスカフェ(INTERSECT BY LEXUS- TOKYO)で提供されています。この機会に食欲の秋を楽しんでみては如何でしょうか。ガトーショコラを味わうためのワインセレクトもお忘れなく。
参考書籍
『1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ』(SB新書)
尾藤克之
コラムニスト
PS
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