また内部留保が話題になっています。これは法人企業統計の分類で、企業会計にはない言葉なのですが、「企業が労働者に配らないで貯め込んでいる」という誤解が絶えません。茂木さんも玉木さんも、内部留保と企業貯蓄を混同しています。
茂木さん
「企業の内部留保=600兆円のうち、301兆が現預金」「ある程度、現金は必要でも300兆も持っている必要はない」 https://t.co/sCGa6XqQwc pic.twitter.com/g2Yg0clPZc
— Yoshi 🐈 (@Yoshi95683706) August 21, 2026
Q. 内部留保って何ですか?
内部留保という言葉は、企業会計にはありません。これは法人企業統計で純利益の中から配当や役員報酬などを引いた利益剰余金や直接投資などをまとめて分類したものです。
図1
Q. 内部留保は余ったお金なんですか?
内部留保は現金とはかぎりません。これに対応するのは図1の左側(資産)の中の「現預金」だけではありません。たとえば100億円かけて工場を建てた場合、10年償却で今年10億円の費用が計上されたとすると、あとの90億円が利益剰余金ですが、これは金庫に眠っているわけではありません。
図2のように、現金として保有されているのは利益剰余金の半分ぐらいで、あとは土地・建物・設備などの固定資産が多い。これを売ると、企業は生産ができなくなります。

図2(法人企業統計)
Q. では内部留保は何に使われてるんでしょうか?
法人企業統計は配当と役員報酬以外をまとめて「内部留保」と分類しているので、経済全体では600兆円と大きいようにみえますが、大部分は図3で「その他固定投資」となっている項目です。

図3(門間一夫氏)
これは実際にはほとんどが海外法人の「外部留保」で、2010年代に黒田日銀のゼロ金利による産業空洞化で大幅に増えました。
Q. 内部留保を従業員に分配すべきですか?
利益剰余金は、賃金を払ったあとの利益ですから、そこからさらに賃金を払うのは賃金の二重取りです。これは株主の資産ですから、「もっと配当しろ」とか「自社株買いしろ」というなら筋は通ります。
Q. 内部留保に課税するってどういう意味ですか?
図1でもわかるように、内部留保(利益準備金)は、企業の利益から配当や賃金などを引いた純資産の内訳ですから、課税するとすれば、預金課税ということになります。法人税は税引き後利益から払う配当に所得税をかける二重課税なので、内部留保課税は三重課税になります。不可能ではないが、法人税を下げる最近の流れに反しています。
Q. 内部留保に問題はないんですか?
日本の企業の利益剰余金の半分近くが、預金として保有されていることには問題があります。これが日本経済の活力を失わせる貯蓄超過です。そもそも企業はお金を借りて投資するのが仕事なんですから、預金が200兆円以上もあるなんておかしい。
Q. なぜ企業が貯蓄するんですか?
その最大の原因は国内に有望な投資機会がないからです。これが「デフレのせいだ」というのは因果関係が逆で、企業の資金需要が減るために貸出金利が下がり、ゼロに貼りついてデフレになるのです。
もう一つの原因は正社員が解雇できないことです。企業が赤字になると人員整理するのが普通ですが、日本の大企業は正社員が解雇できないので、赤字になっても雇用を維持するために貯蓄するのです。
Q. 日本の会社はどうすればいいんですか?
日本の会社の問題は「内部留保」を労働者に分配しないことではなく、国内投資に回さないことです。これが投資として使われるようになれば、それは企業の収益も上がり、賃金も上がるでしょう。
Q. 政府は何をすればいいんですか?
企業貯蓄を減らすことが目的なら、預金課税も一つの方法ですが、これは取り付けを引き起こして金融危機をまねくので危険です。企業貯蓄の原因となっている解雇ルールを法律で明確化し、賃金を固定費から変動費にする必要があります。
大事なことは貯蓄を減らすのではなく、国内投資を増やすことです。そのためにはアジアでいちばん高い法人税を減税して空洞化を止めるとか、海外から半導体工場を誘致するとか、できることはたくさんあります。







