今年前半は世界最大規模となった中国農業銀行の上場が話題をさらった香港株式市場でしたが、今年の後半のニュースは、おそらく日本企業の香港上場となるでしょう。
多分トップを切ることとなるのは、「あの」世界ブランドの日本企業だと思われるのですが、現在は尖閣がらみで足踏みしているようです。ほとぼりが冷めるタイミングを狙って、発表されると思うのですが、まったく迷惑なハナシです。
実は、この原稿を書いているのは、羽田発、香港行き飛行機の中。1週間の東京出張からの帰途です。
クライアント様の都合で、三連休を挟んだ出張となり、いささか非効率。私事ながら、妻にもアラヌ疑いをかけられ迷惑千万。しかし、毎月一回のペースで一時帰国はしているものの、今回はミーティングに追われない、週末の東京を満喫させていただき、「今」の東京の空気を感じさせていただきました。
そうしたわけで、普段はみる機会もない、日本のテレビニュースなども、みていたわけですが、尖閣諸島をめぐる日中関係の緊迫化に関する日本のメディアの反応は、私の目にはいささか過剰にうつりました。あの前首相のあまりにバカげていてオハナシにならなかった「話し合いで解決」発言の後なので、バランスをとるための「ぶり返し」なのかもしれません。
もちろん、
「東シナ海に領土問題は存在せず、今回の事件は日本領海内の事件として、日本の国内法に照らして粛々と対処する。」
という現行の政府方針以外に、正解はあり得ないわけですが、交流停止、万博招待取り止め、おまけにSMAPキャンセルといった中国政府の「理不尽」はこれが最初でも最後でもないわけで、いちいちビビっていたら「肝」がいくらあってもたりません。
あいかわらず平面的なニュース報道のため、中国側の思惑を深く掘り下げる議論は、少なくともメジャーなテレビ・メディアではみうけられませんでしたが、私には一連の中国政府のジェスチャーは中国国民向けのパフォーマンスでしかあり得ないと思えます。以前のエントリーでも書きましたが、現在は米中関係が緊張に向かう情勢展開。南シナ海における中国・ベトナム間の領海問題にクリントン国務長官が乗り込んできて、
「南シナ海の航行自由はアメリカの国益問題である」
なんて発言するとともに、米国軍事力の西太平洋における充実・展開をおしすすめているのですから、こうした「国威」問題に敏感な中国都市部のネチズンを中心とした勢力が、「愛国無罪」でデモ。大使館や領事館の前で星条旗を燃やしはじめたりしたのがCNNなんかに映ったり、米国債不買運動なんかに発展したら、それこそ手に負えません。
ここはアメリカはスルーでも、「小日本」相手に、
「中国ナメたらこわいよ、こわいよ~...と、ちゃんと言っていますからね、みなさん!」
というメッセージを国民向けにお知らせして、適度にガス抜きしているというのが、真相でしょう。もちろん、あんまりやりすぎて、あの2005年の反日デモの再来も望むところではないので、中国本土における尖閣報道は、最小限にとどめられているようです。
こうした一連の尖閣騒動の中国側にもたらす「効能」を考えてみると、今回の「事故」が作為的なものである可能性は高いわけですが、とにもかくにも前述したように、相手のフェイントにいちいち反応していては、前哨戦である神経戦で参ってしまいますので、事に当たる外務省関係者、政府官僚はもちろん、日本国民も、それこそ「粛々」としていたほうが得策だと思うのです。
あえて皮肉半分以上の気持ちで、横暴な大陸政権の魔手を逃れて日本に渡来してきていただいた中国人の大先輩、無学祖元の執権北条時宗への言葉、「莫妄想」を参考にしましょう。
乾坤無卓孤�勍地
只喜人空法亦空
珍重大元三尺剣
電光影裏折春風乾坤孤�勍を卓つるも地なし
喜び得ん、人も空、法もまた空なることを
珍重す、大元三尺の剣
電光、影裏に春風を斬らん
連休中日の日曜日、お約束通りに過剰反応していた右翼団体の方と思われる街宣車上の演説者は、
「今となっては中国と国交断絶!そうすれば一時的に安い商品が入ってこなくなりますが、そのおかげで日本経済はまた潤うのです!」
などと、熱弁をふるっておられました。が、その身なりはなんとなくユニクロの黒のTシャツとカーゴパンツ。擡頭する大国中国に対抗するのに必要なのは、
「お父さんお母さん、そしてご先祖様への感謝のきもち!」
見上げたもんだよ屋根屋のナントカ...
オマケ
今回の日本滞在のうれしいボーナスは大相撲のテレビ中継をみれたことです。実は私、高校時代に相撲部を兼部してやっていたこともあり、相撲が好きなのです。横綱白鵬の強さは圧巻でしたが、その他の海外勢、とくに研究心旺盛なモンゴル勢のおかげで、今我々は競技として最高レベルの相撲を観ていると確信しました。
個人的な価値観からあれこれ言う人もいますが、私は相撲の神様は喜んでいると思います。「格式」が好きなお方は、お能を観ていれば良いのです。
それにしても野球賭博スキャンダルと、反社会勢力との癒着を断ち切る為に、証拠改ざん受験エリート組織のOBを、臨時の「天下り」理事長に迎えた日本相撲協会のここのところの顛末は、現代日本の「茶番」を如実に体現していますね。
コメント
実際、過剰反応気味なのは政府では無くてマスコミでしょう。
政府はこれからも国内法に照らして粛々と事を進める事が求められます。が、それとは別にこの機会に多面的な外交活動を活発にする必要があります。
中国の今回の様な振る舞いはおっしゃる通り今に始まった話ではありません。と言うか、ある意味伝統的な手法であるとさえ言えますね。またかよ、いい加減飽きたよってね、
そんな気分ですが、ここで普通にやり過ごす事を繰り返すうちに、延々と対世界の日本情報工作が進んでしまうのです。
ここらで、日本も戦略的な対外情報工作機関を創設する時期にきているのではないか?そんな風に考えます。世の中、情報が自由に行き交うようになったかのように見えて、実はまだまだそうでは有りません。世界中、謀略にころっと騙される人口の方が圧倒的に多いのです。
日本の情報工作機関は、何処かの国を陥れる為のものでは無く、
日本を防衛する観点からも必要な機関だと思います。