就活で学生は成長するのか?

松本 孝行

 就職活動をしている学生の中には何かと「成長」という言葉を使う人が多く見られます。そして、就職活動を始めた時と比べて、内定を得た学生は何か一皮むけたような感覚を持つでしょう。また、キャリアコンサルタントの多くが「就活を通して成長すること」を声高に叫びます。

 しかし本当に就活を通して、人は成長するのでしょうか?


 確かに就活を始めたばかりの学生と内定を取って就活を終えた学生では、違いがあり、私も成長はしているなと感じます。例えばSPIでどの程度の正答率なら、どういう企業に通るかというのも最初はわかりませんが、徐々に肌感覚でわかってきます。また、面接でどういうことを言った時に、どういう反応が返ってくるかも、長く面接を続けていけば、徐々にわかってくるものです。

 このように、多くの学生は就活を始めた頃よりも、多くのSPIを解けるようになりますし、面接でも受け答えがスムーズになって行きます。それを成長と言えば確かに成長と言えるでしょう。しかし、企業が本当に求めている成長というのはこういった成長なのでしょうか?つまり、企業はSPIの試験をより多く回答出来たり、面接の受け答えのうまい学生を求めているのでしょうか?

 実際に内定を取った学生たちが4月からそれぞれ配属され、即戦力になるかと言えば、そんなことはほぼありません。最初は同行営業や新人研修など、特別な教育が施されます。ということは、就職活動を通して成長した学生は、内定を得ることができたとしても、それはビジネスの世界では役に立たないレベルの成長である、ということになるのではないでしょうか。

 現在の就職活動のシステムではそう言った新人社員を必然的に量産することになってしまいます。面接がうまい、SPIは点数が高い、でも実際の実務にはまだまだ役に立たない…そんな人材を供給するシステムが現在の新卒採用の就活システムです。これは明らかに学生も企業も損をしているシステムではないでしょうか。

 そこで私は、インターンシップやアルバイトから就職するという方法をメインにして行くべきかと思っています。アルファブロガーの切り込み隊長氏もおっしゃっているように、特に中小企業・ベンチャー企業は学生のインターンシップやアルバイトから採用する方が、学生・企業ともにプラスになるんではないかと思います。インターンシップやアルバイトの現場で1年働いた人材は、実務をこなす能力・経験ともに成長をしていますし、即戦力になります。

 ただ、問題点もあります。大企業はインターンシップやアルバイトを受け入れる体制が整っていません。加えて学生にインターンシップと聞いた場合、半年や1年間という長期のインターンシップを想像する人はいません。1日インターンや3日等の短期インターンシップが幅を利かせているからです。短期のインターンシップでは能力や経験の蓄積に役立ちません。長期のインターン・アルバイトが必要なのです。

 最後に、私個人の経験出恐縮ですが、私は大学3年生の10月から卒業した5月まで1年半ほど就職活動をしていました。しかし、本当に成長したと実感できたのは商社で現場に1人、放り出されてからでした。1年半もの間就職活動をしていた私と、1年間商社営業の現場に放り出された私では、明らかに後者の方が成長した、と自信を持って言えるのです。

コメント

  1. pacta より:

    いわゆる大企業に勤めるエンジニアですが、確かにインターンシップを大量に受け入れる体制は出来てませんね。
    研究委託している大学の研究室から毎年数人受け入れて居ますが、一般から広く受け入れることは今後もないでしょう。
    企業側から見て、費用に対するメリットが見えませんから。
    就活よりインターンシップがベターというのはその通りだと思いますので、企業がメリットを感じる仕組みを作れれば、行けるかも知れません。
    ここのボトルネックはビジネスチャンスかも。

  2. より:

    現在就職活動をしている大学3年生です。就職難と言われる昨今、ただがむしゃらにどこでもいいから内定をもらいたい。と迷走している今、この記事を読ませていただき、とても勉強になりました。企業側の受け入れが整っていないこともあるのでしょうが、学生自身も「働く」ことへの意識が高くなくては成り立たないように思えるので、改めて就職についてよく考えようと思います。

  3. ksmo2011 より:

    就活などというものが意味を持たないことは、企業はとっくの昔に承知しています。
     就活を受け容れるのは、単に、企業がそのイメージを壊したくないという体面作りのためだけです。
     実は、企業は、大卒生の実力を全く信用していません。
     唯一信用できるデーターは、難入学校に入学できたという、厳然たる事実だけです。
     だって、そうでしょう。就活で、口先だけ上手いこと言って何の実力もない学生なんて幾らでもいるのですから。
     就活で成長するなど、馬鹿も休み休み聞かせて下さい

  4. hamong より:

    私が通っている大学では学部4年生の10月から4ヶ月間のインターンシップを行っています。インターンに行く条件として大学院進学が課せられており、企業で必要とされる応用研究ができるような研究者を育成する狙いですが、実際は以下の理由からそんなに上手くいっていないようです。

    1.インターンシップ先を選べない
    企業側としては、即戦力にならず、社会人としての態度や覚悟も無く、実際にその企業に就職する可能性も極めて低い人材を4ヶ月間も働かせる余裕は無く、現実としては「知り合いの大学教授から頼まれたんで断りづらい」からインターンシップを受けいれているので、力関係としては企業>大学(学生)となります。このため、コネを持っている各教授が学生の性質(意欲や態度)を判断して各インターンシップ先を選びます。

