グーグルは1月26日、英国はロンドンを拠点とする人工知能(AI)の技術を有する企業ディープマインド・テクノロジーズを買収したと発表しました。ハイテク関連ウェブサイトRe/codeによると、買収金額は4億ドル(412億円)だとか。4億ドルもの規模というと、オンライン・ストレージ大手ドロップボックスが最近になって資金調達したレンジ上限であり、プライベート・エクィティ(PE)ブラックストーンが中国のショッピングモール運営会社SCPを買収した金額に相当する、途方もない水準です。
グーグルが4億ドルもの巨額を支払ってまで手に入れたディープマインドとは、どんな企業でしょうか?
ウェブサイトでは「機械学習(ML)による最良の技術とシステム神経科学を合わせ、力強い学習用多目的アルゴリズムを構築」する、「AIの最先端企業」と紹介しております。創業者はデミス・ハサビス、シェーン・レッグ、ムスタファ・シュリーマンの3氏。これまでシミュレーション、電子商取引、ゲームの分野でアプリを商品化した実績があるとか。ディープマインドがグーグルにどのように貢献するか判然としませんが、AIとMLはグーグルにとって重要な研究開発分野。言語、発話、翻訳分野の作業でMLとAIを活用中と説明している背景もあり、AIを駆使したさらなる技術革新が期待されます。
心情的には、たった1枚のウェブサイトにディープ・インパクト・・。
AIをどのように活用するか、すでにアメリカでは未来予想図が描かれていました。
アメリカでは、2013年11月からドラマ「Almost Human(ほとんど人間)」の放映を開始しているんです。科学の制御できない進歩によって犯罪率が400%も急激に悪化した2048年の世界で、限りなく人間に近いAI刑事がコンピューター解析や驚異の運動量を駆使し、人類とともに人類のため事件を解決していくというもの。主演である人間の刑事は「ロード・オブ・ザ・リング」に精管なエオメル役でお馴染みのカール・アーバン、AI刑事にはアカデミー女優ハル・ベリーの元恋人で褐色の肌にターコイズ・ブルーの瞳が魅惑的なマイケル・イーリーが演じます。主演の刑事の相手役はヤンキースの主将デレク・ジーターの元ガールフレンドである美女ミンカ・ケリーが務め、メタリックなストーリーに彩りを加えます。
ところで、なぜこのドラマの舞台が2048年か気になりませんか?
2048年は、でたらめな数字ではありません。科学通にはお馴染み、数学者ヴァーナー・ヴィンジ氏と発明者でフューチャリストのレイ・カーツワイル氏が初めて紹介した「技術的特異点(Technical Singularity)」に基づいているんです。平たくいうと「技術的特異点」とは、人間の進歩を人口知能が追いつくポイントのこと。ヴィンジ氏は「技術的特異点」を2030年、カーツワイル氏は2045年と予想しています。つまりドラマは両氏に敬意を表し、かつドラマに登場するAIが「最新型」という設定も踏まえ、2048年を選んだワケです。
ドラマでは、通訳を介さずに刑事が関係者に尋問するシーンなんかも登場するんですよ。まさにグーグルが描く未来を実現したストーリーと言えるでしょう。ちなみに「Almost Human」は、共和党寄りのフォックス提供。グーグルといえば今年の中間選挙および2016年の大統領選を控え民主党寄りというカラーの脱却を図り、共和党と連携を強化しているとウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の報道が思い出されますね。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年1月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。