なぜカジノ特区に反対なのか理由がわからない

大西 宏

東京の石原都知事、大阪の橋下知事は、カジノ特区に積極的です。国民新党の亀井さんも沖縄をカジノ特区にして経済の活性化をはかるという構想を掲げられていました。
しかし、このカジノ特区はなかなか進んでいません。国会議員のなかにもカジノ特区の推進に熱心な人もおり、議員連もできているようですが、反対だという人も多いからでしょう。しかし、ほんとうにカジノで成功するかどうかの議論ならまだ理解できるのですが、カジノ特区に反対する理由がよくわからないのです。


弁護士であり、元衆議院議員の早川忠孝さんがブログに東京や大阪のカジノに反対だということを書かれていました。

大阪カジノ都市構想にも東京カジノ都市構想にも反対だが

反対理由の第一は、暴力団の資金源になるという懸念です。とくに大阪は「関西暴力団を考えてしまう」そうです。関西人としては偏見も甚だしいと感じますが、しかし、暴力団は、非合法だから関与する余地がでてくるわけで、合法化し、公営管理で運営すれば、暴力団が関与することは難しいはずです。
規制がかえって、暴力団のビジネスチャンスを生むかは、闇金がそのことを物語っています。いわゆるサラ金を規制したために暴力団とつながる闇金が跋扈するようになりました。

第二の理由は、カジノ特区を認めることは、ギャンブルの規制を緩和することになり、それだけギャンブルで人生を失敗する人が増えるということのようです。

しかし、日本はすでに巨大なギャンブル公認国家だと言っても過言ではありません。なにをいまさらという感があります。

公営ギャンブルといえば、最大規模は、競馬ですが、JRAで賭けられている規模は、現在およそ2兆5千億円の規模です。競輪や競艇はそれぞれ1兆円程度で、宝くじの売上がおよそ1兆4千億円なので、公営ギャンブルは6兆円規模を持っています。

もっと大きい市場規模をかかえているのはパチンコ産業です。大手のマルハンの売上は一社で年間2兆1千億円を超えています。ダイナムは売上が下がってきていますが、直近の決算では売上は、およそ8千6百億円。この二社だけも3兆円近くになり、業界全体では21兆円規模があるといわれています。そうだとすると、公営ギャンブルとあわせて、30兆円弱であり、ギャンブル市場は、自動車産業の40兆円にも迫る巨大な産業です。

しかも警視庁のデータでは全国にパチンコ店が1万3千あり、これほど、ギャンブル施設が全国津々浦々に、地域の隅々にまで広がっている国はあるのだろうかと思ってしまいます。
ちなみに、ウィキペディアによると、パチンコは米国ではカジノとして規制を受けており。台湾も韓国も現在は禁止されているようです。

パチンコをもっと規制しろとは思いませんが、カジノも東京や大阪ではなく、もっと隔離できる辺鄙な場所ならいいと早川さんは書いておられますが、規模や遊戯人口、施設の数や近隣に立地していることによる影響を考えると、ギャンブルで人生に失敗する人を効果的に減らしたいのなら、まずは、パチンコを規制すべきという理屈になります。

それよりも本当に議論しなければならないのは、どんなコンセプトをもった施設や運営主体、また運営方法であれば、国内外からの観光客を誘致できるのか、また収益をあげることができるのか中味の構想や計画のほうでしょう。

現実は、国内のギャンブル市場は縮小してきているのです。パチンコ産業も、ギャンブル性の高い遊戯機に規制が入り、さらに貸金の総量規制の影響を受けて、遊技人口も市場規模も減ってきているようです。
地方に車で出かけると、道路沿いに閉鎖されたパチンコ施設に必ず遭遇します。しかも、淘汰の波のなかで、大資本の企業の寡占化が進んでいるように感じます。
マルハンは伸び、ダイナムが売上を落としているところを見てもその傾向がうかがえます。競馬も、競馬人口はさほど減っていないにもかかわらず、馬券を買う金額はどんどん減ってきています。
売得金・入場人員(PDF資料)

