旅を続ける。
普段は広大で温和なシエナの広場だが、年2回ここで開かれる競馬Palio di Sienaでは10頭が疾駆するには狭すぎて、落馬・転倒が相次ぐ。
スリリングなレースに熱狂する地元民が食べるものは何か。
うどんである。
小麦と水だけで作る太くてゴツい麺、トスカーナ名産のイタリアうどん。
PICI(ピチ)という。
シエナの公園前では強いクリームとベーコン。
この難敵、噛み砕くのに骨が折れる。
しばし食べ歩いてみる。
シエナ一番の評判を誇る食堂に来てみた。
ここもイタリアうどんPICIが定番。
強い小麦粉文化。
小麦粉を「メリケン粉」と呼ぶのはイタリアに非礼であろう。
イタリアうどんPICIは、強い。
だが塩気を感じない。
だから強いソースが欲しくなる。
イノシシのラグーが定番。
トスカーナ、田舎なり。
トスカーナのサンキリコというど田舎。
メリケン粉はアメリカから輸入したからそう呼ぶ。
かつて卵を天津から輸入したから天津飯なるものができたが、そのメニューは天津で通じず笑われたことがある。
メリケン・パウダーもアメリカでは通じまい。
にんにくトマトは野太くゴツく品がなく、永遠にかんでいたい。
さぬき、いなにわ、いやそれより、ほうとうに近い。
一級品のカレーうどんがあるように、日本のうどんももっと可能性があるよな、と思いつつ食す。
まだ陽は高いが、濃い赤と、グラッパ、持って来い!
業務連絡:店の前にあったクルマ。
これ事務所にほしい。
巨人の星で牧場春彦が伴大造を闇討ちしたメリケンサックは、アメリカで通じるのだろうか。
などとトスカーナは考えさせる。
イタリアうどんPICI、アヒルのラグーで@サンキリコ。
むかし藤田まことさんが久米宏のぴったしカンカンで、うどんは飲み物です言うて、実施にごくんごくんと飲んでみせた。
尊敬した。
トスカーナ山頂の古い村、モンテプルチャーノ。
その後ぼくも数日、うどんを噛まずに飲む練習をしてみた。
子どもだったが、大阪のやわいうどん(うろん)やからでけた。
イタリアうどんPICIではムリやな。
イタリアうどんPICI、トマトにんいく。
ゴツいわぁ。強いわぁ。
ほっしゃんは、うどん食ってくしゃみして鼻からうどんを出す強い芸を持っていた。
あれは最近やってないのかな。
この麺であの芸は無理やな、鼻血が出てまうわ。トマトやからそれでもええか。
イタリアうどんPICI定番、イノシシのラグー。
しかし麺よりイノシシの肉のほうが多い。
ピチ入りラグーだ。
トスカーナの強い赤、ちょうだい。
それから、白いメシない?
さすがイタリア、ジュークボックスにマティア・バザールが!まだ現役なのかな。
30数年前、AGFマキシムのCMに驚いてLPを買いに走ったことを思い出す。
(よかったのはその1曲だけだったがw)
参考資料:AGFマキシムCM(1983年)愛のブルートレイン – マティア・バザール
トスカーナ州のとなり、ウンブリア州、アッシジ。
ここでも巡礼者をもてなすのはイタリアうどん。
同様のゴツさだが、ピチではなく、ストランゴッチと呼ぶ。
この名のほうがごっつええ感じが伝わる。
クリームと黒胡椒のストランゴッチ。
シンプルだが強く、ゴツさが際立つ。
おぬしら、麺食いやのう。
ウンブリアの山頂、オルヴィエート。
たどり着くと荘厳で雄大な13世紀のドゥオモが現れ、巡礼者は涙する。
イタリアうどん食って涙をおふき。
この店のは短くしたパスタなので、ストランゴッチではなく、ウンブリア名物パスタと呼んでいた。
強い麺にトマトの強いラグー。
オルヴィエートの名産は強い白ワイン。
それも頼む。
ごめんなさい。最後に浮気。
これはタリアテッレです。
アーティチョークのパスタとあったので、たまらず頼んでしまいました。
もっちりとシャキシャキのくんずほぐれつ的なやつや~。
おしまい。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。