スピン・ドクターズと言えば2人のお姫様ですが、このスピンドクターは米大統領に仕えていました。
ホワイトハウスから、また1人高官が去ります。マイケル・ダブキ広報担当大統領補佐官(注:communication directorなので広報部長の訳が適切かもしれませんが、一部の日本語メディアではスパイサー氏も”広報部長“と表記しているのでこの表現にとどめています)が30日、辞任を発表したのです。
米国政治情報サイトであるポリティコの共同創立者が2016年に立ち上げたメディア、アクシオスが真っ先に報じています。マイケル・ダブキ氏は2月に広報担当補佐官に就任したものの、約3ヵ月後の5月18日にトランプ政権に辞任の意思を伝えたとか。しかし、外遊後まで待つよう促されメモリアルデー明けの発表となりました。
ダブキ氏はトランプ米大統領と同じくNY出身ですが、米大統領選挙でのトランプ陣営スタッフではありません。メディアを中心とした起業家であり、共和党のストラテジストで知られるカール・フォルティ氏と共にブラック・ロック・グループなどのメディアを設立してきました。トランプ氏とは補佐官に就任するにあたって漸く面識を持った程度で、政権内に仲間は存在しないも同然だったと言われています。
旧知の知り合いがいない新たな職場は、さぞかし緊張感に溢れていたことでしょう。ホワイトハウスのリークが立て続けに流れ、トランプ米大統領がツイートで「偽ニュースだ(fake news)」と自身で火消しに回り、ロシアゲートの疑惑が渦巻く。筆者だったら、1日も持ちませんわ。
今回の辞任劇は、以前から噂されていたホワイトハウス刷新の幕開けとなるのでしょうか。アクシオスいわく、共和党のロビイストで選対本部の首席スタッフの一人だったデビッド・アーバン氏を招き入れる可能性があるといいます。アーバン氏は53歳で、米大統領選でペンシルベニア州がトランプ氏を選出する方向へ導いた立役者。入陸軍士官学校(ウェストポイント)出身でペンシルベニア大学で行政学の博士号を取得していますから、政治判断に長けた信頼に足る人物と評価されるはずです。
保守派のリック・サントラム元上院議員(ペンシルベニア州)は、アーバン氏の共和党全国委員会(RNC)委員長就任を望んだ1人。
そのほかトランプ米大統領が新たに危機対応コミュニケーション室の立ち上げを念頭に、29日に重要人物と会談したとも伝えられています。その1人は選対本部長を務めていたもののレポーターへの暴行で辞任を余儀なくされたコーリー・ルワンドウスキー氏で、もう1人は同じく選挙戦に携わったデビッド・ボッシー氏。外遊後のトランプ米大統領にとって、ロシアゲートの対応だけでなく医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃・代替案移行、税制改革など課題が山積みですからね。この機会に、ホワイトハウスの足並みを揃えることに腐心するのも頷けます。
ショーン・スパイサー報道官は続投する見通しながら、事前報道の通りトランプ米大統領自身の記者会見を増やす予定とされています。自身の言葉で伝えれば、誤解も減らせるというもの。トランプ米大統領らしく、直球勝負で記者団に語りかけること間違いありません。
(カバー写真:JoshBerglund19/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年5月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。