そういった厳しい状況のなかで、突然カジノができたからといって、うまく成功するとは限りません。

しかし状況が厳しいからこそ、たとえ東京や大阪、あるいは沖縄の特区で、数カ所できる程度とはいえ、既存のギャンブル産業の側からは顧客が奪われるのではないかという警戒心がでてくることは無理もないことで、他の公営ギャンブルやパチンコ業界保護のために反対だというのなら筋が通ります。しかし現実は顧客も異なるでしょうし、直接競合するようには感じられません。

どの程度の経済効果があるかは、施設内容や運営の質によって左右されると思いますが、
日本は、海外からきた旅行者の人たちからは極めて高い満足度が得られており、観光地としての内容は世界のトップクラスですが、まだ行きたい国や都市というところでは、それに比べると低く、いろいろ観光の魅力づくりにチャレンジすることが望まれます。

カジノ特区が、海外からの観光客の吸引や経済活性化の切り口のひとつになるのなら、まずは数カ所で競いあって「やってみなはれ」ではないでしょうか。

コア・コンセプト研究所
大西 宏

コメント

  1. sumstation より:

    弁護士は右脳、左脳の他に規制脳があるんでしょうね。

  2. haha8ha より:

     破産をださならいいですが、仕事を失った自営の方などがどうせならで、
     
     クレジット借金→ギャンブル→自己破産→生活保護
     
     なんて流行らないでしょうか?「怖い人」が介在しないので心の葛藤がなかったりするかもしれません。

     賛成・反対の議論のスライドがありました。答えはありませんが・・・
    http://www.koryu.or.jp/nihongo/ez3_graphics.nsf/0/f43a8b84db3de9de49256fbb00324091/$FILE/handout.pdf

  3. saitamaken88 より:

    パチンコ業界は、カジノ特区に絶対反対であり、パチンコ業界を支持団体に抱え持つ議員が、与党にも野党にも大勢いるから、ということでしょ。

    議員だけじゃなくて、パチンコ業界は警察官僚の天下り先になっているし、これはもうパチンコ業界の在日だけじゃなくてオールジャパンで反対しているようなもの。

    ここら辺の事情は、溝口敦さんが「パチンコ30兆円の闇」という本で(命を狙われながら)書いていますよ。

  4. ゆきまま より:

    マカオ、ラスベガスをみれば、カジノ周囲がいかに治安が悪くなるか、子供たちにとって環境が悪くなるか、火をみるより明らかじゃないですか。
    沖縄で地道に生活してる人間にとってはめーわく千万です。そんなにカジノ特区が必要なら、沖縄以外でやってください。基地だけでも大変なのに・・・
    アタマのいい人は頭のなかだけで計算して、現実見てないから困ります。

  5. corey385 より:

    マカオの治安については政治体制の「空白」が悪化に一役買っていたのではないでしょうか?
    実際に香港と比べて明らかに悪かったという話は聞きません。

    ラスベガスについては少なくとも観光客にとっては
    安全な町であることは確かで
    居住者についてもアメリカの他の地域と大差ないようです。
    参考
    http://www.lvtaizen.com/_backnum/html/2051main.htm
    アメリカのスラムはどこの町でも危険です、ラスベガスにもそれがあるだけです。

    また、私の近所には競艇がありますが
    確かに周辺は「いかがわしい」雰囲気と「荒っぽい」人がたむろしているのは実感として感じます。
    しかし、治安や教育上の配慮を考えるのであれば
    日本の殆どの(一定以上の発展をしている)駅前や街道沿い住宅地に存在しているパチンコ屋をまずは排除することでしょう。

  6. san3to4 より:

    私がカジノ特区を作ることで危惧していのは、
    例えば東京や大阪で特区を作り、そこが成功を収めた時に、必ず他の自治体や地方の政治家は自分の選挙区にも作らせろと言ってくるでしょう。
    そうなった時、かつて、ディズニーランドの大成功を見て、
    自治体が同じようなテーマパークやレジャー施設を乱立したあげく、そのほとんどが10年も立たずにで消えていった末路にカジノ特区もなるのではないかと思うのです。