韓国は中国の「防空識別圏」設定で窮地に立たされる --- 岡本 裕明

アゴラ

大きく取り上げられている中国が設定した防空識別圏。安倍首相はアメリカのバイデン副大統領と共同声明を発表し、「黙認せず」として、強い姿勢を見せました。そのバイデン副大統領は中国で習近平国家主席と会談し、本件を議題にあげることになるかと思います。さて、その中国はどういう態度を取るでしょうか?

多分ですが、何も変わらないような気がします。


中国のポジションは一貫しています。「日本が先に仕掛けたでしょ」と。「だから中国は日本になんで一歩、譲らねばならないのか?」と言っています。

今回の一連の問題のきっかけはすべて尖閣の国有化にあります。もともと民間人が持っていた島を総務省が賃借契約して実質的に一般人の立ち入り禁止にしていました。その後、石原元都知事が何年か越しで話をつけ、また、島の所有者も借入金があったことから東京都と売買交渉が進んでいたところ、「石原さんの東京都が買うなら政府が買うべきである」という当時の政府判断からその所有権は国との売買契約という形に取って変わったわけです。しかも破格の金額で。

ところがこのあたりから中国は態度を硬化させます。理由は中国側は「鄧小平は『島』を含む領土問題は棚上げし、日中間の経済協力を推進すべしということから領土問題を表面化させることはなかった」とのことですが、日本がその約束を反故にしたという論理から中国側の厳しい態度に変わったわけです。

日本側のポジションはもともと日本の民間人が持っていた島の所有権であり、その賃借権も国が設定していたのに所有権が政府に変わっただけで地位的変化は何もないと考えています。一方、中国からすると国家の所有は当該島嶼の絶対的地位確保を目指したものであり、その「歩」を進めたと見たわけです。

その上、今回の防空識別圏はもともと日本が勝手につけていたのだから中国も同様の「仕打ち」をするのは当然だ、という理論です。中国らしいスタンスだと思います。

では、バイデン副大統領は中国を口説き落せるのでしょうか? 中国からすれば副大統領の訪問となれば当然、外交成果を土産として持って帰ってもらわねばなりませんが、本件については中国の強硬な姿勢に「言うことは言った」というレベルで終わるとみています。理由は中国がこの識別圏をもとの状態に戻すトリガーが全くないからであります。勿論、バイデン副大統領がその「見返り」の手土産を持って習近平国家主席と会談するなら別ですが、それは考えにくいと思います。

識別圏は識別圏であり、領土の所有の主張をするものではないのですが、日中のみならず、韓国や台湾とも一部交錯するこの中国の識別圏設定はアジアのバルカン半島となりうる可能性もあります。その韓国も離於島に報復的な防空識別圏を設定する予定です。明らかに緊張は高まっていくことになるでしょう。

この結果、外交問題では実は韓国が一番先に難しい立場に追いやられます。私が一番懸念しているのは歴史は繰り返されることであります。韓国の歴史は日本と中国の引力関係で引っ張り合いだったことであり、今後、韓国国内で国を二分するような状態が起きないとも限りません。更には北朝鮮からも金書記の叔父の失脚と側近の処刑のニュースが伝わっております。経済はアジアの時代と称しながらも結局当事者間では何ら問題解決できない足元がぐらつく不安定さを一層増してきた、ともいえそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。