大阪府・市の職員採用で、人物重視の選考をしたら、女性の合格者が8割に上ったという。
大阪府・市職員採用 合格8割女性…人物重視で(2013年9月18日 読売新聞)
大阪府、大阪市の2013年度職員採用試験で、事務職(大卒程度)の合格者の約8割が女性となった。教養問題を廃止し、エントリーシート(ES)や論文など「人物重視」の試験に切り替えたところ、女性比率がアップした。女性のアピール力の高さが浮き彫りとなった形だが、府・市は「男女半々が理想で、ここまでの偏りは予想外。女性に有利になっていないかなど試験変更の影響を検証したい」としている。
この結果に意外性は感じない。
企業の人事部門の方と話をしていても、「もし新卒採用を、成績や現時点の能力だけで選考すれば、半数以上は女子学生になる」という意見は少なくない。私も、同意する。
しかし、百貨店など一部の業界を除き、多くの企業は採用者の8割を女性にしたりはしない。これは単に男女差別をしているわけではなく、結婚・出産による退職ということも含めて、まだ多くの会社が「長い目で見れば男子学生を採用しておいた方がよい」と考えていることを意味する。女性から見れば「偏見」に映るだろうが、企業側から見れば「経験則による現実的対応」ということになろうか。
一方、今年のプロ野球。
楽天のマー君こと田中将大投手が、歴史的な連勝記録を続けている。一方で、高校時代に甲子園の決勝戦で対決した日本ハムの斎藤佑樹投手は、ケガの影響もあってか今期は2軍暮らしが続く。おそらく、高校生の頃は能力に差のなかった二人が、今では天国と地獄を見ている。
田中将大投手は、正に「プロ向き」だったのだろう。だが、プロのスカウトが将来の活躍を信じてドラフト上位に指名した逸材でも、入団後に鳴かず飛ばずというケースは少なくない。あの甲子園の決勝戦を見て、現在の二人の状態を予見できた人は少ないだろう。それほど、人の将来性を見極めるのは難しい。
先述のように未だ多くの企業は、将来的に化けてくれることを信じて、男子学生にゲタを履かせて採用している。
これが正解かどうかは、いずれ答えが出る。冒頭の採用方針により、橋下市長からコテンパンに言われてきた大阪府や大阪市の職員レベルが、数年後には見違えるように改善しているかもしれない。
「採用選考中に、人材の将来性を正確に見通せる目を持ちたい」
今も昔も、プロ野球スカウトも含め、採用担当者共通の叶うことのない望みである。
山口 俊一
株式会社新経営サービス
人事戦略研究所 所長
人事コンサルタント 山口俊一の “視点”