<http://www.breitbart.com/から引用>
ミスリードされた「トランプ支持者像」が選挙結果を見誤らせるだろう
トランプ支持者像として典型的に語られるイメージは「白人ブルカラー不満層」というものです。このような誤ったイメージはヒラリー陣営による徹底したプロパガンダの結果として米国内外にまで浸透しています。
トランプ支持者を紹介する日本のテレビ番組でも「デトロイトまで出かけて白人労働者」をわざわざ見付けて取材しています。トランプ支持者なんてものは全米(ワシントンD.CやNYでも)に存在するのに随分と手が込んだ画作りだなと感心してしまいます。
しかし、現実にはトランプ氏とヒラリーの支持率は拮抗している(地域によってはトランプ氏が上回っている)状況です。「米国人の約半数が白人ブルカラー不満層」だというおよそ非現実な仮定を信じない限り、トランプ支持者に対する愚かな理解が通用しないことが分かります。
私たちはステレオタイプのプロパガンダをまき散らす有識者らの悪質なデマを信じこまされて米国の大統領選挙の状況を大きく見誤っている状況に陥っています。
性別・年代・所得・学歴・人種の観点から「トランプ支持者・ヒラリー支持者」を比較する
では、10月30日発表のIBD/TIPP poll という世論調査の詳細を見ながら、実際のトランプ支持者・ヒラリー支持者の実像を探っていきたいと思います。
同世論調査は回答者のデータを詳細に公開しているため、メディアが垂れ流すイメージとは異なるトランプ支持者・ヒラリー支持者像をしっかりと理解することができます。
女性の半数はヒラリー支持、ただし白人女性に限定するとトランプ支持の割合が多い
まず、性別から見ていきましょう。男女別の支持率としては男性はヒラリー38%・トランプ49%、女性はヒラリー50%・トランプ36%となっています。
ヒラリーが獲得している女性票は約半数でしかありません。しかし、これは回答者の人種ファクターの影響が大きく、白人女性だけに限定するとヒラリー41%・トランプ43%でトランプが上回っています。
つまり、トランプ氏が男性から支持を受けていることは明らかであるとともに、10月初旬を賑わせた一連の女性スキャンダルがあってもトランプ氏が女性からの一定の支持を維持していることが分かります。
トランプ氏はミドルエイジ~高齢層、ヒラリーは相対的に若年層から人気
次に、年代を見ていきます。トランプ支持者とヒラリー支持者に関して顕著な違いが出ている年代層は若年世代です。18~44歳までの層ではヒラリー45%・トランプ33%でトランプ支持は大きく水があけられています。
これはリバタリアン党のジョンソンが支持を拡大していることが影響しています。当初はヒラリーを削る可能性も予想されていたジョンソンですが、結果としてトランプ支持者を削る形になっています。
一方、45~64歳と65歳以上の層ではヒラリー・トランプの支持率は拮抗しています。誤差の範囲かもしれませんが、数字の上ではトランプ氏のほうがヒラリーを上回る状況となっています。若年層は米国においても投票率が低い傾向があるため、トランプ支持者のほうが投票率が高くなる可能性を示唆しています。
トランプ支持者は中間層から高所得者、ヒラリー支持者は低所得者が相対的に多い
所得についても冷静に見ていきましょう。3万ドル未満の層はヒラリー55%・トランプ31%、3~5万ドルの層はヒラリー46%・トランプ36%、5~7.5万ドルはヒラリー42%・トランプ42%、7.5万ドル以上はヒラリー43%・トランプ47%となっています。
つまり、「低所得者はヒラリー支持、高所得者はトランプ支持」は世論調査の数字から明確に確認できると言えるでしょう。トランプ支持者が「低所得の白人ブルカラー層」という嘘っぱちは一体どこからでてきたものでしょうか(笑)
トランプ氏は共和党の指名候補者であり、同世論調査では共和党支持層の8割以上を固めることに成功しています。したがって、米国においてはタックスイーターではなくタックスぺイヤー(納税者≒高所得者)側の候補者であることは改めて確認するまでもないことです。インデペンデントからの支持率もヒラリーを上回っており、「トランプ支持者はヒラリー支持者よりも所得が高い」が正しい分析です。
トランプ支持者は高卒・大学中退者が多く、ヒラリー支持者は大卒以上が多い
学歴については、高卒者でヒラリー35%・トランプ52%、大学中退者でヒラリー38%・トランプ47%、大卒以上でヒラリー50%・トランプ36%となっています。
トランプ支持者は相対的に学歴が低い傾向があり、ヒラリー支持者のほうが高学歴者が多いことが分かります。本人が望んだのか不幸にも進学できなかったかは定かではありませんが、トランプ支持者はたたき上げの人物ということになります。
しかし、大卒以上でも36%はトランプ支持であるわけで3人に1人はトランプ支持者であるわけです。したがって、トランプ支持を単純に低学歴だと断定することは明らかな間違いです。
また、上記の所得層と合わせて考えると、学歴についてはトランプ支持者はヒラリー支持者よりも低いけれども、所得についてはトランプ支持者はヒラリー支持者を上回っていると推量することができます。
ヒラリー支持者が高学歴層で多数派を占めていることで、メディア上のオピニオンは徹底的にトランプ・パッシングだらけになっているわけですが、それらは学歴エスタブリッシュメントのインナーサークルの言論でしかないと言えるかもしれません。
トランプ支持者は白人が中心ではあるものの、ヒスパニックも3人に1人はトランプ支持
白人男性はヒラリー31%・トランプ57%、白人女性はヒラリー41%・トランプ43%となっており、白人層においてはトランプ氏が相対的に優位な状況となっています。黒人層でヒラリー85%・トランプ4%と圧倒的な差がついている状況とは顕著な違いがあると言えるでしょう。
トランプ氏は「メキシコ国境に壁を築く」などの不法移民に対する厳しい姿勢を見せていますが、ヒスパニック層からの支持はヒラリー48%・トランプ35%という状況となっています。3人に1人のヒスパニックはトランプ支持という状況です。
ヒスパニックにはキューバ系とメキシコ系が存在しており、両者は異なる政治的な支持の傾向を持っています。キューバ系は自主独立の精神が高く、共和党の基本的な方向性と親和性があります。
その結果としてヒスパニックにもトランプ支持が一定層存在する形となっているため、トランプをレイシストと単純に罵る人々は複雑な現実を理解できない層と言えるでしょう。実際にフロリダ州ではキューバ系のトランプ支持が高まりつつあります。
<フロリダのキューバ系ヒスパニックでトランプの支持率上昇>
Poll: Donald Trump +4 in Florida; Jumps 19 Points Among Cubans
・・・以上となります。
トランプ支持者が「白人ブルカラー不満層」というステレオタイプが間違っていることが明らかになったと思います。トランプ支持者を馬鹿にしている日本人有識者よりも約3分の1のトランプ支持者は学歴も所得も上回っている可能性があります。
米国大統領選挙は依然として支持率が拮抗した状況が続いていますが、支持年代層の分布を加味した場合、トランプ氏が相対的に伸びると推測する見方が妥当です。この年代別の支持分布の構造は英国のBrexitと酷似しており、数%の差であればトランプ氏がヒラリーをまくることも現実的なものと言えるでしょう。
いずれにせよ、今回の選挙ほど有権者にレッテルを貼る酷いメディアのキャンペーンはありません。それらの偏ったメディア情報を鵜呑みにするのではなく、実際の世論調査の数字を見ながら冷静に状況を見ていきたいものです。
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