この時期はクリスマスやお正月が近いこともあってか、忘年会を兼ねての婚活パーティーがよく盛り上がっているのではないかと思います。もう何年も前のことですが、私もこの手のものに参加してクリぼっち(クリスマスひとりぼっち)を回避しようと必死になっていた経験があります。
男女100人ずつ参加もカップル成立実質ゼロ
婚活パーティーといえば先日、JR東日本の主催により秋田新幹線で合コンが行われました。結果は男女ほぼ100人ずつが参加したにもかかわらずカップル成立は1組、収率は1 %です。それも冷やかしに来たようなマスコミ関係者ですから、実質収率はゼロです。一体何人の人がこんな馬鹿馬鹿しい企画のために貴重なお金と時間を無駄にしたのでしょうか?
私が何年か前に参加した合コンはさすがにこれよりマシでしたが、それでも二次会を含めて収率8 %程度しかなく、その8 %に入れなかったので金返せと言いたいぐらいです。
なぜ巷で行われる婚活パーティーはこれほどまでに非効率的で無駄が多いのでしょうか。それは主催者が「平衡」を理解していないところにあります。平衡をうまく利用すれば定量的に(ほぼ全員が)カップル成立することも夢ではありません。
平衡とは
平衡という単語を辞書で引いてみると、「釣り合いとれていること」という意味が出てきます。一体何の釣り合いがとれているのでしょうか。
皆さんはおそらく男女の人数や年齢層のことだと思ったのではないでしょうか。それらは終状態を決める上でもちろん重要な要因ですが、それだけでは効率的にカップルが成立しないのです。では何が重要かというと、それは速度論的な観点です。会場では男女が接近して対になるという動きがある速度で起こっていて、逆の過程として再び解離することも起こっています。時間が経つと両者の速度が同じになり、流動的であるにもかかわらず会場内には常に準カップルとカップルとぼっちが一定の比率でずっと存在し続けることになります。この状態を平衡といいます。
合コンの平衡はぼっち側に偏っている
準カップルやカップルになると二人で一人のように行動するため、会場内の「行動の主体」は減少します。これは系内の乱雑さ(エントロピー)を減少させることになるため、神の見えざる手によって本質的にぼっちが多数派になるように運命づけられているのです。この傾向は参加者の移動が活発なアツい合コンほど顕著で、新幹線合コンは5分毎のローテーションをしていたので悲惨な結果はこれが主要因ではないかと考えられます。自由移動でも、参加者から見ると必死に相手を探しまくっているのに出会えないのですからこれほど嫌な話はありません。
カップル成立の障壁と律速段階
この図は理系の方なら似たようなものをどこかで見たことがあるかもしれません。ぼっちの状態からカップルが成立するまでの不安定度をプロットするとこのようになります。不安定度をどう定義するかというとかなり難しいのですが、「気まずさ」と仮定するとわかりやすいかもしれません。
会場でカップルが成立する過程はいくつかの段階に分けることができます。最初に起こるのが出会いで、これは会場内の人口密度が高いほど出会いの確率が増えて速くなります。次に、出会った後に会話して親しくならなければなりません。この障壁は結構高く、それ自体が何段階かに分かれているぐらいです。化学反応ではダブルピークになっている場合が多いのでここでもダブルピークとしました。そして、準カップルがカップルと成り得るには、くっついた状態のままもう一山越えて安定状態に落ち着く必要があります。この最後の段階でまさに恋に「落ちる」わけです。
最初の山を越えるのは初対面の相手と親しくなるということであり、この部分は重要な律速段階です。そしてもう一つの山も超えなければならず、さもなければ最初の解離状態に戻ってしまいかねません。山を越えられるかどうかは確率論であり、5分ローテーションが短すぎるのは誰の目にも明らかです。
カップル成立効率を上げるには
前述した非効率性の原因から、婚活パーティーの効率化の要は次の4点に集約されます。
(1) 初期状態の最適化
私が参加した合コンは参加者がてんでバラバラで、老若も喫煙も全部一緒くたでした。このような著しく不均質な状態は効率を悪化させますので、あえて不釣合による安定化を狙っているのでなければできるだけ均質にすべきです。
(2) 人口密度の最適化
密度が高ければ出会う確率が上がると述べましたが、引力が働くためこれは律速ではないと考えられます。むしろ過密すぎるとアツくなって効率が低下するので、薄いぐらいが丁度良いと考えられます。薄い状態で自由に移動できるようにすべきでしょう。
(3) 活性化障壁を下げる第三者の存在
接近時の気まずさを第三者の存在により幾ばくか緩和すれば、活性化障壁を下げて時間効率を改善できます。第三者はカウンセラーの類でも占い師でもいいでしょう。それほど多くの人数は必要ありませんが、多いほうが速度は上がります。それによって強制ローテーションや無理に動きまわる必要が無くなると会場をクールに保てるという副次的な効果もあります。
(4) 二相化による平衡状態の最適化
平衡はぼっちとカップルが常に一定比率になるように働くため、成立したカップルが系内から出て行くと残りのメンバーでまた一定比率に落ち着きます。これを繰り返すうちに最終的にはほぼ全ての参加者がカップルになり、最後まで残ったメンバーさえなし崩し的にくっつかざるを得なくなるかもしれません。また、カップル専用ルームではカップル同士の相互作用による、結晶学的な状態安定化が期待できます。
以上の4点を意識して合コンを企画することで収率はかなり改善するはずです。人肌恋しい季節ですから、90 %以上が出会えるとなれば大いに盛り上がるでしょう。結婚相談所や婚活関連のイベント関係者はぜひご検討してみてはいかがでしょうか。