ソフトバンクの孫正義社長のつぶやきで知ったが、きのうの日経新聞の社説は、事実誤認が多くて驚きました。
仮にNTTの分割を見送るなら、どうすれば光の利用をもっと促せるのか別な道筋を早く示すべきだ。例えば政府は接続料の引き下げをNTTに再び強く促す必要がある。接続料を思い切って半額程度に引き下げれば、一時的に回線収入が減っても需要は確実に増えるはずだ。
これは市場原理を重視する日経新聞とは思えない。接続料を半額にすれば「需要は確実に増える」が、それによってNTTの利益は激減します(おそらくマイナスになる)。日経は、私企業に損失を強いる料金規制を政府に求めるのでしょうか。またそれによって、電力系の通信事業者は経営が成り立たなくなるでしょう。日経は、プラットフォーム競争を絶滅しようというのでしょうか。
接続料を引き下げるためには、NTTは銅線による電話時代の通信サービスをいつまでに光回線を使ったインターネット時代の技術に置き換えるか目標を定めるべきである。電話交換機には保守費用がかかり、二重投資のままではNTTの経営コストを引き下げられないからだ。
これは意味不明です。「銅線か光か」という物理層と「電話かインターネットか」というネットワーク層は別なのですが、この社説の筆者はそれを混同しています。「電話交換機の保守費用」が問題なら、NTTのいうように交換機をIPルータにすればいいことで、光にする必要はない。これは通信の素人によくある間違いですが、総務省では笑い話になるだけでしょう。
このような間違いだらけの社説を、孫社長が賞賛するのも困ったものです。まさか彼もこれと同じ勘違いをしているのではないでしょうが、ナンセンスな意見を賞賛するのは世間の物笑いの種になるだけです。今回の「論争」で、ソフトバンクは通信事業を理解していないことを露呈してしまった。現場の社員も困惑していることを、社長は知らないのでしょうか。
コメント
あの社説は、ひどいですね。
まるでソフトバンクに就職を希望している学生が書いた作文のようでした。
そもそも、論点がおかしい。
「光回線の利用を促すには」
として、
「光のユーザ数を増やすこと」
という視点でしか、語られていない。
言うまでもなく、重要なのは、
・ブロードバンド環境が整備されること(光・無線を問わず)。
・コンテンツ、アプリケーションが充実し、需要が拡大すること。
の2点です。そこで初めて、
「ブロードバンド環境が、有効利用される」
という、*目的*が達成されるのです。
接続料は、本質的な問題ではありません。
ご承知の通り、私は常日頃日経新聞の通信に関する記事などをよく批判していますが、今回の社説は筋の通ったものであり、「通信については普通の人よりは知識経験が豊富」と自認する私が読んでも、おかしいいところは全くありません。これを「素人」だとこき下ろすと、池田先生が「素人」ということになってしまいます。
第一の点は池田先生お得意の経済問題ですが、二つ問題があります。第一に、「値段を下げれば需要が増え、当初は採算割れしても、長期的には利益が増大する」というのは、産業界の常識です。日経はその当たり前のことをあらためて指摘したまでです。
第二に、国が、値段を下げることを強制するのは勿論不適切ですが、「自分が経営すれば値段は下げられると言っている人(孫さん)がいるが、この人の言い分に論駁できるか? 値段が下げられない理由を詳しく説明せよ」と経営者に迫る事は、現時点でNTTの株の40%を握っている立場からも、NTT法に基づいた監督権者である立場からも、国が行うこととして、十分妥当なことです。
第二の点については、成る程、日経の書き方では「インタネット=光」と言っているかのごとき印象を与えるので、これは良くありませんが、本格的インターネット時代に対応する為には、1種部分での対応(交換網をIP網に変える)と、0種部分での対応(路線部分をより高速な光回線に変える)の両方が必要なのは事実であり、本筋のところは間違っていません。
なお、交換網からIP網への変換は、世界の常識であり、NTTを含めた各社が既に取り組んでいる事です。(尤も、NTTの目標期限があまりに遅い事については、池田先生同様、私も少し驚きました。)しかし、これは、国が介入する必要もない事ですから、今更あらためて論じるべき事でもありません。
jerusaremさんへも一言
失礼ながらビジネスの本質をご理解されていませんね。
インフラが先行する事と、接続料が安くなる事は、共に極めて重要で、これこそが「普及」という「目的」を達成する最大の鍵です。また、この両者は相互に関連しています。
現在NTTのフレッツ部隊が必死で営業しているにもかかわらず、なかなか加入者が増えないのは、値段が高いのと、その割には魅力のあるサービスが乏しいからです。これは総務省のレポートでも明確に語られています。
接続料が安くなれば、加入料が安くなると共に、多くのサービス業者が参入できるようになるので、サービスの多様性が確保できます。こうなれば、当然利用者は増え、利用者が増えると採算が良くなり、更に値段が下げられます。こうして「好循環」が生まれます。
実際のビジネスでは、鶏と卵のジレンマを打破するために、どこかで思い切った先行施策が必要なのです。評論だけしていても何も起こりません。