日経ビジネス最新号(2004.1.27.号)の特集はイオン(AEON)です。
日本でイオンと言えば、思い出すのが地方に行った時に見えるあのピンク色のどぎつい看板です。日本全国を金太郎飴のように画一化していく元凶として、正直あまり良い印象を持っていません。しかし、今やダイエーも買収してしまい、日本ではセブン&アイと覇権を争う存在になりました。そんなイオンですが、大きなリスクを背負っています。
それは「地方の人口減少」です。
日本は既に国全体として人口減少フェーズに入っていますが、調査によるとイオンの複合型商業モールの7割が、人口が2025年までに5%以上減少する都道府県に立地しているというのです。セブンイレブンが首都圏や大都市圏に集中出店しているのとは対照的です。
地方での圧倒的な存在感という強みが弱みに変わってしまう可能性があるのです。
そこで同社が打ち出している中期経営計画では4つのシフトを挙げています。
「アジア」「大都市」「シニア」「デジタル」です。
今までのやり方をダイナミックに変えていかないと生き残れないという危機感を感じます。
アジアに関しては、大型のショッピングセンターは、今までマレーシアにしか進出していなかったのが、今年の1月にはベトナム、そしてこれからカンボジア、インドネシアにも進出する予定だと言います。アジアでの成長こそが、世界一の小売になるために必須の条件だと考えているのです。
地方に出張に行った時くらいしか接点の無かったイオンですが、不動産投資を始めたカンボジアにも新しいショッピングモールが出来るという話を聞いたり、さらに自宅の近くにあるダイエーがイオングループに入ってしまったり。今までより、接点が大きくなって、ずっと気になる存在になりました。
カンボジアでは、イオンモールが首都プノンペンの消費行動を変えるのではないかという位、現地の人たちは大きな期待を持っています。ミドルクラスの消費者が本当に欲しいものを届けてくれる存在になって欲しいと成功を祈ります。
ダイエー碑文谷店については、果たしてイオンのノウハウで立て直すことができるのか。個人的には疑問に思っています。イオンが強いのは、ミドルクラスです。新しいお店が入ったりして改革は進んでいるように見えますが、品ぞろえがどうにもチープなのです。
「ナショナルブランドではなく、素材にこだわった醤油が欲しい」「いちごは少し高くてもあまおうが食べたい」「外国人が海外で買っているようなチーズを手に入れたい」・・・残念ながらこのようなニーズを現時点では満たしているようには見えません。
だから、本当に欲しいものは、少し離れたところにある、自由が丘ガーデン、成城石井、に買い物に行くか、都心まで出て行って、日進ワールドデリカテッセンやナショナル麻布といったお店に寄るしか無いのです。
イオンのDNAは環境に応じて様々な挑戦を繰りかえすところにあると言います。一見画一的なショッピングモールのように見えますが、地域や国の特性を把握しながら、ダイナミックに変革を繰り返すという企業風土があるようです。
「地方の小売りの覇者」から「世界のイオン」へ。同社の取り組みがどんな成果を生むのか。まずは、カンボジアとダイエーの動きに期待しながら注目したいと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年1月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。