民主党が大敗したことで、政局は行き詰まってしまった。ねじれができたまま衆議院で再可決もできないので、「パーシャル連合」による不安定な政策運営が続く可能性がある。しかし民主党とみんなの党が組んでも、参議院で過半数にならないので、民主・自民の大連立が選択肢の一つになるだろう。自民党の谷垣総裁は「可能性はゼロ」と否定しているが、これはそれほど奇抜な組み合わせではない。両方ともバラマキ志向の「大きな政府」派という点では大した違いがないからだ。
しかし衆議院では、民主党と自民党が連立すると422議席と、全議席の87%を占める。この巨大与党が一致して行動することはむずかしいので、おのずから二つにわかれるだろう。この場合の対立軸は、世代になるのが自然だ。以前の記事でも紹介したように、日本の税と年金の負担と受給の差は、50代がほぼプラスマイナスゼロで、60代以上は大幅な受給超過、それ以下は負担超過である。終身雇用や年功序列などの雇用慣行も、起業や企業買収の困難な資本市場も、すべて高齢者の既得権を守るようにできている。
実は政治家でも官僚でも、イデオロギーの違いより世代による考えの違いのほうが大きい。たとえば派遣労働の禁止をもっとも強く主張するのは、支持者がもっとも高齢化している社民党や共産党である。彼らは現在の「正社員」中心の雇用慣行が崩れることを恐れているからだ。それに対して50代以下では、解雇規制を緩和して若者の雇用機会を拡大すべきだと考える人が多い。これは当然だ。高齢者にとっては制度を変えても自分たちが恩恵を得ることのできる期間は10年余りしかないが、若年層は一時的にはコストをかけても数十年にわたってメリットがあるからだ。
しかし日本の年功序列組織では、老人に支配権があるので、若者の意見は通らない。この世代間対立は、これから高齢化が進むに従って、ますます老人にバランスが移るだろう。かつては「都市型政党」と「農村型政党」という色分けがあったが、今ではこんな分類は無意味だ。今後は、それに代わって老人党と若者党に分かれたほうがいい。
これは民主党も自民党も同じで、両方とも基本的に老人党である。菅首相と谷垣総裁の違いより、谷垣氏と小泉進次郎氏の違いのほうがはるかに大きい。だからいっそのこと政界を世代別に再編して、小泉氏を党首にして民主・自民の若手が若者党に集まってはどうだろうか。老人党の党首には、小沢一郎氏が適役だろう。その場合、若者は少数派である上に投票率が低いので、選挙では不利だから、選挙区を年齢でわける年齢別選挙区が必要だ。
今のまま老人のエゴイズムを許していると、若者が搾取されるばかりでなく、消費も投資も低迷して老人に分配する財源も枯渇してしまう。いま必要なのは「強い社会保障」という名の老人保護ではなく、若者にチャンスを与えることによって日本経済全体を活性化する改革である。
コメント
確かに世代間の利益の違いで政党が分かれた方が、政策的にはすっきりしますが、そうなると池田氏ご自身がご認識の通り、恒常的に老人党が与党化し、少数でも与党内に「若者派」がいる現状以上に老人利益重視の政策になるのではないでしょうか。「政策上の争点を明確化する」意味はあると思いますが、民意を汲めば汲むほど、池田氏が望むような政策と真逆になると思うのですが・・・
年齢別選挙区のような手段もありますが、その場合も一票の格差を2倍以上つけて恣意的に「若者選挙区優遇」を行うくらいのことをしなければ、投票率の差は解消できても、若者が絶対的な少数派である、という事実は覆せません。そして「恣意的に一票の格差をつける」ようなことをするなら、それはゲリマンダーそのもので、最初から「この方向(この場合は老人優遇是正)の政策が正しい」ということを前提とした、民意無視の考え方になるのではないでしょうか。
