シェアリングエコノミー検討会議。中間報告書がとりまとめられました。ポイントをピックアップしてみます。
まず、シェアリングエコノミーの特徴として、7点が整理されています。
1)B2CからC2Cへ
2)プロのサービスからアマチュアのサービスへ
3)シェア事業者はサービス提供主体ではない(サービスを提供する個人が責任を負う)
4)タテからヨコへ(業法での品質管理ではない)
5)既存リソースの一時的な市場化メカニズム(活性化されていない資産の市場化)
6)提供者と利用者との信頼(どちらも相手の信頼度を吟味せよ)
7)事後評価の仕組み(信頼メカニズムとしての提供者・利用者相互レビュー)
的確な整理です。
情報通信白書によるシェアエコ市場規模の推計は、2013年で世界で150億ドル、2025年には3350億ドル。国内市場は2014年度233億円、2018年度に462億円だそうです。
しかし、日本は諸外国と比較して、シェアリングエコノミーの認知度や利用意向、利用率が低いことが明らかになっています。
これも情報通信白書によれば、Airbnbのような民泊の利用意向は中国(84.2%)、韓国(77.6%)、米国(55.0%)、英国(44.2%)、ドイツ(31.6%)、日本(31.6%)。
Uberのような自家用車ドライバーサービスは、中国 (86.4%)、韓国(71.5%)、米国(53.5%)に対し、日本の利用意向は31.2%。
また、シェアリングエコノミーのデメリット・利用したくない理由として、日本は「事故やトラブル時の対応に不安がある」が特に多くなっています。
これを踏まえ、シェアリングエコノミーの発展を促すのが会議の使命。新体験の提供と経済成長への貢献、資源の効率利用、共助の仕組みの充実、イノベーション創出などの効果を実現するための施策として、以下3点の方向性を検討しました。
1) 自主的ルールによる安全性・信頼性の確保
事業者団体による自主的なルール整備を促す。
2) グレーゾーン解消に向けた取組
法令(業法)の適用が不明確な場合が多いため、その解消を図る。
3) 自治体等による先行的なベストプラクティスの構築・共有
シェアリングエコノミーのメリットを社会全体に浸透させる。
自主的ルールに関し、「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」の基本原則として、①安全であること、②信頼・信用を見える化すること、③責任分担の明確化による価値共創、④持続可能性の向上、の4点を挙げています。
そのうえで、サービス提供に関するリスク等を自己評価することとし、弁護士等を活用して明らかな法令違反を調査することや法令違反とならない根拠を明確化すること等を求めています。
シェア事業者が遵守すべき事項として、連絡手段の確保、利用規約の策定、法令遵守、評価の仕組み、相談窓口の設置、漏洩等に対応する体制の整備、従業員の教育といったことがらを求めています。
ここでのポイントは、これを政府が規制として下ろすのではなく、民間が自主的ルールを講ずることが前提になっていること。政府はその環境を整え、支援するというスタンスです。官民連携のいわゆる「共同規制」の中でも、かなりマイルドなアプローチ。よい姿勢と考えます。
会議では、これを補強し、個別のシェア事業者が自主的ルールに適合していることを証明する「認証」の仕組みを導入すべきとの提案がありました。認証のビジネスモデルや運用体制をどう構築するかは今後の宿題です。
もう一点、この会議のポイントになったのはグレーゾーン解消策。従来型のサービスごとに定められた法令=業法との衝突問題です。現行法の規制が適用されるかどうか不明確なため、サービスの提供や行政との連携が進まないことをどう解決するか。
これに対しては、「グレーゾーン解消制度」「企業実証特例制度」の活用を推奨することとなりました。これは産業競争力強化法に基づく措置で、事業を所管する大臣が、事業者の新たな挑戦を支援する立場に立って、規制を所管する大臣と協議を行う仕組みです。
この仕組みはぼくも会議に参加して初めて詳しく知りました。民間のチャレンジを推奨する、こうした制度をきちんと使うことは大切です。
さらに会議は、政府の規制改⾰推進会議等の場で、シェアリングエコノミーの推進に関し、 国家戦略特区等の活⽤も含め、幅広く議論することを求めました。この中間報告をテコに、政府での政策優先順位が上がることを期待します。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。