私は予備校の英語講師です。大学受験生の立場から見た大学入試の改革案を記します。
1.大学入試問題の解答と作問意図を文部科学省のサイトで公表する
入試問題の質を高めるために、各大学が文部科学省に入試問題の解答と作問意図を提出することを義務付け、文部科学省のサイトにそれを公表し、解答の間違いの指摘や問題に対する批評を受けつけるようにします。
入試問題を見ると、答が出ない問題を出したり、「こんな問題出して、いったい受験生のどんな力を見ようというのか?」という悪問を出す大学が後を絶ちません。解答と作問意図を公表することにより、「○○大学はひどい問題を出す大学だ」という悪評を広めるようにします。
2.センター試験を廃止する
センター試験の前身である共通一次試験が導入された理由は、いわゆる「悪問」を廃し、平易な問題で、高校で学んだことを身につけているかどうかを調べることでしたが、上記1の制度により、入試から「悪問」がなくなれば、センター試験の存在意義がなくなりますから、センター試験を廃止します。
センター試験の廃止により、受験生(特に高校生)は受験勉強にじっくり取り組むことができます。センター試験がなくなって困るのは、大学入試センターの職員と、予備校でセンター対策を専門にしている講師くらいのものです。受験生の多くは大歓迎です。
ただ、国が大学入試センターを廃止することは有り得ないことです。有力な大学のいくつかが、「うちの大学を受ける人は、センター試験を受けなくていいです」と宣言し、それに同調する大学が増えることによって、センター試験そのものが有名無実化するのを待つしかなさそうです。
3.マークシート方式を廃止する。
生徒の能力を見るには、カンでも当たるマークシート方式をやめ、全問記述式にするのがいちばんです。英語であれば、英文を読ませて英語で要約させる問題や、テーマを与えて書かせる英作文などがよいでしょう。予備校生の中には、「太郎君に兄弟はいますか?」(中1英語レベル)というやさしい英語も言えないのに、マークシート方式の試験では、8割以上の得点をとる者もいます。現在、センター試験や、多くの私大の入試でマークシート方式が採用されている理由は、若者の学力向上のためではなく、短期間に大量の答案を処理してしまおうという商売上の理由に他なりません。受験生が多いほど儲かるのですから。全て記述式にすれば、採点に時間がかかりますので、合格発表は試験の1か月後でよいでしょう。
4.私学助成金を廃止し、つぶれる大学にはつぶれてもらう
大学生の学力低下の原因は、生徒数の減少に直面した大学が、生徒数確保のためにレベルの低い生徒を入学させることにあります。生徒数に比べて大学が多すぎるのです。私学助成金を廃止することによって、オンボロ大学にはつぶれてもらうことを促します。その代わり、企業の高卒生の採用には助成金を出します。意味のない大学生活を送るくらいなら、高卒で働いたほうがずっとよいです。
(福山敏彦 予備校講師)
コメント
受験生の立場からというのはなにを根拠におっしゃられているのかが、いまいちわかりませんが。
それから、なにを基準に悪問とか良問とかの「検閲」を正当化するのかというのもよくわからないです。それらは基本的には価値観の問題であるわけで、教科書検定などとおなじこと。そもそもの発想の根拠からしてナンセンスだと思いますが。
私は個人的にはセンター試験などの共通試験はあっていいと思いますが、それらは基本的な課題を問うものであって、大学が各所で行う試験は、基本的にはなんでもありの自由なものであっていいと思うのですが。各大学が、どういう学生をとりたいか?ということにまで制度的に規制がかかるというのは、どうにも納得しがたいものがあります。
1.は、不完全ですが、すでに行われてますよね。過去問は公開され、一般書店で売られてます。
2.は、センター試験以外の二段階選抜手段を用意しないと、実施不可能です。一般人向けに分かりやすく書くと、記述式の個別学力検査を行うためには、採点処理能力の限界から、定員の3倍から5倍以上の受験者が来た場合は、「足切り」、つまり、門前払いをせざるをえない。何を基準に足切りするんですか?
3.勘では当たらないマークシート問題を作ることは可能です。たとえば、読解問題において、複数選択肢の組み合わせを要求する。両方当たらないと、得点を与えない。これだけでも、相当、難易度を上げることができる。
4.私学助成金だけでなく、国立の助成金も廃止すべきだと思います。国立を保護する理由はない。
案外、社会に出て役立つ人材は回答を導くプロセスを論理的に記述するより瞬発力で反応出来るシンプル思考の人材だと思います。逆に言うと、成人前に理屈思考であるより感覚を磨くべき。それを私たちは求めています。あくまで、民間社会人の独り言ではありますが、、、
ikuside5 様
コメントありがとうございます。
「受験生の立場」とは、入学試験を、大学が金儲けをするため
の手段ではなく、教科を本当によく勉強して理解している生徒が高得点を取れるような試験にしたいという立場です。
「悪問や良問の検閲を正当化する」とは大げさですね。
上の記事をご覧になればおわかりのように、
私はそのようなことは一切言っておりません。
私は、問題の解答と設問の意図を誰でも見られるようにする
べきだと言っているだけです。
それを、多くの教師や受験生が見てああだこうだとコメント
するようになれば、おのずと、良い問題、悪い問題が浮かび
上がってきます。
最後に、参考までに「検閲」の意味を記しておきます。
「行政権が、思想内容等の表現物の発表前にその内容を審査した上、不適当と認められるものの発表を禁止すること」
arora inoue様
コメントありがとうございます。
1)過去問は「赤本」等として一般に売られていますが、
その解答は、赤本執筆者が書いたものです。
大学の問題作成者が書いた模範解答と出題意図を公表している大学もありますが、まだ一部に限られていますので、
それをネット上で見られるようにしたいのです。
2)足切りは、「くじ引き」で行います。
受験要綱に、「当大学では、受験生が定員の3倍以上になった場合には、厳正なるくじ引きによって足切りを行います」と
あらかじめ書いておけば問題ありません。それを承知で志願した生徒は文句が言えません。
3)英語を書かせたときに、主語が複数形なのに、be動詞の
isを使う受験生がいます。こういう人を見分けるために記述式にしたいわけです。
4)おっしゃる通りです。国立の助成金も廃止すべきです。
arora inoue様
さきほどの私のコメントで、
「足切りをくじ引きで行う」は撤回いたします。
申し訳ございません。
これを機に、入試を高校卒業後の5月に行い、
大学は9月入学にします。これなら採点の時間が
じゅうぶんに取れます。
(福山)
>>足切りは、「くじ引き」で行います。
受験要綱に、「当大学では、受験生が定員の3倍以上になった場合には、厳正なるくじ引きによって足切りを行います」と
あらかじめ書いておけば問題ありません。それを承知で志願した生徒は文句が言えません。
これは冗談としては面白いですね。くじ引きは全く実力に関係ありません。
>カンでも当たるマークシート方式をやめ
と反論しておきながら、「実力とは関係ない、くじ引きそのものの確率によって足切りする」と提案したのは何かそれ相応の理由があるのでしょうか。