私は個人的には池田氏の主張される方向の政策を支持する者ですが、そのような政策を実現できる可能性のあるシステムとして「若者党と老人党」のような話を持ち出すのは、失礼ながら「ごまかし」の話法だと思います。池田氏の「老人のエゴイズム」という表現そのものが、(「将来の日本」という全体最適に反しますが)自分達自身のための部分最適としては合理的な選択を行っているだけの老人層の意志を無視すべきだ、という主張に思えます。であるならば「今必要なのは民意を無視できる制度だ」と主張するのが真摯な態度ではないでしょうか。
日本が置かれている政治的な現状は「民主主義の原則を守って経済的には沈むのを肯んじるか/非民主的な政治の危険を背負っても経済再活性化を目指すのか、という瀬戸際である」というのが私の認識です。
自分は、老人院と若者院の二院制にすれば良いのではと、先の参議院選挙の時考えていました。
対立軸がはっきりするのがシンプルで良いと思いました。
>若者は少数派である上に投票率が低いので、選挙では不利だから、
同じ論理で”地方住民は少数派であるので選挙では不利だから、1票の格差は温存すべきだ”という意見が成り立つのではないでしょうか。(投票率は高いかもしれませんが)
選挙を棄権してしまう人間にここまで過保護にする必要があるのか疑問に思いました。
私もshin_jpnさんのコメントに全面的に賛成です。
若者vs老人という対立軸を制度を動員して全面に押し出すのはどうかと思う。
あえて象限を二つに絞っていますが
「地位も権力もある老人」と「年金受給のボリュームゾーンの老人」は完全にイコールではなく、老人間の貧富の差も無視できないでしょう。
それに介護のことなど要素として加えれば、要介護老人を抱える若者とか、独身の若者など、、、利害の実体は実はバラバラです。老人vs若者にデフォルメできるのかどうかあやしいと思います。
私にも両親がいますが、年金制度がなくなって仕送りをしないといけなくなるようなことは勘弁して欲しい。あえて世代に焦点を当てるなら、独身税でもとってほしいくらいですよ。
対立軸が不明確な国ではあるが、
重要問題として世代間不公平が現実としてある。
だから老人vs若者、という軸でそのまま世代間対立が起こって良いのかは分かりませんが、
老人 vs 若者 =大きな政府派 vs 小さな政府派
という軸に政治が収斂するなら、分かりやすいし、政治的な意味も意義もあると思います。
勿論、世代と政治ポリシーが全て合致するとは思わないけれど、世代間不公平という現実の上では、世代間の利害関係とマッチする訳ですね。
私はIT派遣で長年飯を食っていたものですが、昨年結婚準備中であったにもかかわらず解雇されてしまいました。
会社は渋谷区にあるニス●ムという会社です。
人材派遣会社ニスコ●は複数の客先で企業から雇い止めにあって同様な待機社員を抱えていました。いわいるタダ飯食いです。
IT派遣ではその中で一番活躍している30代中堅(比較的給料が高い)の首を切って20代のあぶれた給料の安い若手をそこに入れる非情な光景もみられます。客からもらえるピンはね率が高まるからです。
今の雇用体系ですと、派遣を受け入れている企業は業績が悪化した場合、その人物の能力に関わらず組合等の雇用カルテルで守られた正社員ではなく派遣社員からメスが入ります。
そして、その派遣社員は派遣会社内では一時的にタダ飯食いになり、正規の給与の6割程度の支給になります。必然的に派遣先が決まらなければあらゆる圧力が加わって辞めざる得なくなります。
本文にあります「解雇規制を緩和して若者の雇用機会を拡大すべきだと考える人が多い。」
これは最もな意見であります。派遣労働力と下支えしてきた派遣会社の功績は見事なものですが、
派遣先の手厚い保護に比べて、派遣会社の方はあまりにも見劣りがします。
よって登録型派遣や日雇いバイト等、後ろ盾のない人間はとことん搾取の対象となり、派遣会社の搾取により貯金も出来ず一度職を失うとすぐにアパートの家賃が払えなくなり、医者にかかれず、飢餓等と途上国並の危機に直面します。
<次に続く>