上海オフショア法人口座を考える。ー小谷 まなぶ

小谷 まなぶ

中国投資というキーワードを考えるときに、常に話題に上がるのが、香港オフショア法人口座の制度である


 香港にあるHSBCなどの大手銀行でオフショア法人口座を開設できることは、有名な話である。オフショア法人口座が、なぜ、人気があるかは、海外(外国)の法人や個人から香港のオフショア法人口座に送金されてきた資金(投資・貿易など)に関しては、香港オフショア銀行口座内で、保留している資金に関しては、課税されないという制度である。
 しかし、オフショア法人口座から直接の出金は出来ず、出金する場合は、オフショア法人口座から別のオンショアである法人口座もしくは、個人口座に送金して出金しなければならい。オフショア法人口座というのは、非常に面白制度で、香港であって、香港でない。だから、香港の税制で課税されない。という考えになる。
 世界には、何十箇所かオフショア制度を認めている国や、地域がある。その中で注目されはじめているのが、『上海オフショア法人口座』である。
 私の知っている限りでは、中国国内の深センや、上海などの金融都市の一部の銀行で、香港法人の名義を利用したオフショア法人口座の開設できる。特に、私は、上海に住んでいることもあり、上海のオフショア法人口座を活用している。国際貿易を行う際に、外貨の一時ストックということが非常に重要になる。中国は、外貨管理が非常に厳しく、海外への支払いが容易に出来なくなっている。一般的に中国企業が、海外の企業から商品を購入する際、支払いを行なうには、中国の政府機関である『外貨管理局』を通じて、人民元を外貨に両替して支払わなければならない。支払うといっても、理由なき外貨両替が出来なくなっている。既成事実して、海外で購入した商品を中国サイドに送り、中国の税関で正式通関を行い、商品を中国に輸入していることが、人民元を外貨に両替できる基本条件になる。
 しかし、この場合だと、海外のサプライヤーから言えば、商品を中国のバイヤーに輸出してから商品代金の回収という形になれば、非常にリスクが大きくなる。一般的取引を考えても、一部の商品代金は、先に、手付金として受け取りたいというのが海外サプライヤーの感情である。アグレッシブに動く国際貿易を円滑に行うには、自由な海外送金というのが、非常に重要な作業である。

※中国では、外貨送金が規制されており、自由な送金が出来なくなっている。

 上海は、貿易自由都市を目指している。そのためにも香港と同じ制度の導入を推進している。その一環である政策は、上海市内の銀行で開設できる海外オフショア法人口座である。この制度の面白いところは、上海市内の銀行で開設できる法人口座であるが、オフショア法人口座に関しては、上海や、中国国内法人の名義では、開設できないのである。銀行口座の開設条件としては、香港などの海外オフショア法人の営業許可書をもって、上海市内の銀行でオフショア法人口座の開設ができるのである。
 上海万博で沸く国際都市上海であるが、万博が終わり、これから上海が目指す街のイメージは、国際貿易・金融自由都市としての地位獲得である。それを実現化するためにも、今、徐々に行なわれている上海市内の銀行で開設できる香港法人などのオフショア法人口座の制度が非常に重要になる。この制度の普及が、国際金融自由都市・上海の魅力を与える大切な金融政策のポイントになる。何れにしろ、アジアの金融都市として上海は、力強く成長していることは言うまでもない。
 

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