金正恩第一書記の動きに注目が集まっています。同国No.2とも言われた張成沢氏の処刑はあまりにも衝撃的でありました。その上、もともと金正恩書記の政策運営をサポートしていたとされる張氏の妻であり正恩氏の叔母である金慶喜氏も姿が見えなくなったとすれば正恩氏の完全なる独裁政権が始まったと見るべきでしょうか? 12月17日の金正日総書記の追悼大会に於ける壇上に並ぶ人の序列関係にも注目が集まりました。その金氏に政権運営の能力はあるのでしょうか、あるいは、近隣諸国はどう動くのでしょうか?
金氏が第一書記になったとき、彼の年齢から強力なサポート体制が必要であると専門家は考え、事実、金慶喜氏がその役目を果たしていたはずです。それはむしろ金家というファミリーラインとしての守り方であったのですが、正恩氏は自我に目覚めてしまいました。その象徴的な行動がミサイルの発射であります。昨年4月に一度失敗したものの12月に再び挑戦し、成功したことで正恩氏の「自信」は圧倒的に深まったと見るべきでしょう。国民に対する威信を見せ付けるという当初の目的は達成できたわけです。
そうなればお目付け役の叔母様にとやかく言われるのは若い正恩氏にとっては目障り、はた迷惑ということになります。これが今回の一連の流れのバックボーンではないでしょうか?
ただ、問題はこれからであります。正恩氏が第一書記に就いて今日に至るまではそれなりに抑止力も働きました。また一時期は「成果」の見えない正恩氏に不信感すら漂っていたともされたのですが、今回の張氏の粛清は取り巻きの付和雷同というより恐怖政治の始まりであると見ています。今日に至るまで専門家の共通している点はわずか30歳の正恩氏の考えが分からないということであります。
一つは張氏は対中国の関係改善に注力していたわけで金正日氏の時代を通じて作り上げたその関係を壊す可能性があるということです。正恩氏はいまだ中国を正式訪問しておらず、中国側もその動きを図りかねている状況です。
次にミサイルの発射を含む西側諸国への誇示ですがあれは正恩氏の個人的性格の表れではないかとみています。スイスまで留学した正恩氏にとって西側諸国と喧嘩すれば勝ち目がないことは分かっています。では何故自己顕示欲が強いのでしょうか? 私は彼が西側と肩を並べてみたいと思っているように感じます。つまり、今回の粛清行動は古い北朝鮮の流れを断ち切り、自分の描く路線を進むという決意に思えます。
では、今後、誰が彼と交渉するのにふさわしいのでしょうか?
彼と話が出来る人は習近平でもバラク・オバマでもない気がします。もっと若くて彼のハートをつかむような人物が彼と接近したならば事態はもっと明快になる気がします。言い換えれば彼には今の地球上で起きているグローバル化、政治と経済と社会が複雑に入り組み、マスコミがいろいろ書き立て噂が噂を呼ぶ魑魅魍魎とした世界ではなく、もっと単純でストレートなアプローチで捉えるほうがよいというのが直感です。
個人的には案外日本人で毒されていないセンスのある若手で政治家ではない人がキーパーソンになりえる可能性を秘めていると思います。また大日本帝国陸軍の残置諜者である畑中理氏の息子が追悼大会の司会をしたという点も興味深く、噂のある金正日氏は畑中氏の息子だったという点も含め、日本と北朝鮮の接点がここにきて奇妙に感じられる点もあえて指摘しておきましょう。
今日はこのぐらいにしておきます。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。