政治主導で「行政が歪められて」何が悪い

山田 肇

行政改革推進本部は2013年1月の閣議決定で設置された。その目的は「国民本位で、時代に即した合理的かつ効率的な行政を実現するため、行政改革を政府が一体となって、総合的かつ積極的に推進すること」にある。

行政改革推進本部の下で実施する活動の一つが行政事業レビューである。行政事業レビューでは、各府省が進める約5000の事業すべてについて、各府省が自ら点検し見直しする。その過程で作成される行政事業レビューシートには事業の執行状況や資金の流れが記載され公表される。

行政事業レビューの対象から選定して、外部の視点を活用して公開の場で議論するのが行政事業レビュー「公開プロセス」である。外部委員との議論はインターネットで生中継され、結果は「取りまとめコメント」になり、次年度の予算要求に反映される。

昨年春の公開プロセスでは国土交通省の港湾公害防止対策事業が対象になった。東京湾では1972年からヘドロのしゅんせつを続けているが、10年ほどでまた溜まるため、何度もしゅんせつを繰り返している。ヘドロは下水道を通して流れ込んでいるから、これを絶たなければ永遠に終わらない「賽の河原」である。大本を断つ方向で事業を抜本的に見直す、というのが公開プロセスの結論になった。

各府省では優秀な官僚がそれぞれ事業を進めているが、時に府省内部の論理に閉じてしまう恐れがある。これを外部から、国民の視点に立って見直すよう求めるのが外部委員の仕事である。国土交通省の官僚は結論について「行政が歪められた」と感じたかもしれない。しかし、公開プロセスは単に事業を批判するのではなく、より合理的かつ効率的な事業の実施を求めるものである。

行政改革全体も公開プロセスも、行政任せを改めようとする、政治が主導する活動である。その結論によって今までの行政とは方向が変わる可能性がある。しかし、政治主導である限り、官僚が時に「行政が歪められた」と感じるのは当たり前のことである。