    2.業務内容は、人や年度によって異なる
    企業によっては研究など高度な業務においても人的資源が足りないため、研究補助ができる場合があります。しかし、研究内容の機密性に問題があるため、これは大学教授との信頼関係があついインターン担当者がいなければ成立しません。ほとんどの場合は適当な研究テーマ(学生実験レベル)を与えて無難にこなすか、単純労働に回されます。特に単純労働というのはアルバイトと全く同じであり、食品業界であればパートのおばさんの横でベルトコンベアのラインに立ちます。

    文字数制限なので以下に続きます。

  5. hamong より:

    インターンシップの現状の続きです。

    3.経済的に苦しい
    インターンシップは無報酬である場合がほどんどです。これは力関係もそうですが、金を払う価値がない労働力であることと、大学の授業の一環であるため給与という形態がとれないことが理由でしょう。一方、学生としては、インターン先が既存の住居から通勤できない、または社員寮が無い場合、新しい住居を獲得する必要があり、さらに大学に授業料を払い続けるという負担もかかります。

    問題1と2を解決する方法として、学生がインターンシップ先を獲得して、自ら業務内容を交渉することが考えられます。このとき、就職活動と似たり寄ったりの状況(過剰コンフリクトやインターン先がなかなか決まらない)になってしまいそうなので、大学・企業側の双方でインターン受け入れ方法を整備する必要があります。問題3は、学生はインターンシップの間に大学で授業を受けないので、授業料を安くすればある程度負担も減ると思われます。

    インターンシップから帰ってきた学生は、就職に対する甘えが減る場合が多いため、企業向けの人材育成としてはある程度成功していると思います。しかし、インターンに行ったからといってその企業への就職に有利になることは無く、また、業務内容や担当者の教育次第で前よりもダメな人材になることもあります。
    また、企業での実務経験が大学院での研究に活かされることは稀ですし、企業で身についた仕事効率や勤務態度も大学院に戻ってくるとすぐに前と同程度に減退します。このため、インターンシップの経験は大学院を経たあとでは元の木阿弥になることが現実です。
    以上を考慮すると、大学や大学院を卒業した後にインターンシップを行い、その後企業に就職するのが一番よいような気がします。

  6. jerusalem2000 より:

    就職活動を廃止して、
    インターンで来た学生だけを採用するようにせよ、
    という趣旨でしょうか?

    一理あるかもしれませんが、でも、そんなことをしたら、
    今の就職活動が、「インターンシップ活動」に変わるだけだと思いますが・・・。
    多くの学生は、大手企業のインターンにしか、応募しないでしょうし、企業は、有名大学の学生しか、インターンとして受け入れないでしょう。

  7. 松本孝行 より:

    >>pacta さん
    おっしゃるとおりですね。
    インターンシップで企業・学生の両方が得をする仕組みが構築できればと思っています。

  8. 松本孝行 より:

    >>肇 さん
    就職活動お疲れ様です、頑張ってください。
    このエントリーは私の一個人の意見でしかありませんから、他の人の意見もよく聞いて、自分の中での答えを見つけてください。

  9. 松本孝行 より:

    >>ksmo2011 さん
    おっしゃるとおりです。しかし現実に就活で成長する、ということを声高に叫ぶ人は多いのです。私は就活での成長をまるっきり否定はしませんが、それ以上に早く仕事場に触れさせることが、最も成長することだと思っているのです。

  10. 松本孝行 より:

    >>hamong さん
    おっしゃるようにインターンシップには多々問題がまだあります。
    しかし現状の就職活動にも問題があることは周知の事実です。
    結局根本的な問題としては雇用・就職の制度自体を見直すことになるわけですが、それがすぐになされる可能性は低いでしょう。
    ですから、出来る範囲でやっていかなければならない、というのが企業・大学の考えなんだと思います。学生も企業も大学も、みんな悩んでいると思います。

  11. 松本孝行 より:

    >>jerusalem2000 さん
    このエントリーのテーマは成長で、成長するなら就活を長くするよりも早く現場に入った方がいいということを言いたかったのです。ちょっとインターンシップに皆さんこだわっているので、若干言いたいことがぶれてしまったようです。文章がまだまだ未熟で申し訳ないです。
    おっしゃるようにインターンシップに置き換えただけでは意味がないと私も思いますが、現状の就活制度よりはビジネスシーンに適応しやすい学生が生まれる可能性もあるかな、とは思いました。

  12. mariwkmax より:

    日本のインターンが「就業体験(=お勉強)」だから企業側も嫌うわけで、面接=お見合い、インターン=婚約相手を見定める同棲生活 なら双方とも本気になる。

    (企業側に空きポストがあって、本気で社員を探していて、インターン参加者が本採用オファーに応じてくれる”求職者”(”学生”ではなくて)である必要がある)

    ただし、「長期インターン経由の本採用」と「新卒以外は対象外」や「一括採用・一斉入社」は相いれないので、本当にやるなら”シュウカツ”は廃止しないといけませんね。まるっきりの部外者を”現場”に入れるインセンティブなんかありませんよ。