ウェブ検索とネット社会の将来に関する国民的議論を - 山口 巌

アゴラ編集部

玉井克哉東大教授が「ウェブ検索とネット社会の将来に関する国民的議論を」と主張し,この運動のウェブサイトで署名を集めている。先ずもって非常に重要ではあるが議論の難しい此のテーマに対し真正面から向き合い、社会的議論に迄持って行こうとされている玉井先生に対しエールを送りたい。


それでは一体何が議論を難しくしているのであろうか?想像するに「法律」、「技術」、「企業間の利害の対立に拠る意見のばらつき」等があると思う。そして何よりもウェブ検索と言うサービス事態が新しく、国民的コンセンサスが醸造される以前に激しく変化し、発展する中で企業も個人も追いつくのに青息吐息と言う現実があると思う。そして法律論、技術論と言った、比較的理解が容易な言わば「形而下」的なテーマと平行し此れと複雑に絡み合う後述する「形而上」的なテーマも併せ議論されねば成らないのだが此れは如何にも難しい。

従って、議論の進め方としては、課題毎に専門家が議論し一旦の結論を作成しその後、その結論をベースに全体像を描き、更にその全体像の上で各課題を更に精査、掘下げ問題の核心に迫る事に成ると思う。

今回、「国民的議論を」と言う折角の呼びかけなので議論戴きたいテーマを「形而下」、「形而上」に分けて列記してみる。

=形而下の検討すべき項目=

1.今回の公正取引委員会決定は「独占禁止法」を正しく解釈した結果の物と言えるのか?
此れは言い換えれば「法の支配が遵守されているか?」の確認である。

2.仮に今回の公正取引委員会決定が過大な「裁定」の結果である事判明したらその背景は?
此れは言い換えれば何が公正取引委員に対し強引な独占禁止法の解釈を強要したかの確認である。

3.仮に今回の公正取引委員会決定が「違法」、「排除命令」と成っていたらヤフー、ジャパンは検索サービスの継続を断念せざるを得ず、結果、Googleの独占が更に進む訳だが此の自家撞着を止む無と理解すべきなのか?

4.こう考えると、検索サービスを使う以上Google独占を許容するしか無いのでは?

5.ヤフージャパンは飽く迄Googleの検索エンジンを使うだけとの説明であるが、結果検索に拘る全ての情報がGoogleのものと成らないのか?そして此れは割切って許容するしか無いのでは無いか?

6.ユーザーはより利便性高い検索サービスに集中し、結果検索サービスは更に発展、向上する。その結果更なるユーザーの集中と言う仮設が成り立ち実際そう成っている。

従って、ウェブ検索に就いては、「独占禁止法」自体が実態に合わない過去の法律であり、此れを無理して辻褄合す結果「法の軽視」と言う決して看過出来ないも問題を
新たに引き起こしているのでは無いか?

=形而上の検討すべき項目=

1.歴史的事実が果たして独占は悪と示しているのか?

2.Don’t be evil!(邪悪に成る事無かれ!)を錦の御旗に発展、拡大を続けるGoogleであるが本当にある日突然メタモルフォーゼが起こり悪魔も真っ青なスーパー邪悪に成る事は無いのか?

要はGoogleの善意を信じ、全ての情報をGoogleに預けた結果Googleに一旦好ましからざるメタモルフォーゼが起これば日本の安全保障は壊滅するのでは?の危惧である。

※人類は謂うまでもなくその誕生以来他の生命体を喰い、食い尽くして此処まで繁栄した歴史を持つ。Googleも又その人類が作り上げた組織である事肝に銘じるべきと思う。

(山口巖 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役)